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ケースワークで学ぶ (実例による考察)

メルマガ再録 (2008年4月14日) 第63号


実際に発生した事例を細かく文章化し(再現映像でも可)、そこから何を学び取れたかを話し合い、今後の活動にどの様に生かしていくかを考察しています。

           < ケースワークで学ぶ >

1.はじめに

 この話は、先日実際にあったサロンオーナーと右腕の店長の1対1の会
話内容を記憶の中で再構成して書きました。
 まれに見るケースワークと思ったので、勢いで書きます。

2.ケース

谷口
 「このリンゴジュース、どうしたん?」
店長
 「営業終了後に、重たい荷物を担いだ田舎弁丸出しの若い行商の兄ちゃ
 んが『青森から来ました。リンゴジュース買って下さい。果汁100%
 ですから!』って言うもんやから、スタッフ皆に声を掛けて、12本ま
 とめ買いしました。」
オーナー
 「12本も買ったんか! それって、君が皆に強制したんとちゃうか?
 それでのうても下の者はよう断らんからな! お金のない子にはしんど
 い出費やからな。そこんとこ注意せなあかんで。上の者からのお願いは
 ただでさえ断りにくいんやからな!」
(店長、顔色変わる)
店長
 「僕は、そんな強制的な言い方はしてません。やんわり聞いて、皆も買
 うって言うからまとめて買っただけです。皆が必要以外の数は僕がすべ
 てお金を払いました。みんなに聞いてみて下さい。いやいや買わされた
 のか、進んで買ったのか、本人に聞いてみて下さい。それに、僕は、日
 頃からそんな変な強制の仕方をしてません。しかし、ある程度、上の人
 が言うことに従う、従わせるという組織の力は僕は少しは必要なことだ
 と思っています。それがないと皆がバラバラになってしまい、統制が取
 れなくなると思います。」
オーナー
 「それは分かった。だけど、この前、今度の新人は熊本から採用したと
 いうことで、その子の家にスタッフを連れて行ったそうやな! あれも
 どうかと思うで。熊本までの旅費や食事代など、簡単に出せる金額やな
 いやろ。今までそんなことしたことないのに。先に相談に来て、話がわ
 かったら補助金でも出したのに!」
店長
 「オーナーは、相談させない雰囲気を出してるでしょう。僕がすること
 をすべて否定するようなオーラを出しているので、相談する気になりま
 せん。今回は、これをきっかけに全員の田舎をめぐるという企画を考え
 ています。みんなこの企画で盛り上がってます。オーナーはいつもマイ
 ナス面ばかりを見て、良いようには取ってくれないです。それが僕は非
 常に残念です。誰でもそうだと思いますけど、自分のすることをもっと
 認めて欲しいんです。誉めて欲しいんです。分かりますか僕の気持ち!」
オーナー
 「やってくれてることは良いことかもしれんけど、一言こっちに事前に
 言うてくれたら、調整のしようもあったのに。本当に、彼らは心底喜ん
 でやってくれているのか、建前で合わしてくれてるのかは分からないや
 ろ?」
店長
 「自分はスタッフを信じているし、正真正銘付いてきてくれていると信
 じています。自分の事もオーナーはそんな感じで見ているとしたら寂し
 過ぎます。いつかこのことは言おうと思っていましたが、オーナーがス
 タッフをそんな目でみているのを、スタッフ達も薄々感じているのだと
 思います。たぶん今まで辞めて行ったスタッフはそんなところが引っ掛
 かったのかも知れません。」
オーナー
 「そうか。わしも言われるまでもなく、そう思うところがあるのは分か
 っててん。しかしなかなか考え方の癖は直らんもんやな。今日指摘され
 てよう分かったわ。これからもそんなところあったらどんどん指摘して
 くれな!今日はよう言うてくれたな。ありがとう。」
店長
 「分かってもらえたら嬉しいです。」
谷口
 「やっと分かり合えましたね。店長は苦しい胸のうちを良く打ち明けて
 くれたと思います。それに冷静に話が出来ましたね。オーナーはそれを
 しっかり受け止めて、自分の非を認め、これからの方向性を示してくれ
 ました。ここからが勝負です。今までギクシャクしていた歯車がバチッ
 と今日合ったので、運命共同体として、第2創業の積りで新店を成功さ
 せましょう。」

3.ここからの学びは?

 さて、この物語から何を教訓として学び取りますか?
 私ならこんな感じですね。

4.「A.気持ちを伝える勇気」

 部下は、なかなか上司にはしっかり自分の気持を伝えることは出来ない
ものです。
 お金を頂いているって思うこと、働かせてもらっているということ、言
った後が気まずくなって働きにくくなることなどが頭をよぎり、正面切っ
てはなかなか言えないものです。
 それで、仲間内でグジグシとグチを言ったり聞いたりということになっ
て行きます。
 この店長は、今までの思いが溜まっていたのでしょうね、
 一気に噴き出すように、吐露してしまいました。
 こういう場面では頭にカーと血が上り、なかなか冷静で居られないもの
です。
 本当にムカーっと来たら丁寧語もくそもないですからね。「お前」呼ば
わりする場面も見たことあります。
 しかし、かなり熱くなりながらでも、きっちり言いたいことを、言った
店長は偉いです。
 まとめて言うのではなく、普段からちょっとづつ言える様になればもっ
と良いですね。
 そんな良好な関係は、こういう嵐の状態を何回か乗り越えて初めてそう
なっていくのでしょう。

5.「B.自分の至らないところを受け容れる勇気」

 オーナーは、マイナス思考というより、結構安定志向な訳です。波風を
立てたくないというか、今までスタッフが辞めてきた理由などが頭に渦巻
き、例のホメオスタシス(自己防御本能)が働いているように感じます。
 また、スタッフに余計な負担を掛けて、スタッフが居ずらくなり、サロ
ンを辞めていくのが困るという安定志向でもあります。
 また店長のリーダーシップの強さに怖さも感じている様でもあります。
 オーナーは、周りのスタッフや辞めたスタッフなどから、店長に対する
不満を聞いているという感じです。
 これはまた、店長がオーナーに対する不満をスタッフから聞いていると
いう裏返しの構図でもあります。
 周囲からの情報(うわさも含む)は、大概一方通行です。
 両方の意見を聞けば、「な~んだ」ということが多いものです。それが
誤解を生み、仲違いが始まる原因の多くでもあります。
 いずれにせよ、自分の至らないところを指摘されるのは、決して愉快な
ことではありません。
 どちらかというと、しんどいことです。
 しかし、本当にサロンを良くしようとする気持が通じて、オーナーは最
後にはそれを受け入れることになりました。
 オーナーは妥協したのではなく、その店長の想いが通じ、身にしみたの
でしょう。
 それに、オーナーは自分も普段からそう思っているということも重なり、
深く反省しています。
 店長は、オーナーからの突っ込みに対し、くじけそうになりながらも自
分の意見を貫き通したから受け容れられたのです。
 なかなか勇気の要る行動です。

6.「C.相手のしたことを誉める大切さ」

 上司として、自分が聞いていない範囲で実行した内容について、手放し
で喜べることはなかなか難しいことです。
 それが出来るということは、上司と部下が一体になっているということ
の証です。
 いわゆるエンパワーメント(権限委譲)が完璧に出来ているから、上司
と部下が同じ認識・価値観を持っているから許容できることです。
 部下のしたことを認めるだけでなく、その行動を誉めるという行為は、
相当に勇気の要ることです。
 信頼する部下がやった行動に対しては、事情のいかんにかかわらず、ま
ず「認める・誉める」ことです。
 そのことにより、オーバーに言うと部下は母に抱かれた様な安心感が生
まれます。そこから何でも出来るという勇気がまた湧いてきます。
 「それは凄いなあ」と興味を持たれワクワクされるのと、「それがどう
したん!」と冷めた目で見られるのでは、180度やる気が違ってきます
よね。
 今の風潮として、サロンのモチベーションやテンションアップを考える
場合、成功哲学などの導入をするサロンが多いようです。
 そんなサロンオーナーは、他人の力を借りて、安易にやろうとしている
様に思えてなりません。
 借りてきたものは借りてきたものです。自分の力にはなりません。
 本当にサロンのことを、スタッフのことを良くしようとするには、まず
自分を向上させることが大切です。
 自分が「認めてあげる、誉めてあげる、という行為が苦手だから」と逃
げていては、サロンはずっと良くなりません。
 オーナーはそのことに気付き、それが出来るようにまず考えなければな
りません。
 そういう原理原則を忘れているのではないでしょうか?
 と、私はこれを声を大にして言いたいですね。

7.「D.人を信じることとは?」

 私は「信じるから期待に応えようとする。信じないと、期待に応える必
要がないのでどうでもよくなる。」というのは私が考えるセオリーです。
 この真理は、非常に重要な意味を持っています。
 今回の例では、信じてもらえないと感じている店長が、オーナーに対し
自分の心情を明確に意思表示しましたが、普通なら「もういい」とプッツ
ンしてしまい、サロンを辞めたいということになるでしょう。
 人から信用・信頼されないことって、生き方を否定されたようで、本当
に辛いことですよね。
 「信じる、信じてもらえる、信じられる・・・」その原点を再確認する
必要があります。
 前項の「認める・誉める」の前に「信じる」を足して、「信じる・認め
る・誉める」を人間関係のベーシックにすべきだと思いますね。

8.「E.コミュニケーションの大切さ」

 今回のケースにおける救いは、店長がオーナーとの本当のコミュニケー
ションを取ろうとしているところです。
 本当の意味での意思疎通・信頼関係がないと、何事も長続きしません。
 建前論では裏表を作ることになり、使い分けが始まります。そんなこと
はすぐにバレルのです。
 本音でぶつかって、話をすべきです。怖がってはいけません。勇気を出
して意思表示することです。
 間違っていると言われようが、何をしようが、自分が信じていれば一理
はあるのです。
 そこまでやっても駄目ならその人との相性が合わないのです。それ以上
無理をするとお互いが傷つく事になります。
 しかし、もう少し深く話し合えば糸口が見つかるというところで、「も
ういいや」と投げ出して終わっしまうというケースが多々見られます。
 「本当の意思疎通は対立の向こうにある」のです。
 よく青春映画などでありますよね、対立している二人が素手で喧嘩をし
て、クタクタになって仰向けになりながら「お前もよくやるなぁ!」「お
前の方こそよくやるじゃないか」「ワハハハ・・」ってな感じです。
 こんな感じの本音・本気のコミュニケーションが求められるところです。

 付け足しですが、「コミュニケーションの密度・濃度は、時間によって
薄まる」ということを知っておくべきです。
 人間は同じ濃さを維持できないのです。だから確認しようとして相手と
の会話を求めます。その原則を知らないと、大切な間柄が疎遠になって、
さよならになるので、注意が必要ですよ。

9.「F.リーダーと組織のあり方」

 強引に引っ張るリーダーもあれば、皆のサポートをして、その結果リー
ダーの役目を果たすタイプもあります。
 強引型は、即効性がありますが、なにかしら恐怖感を与えているものと
思われます。
 サポート型は即効性は薄いですが、全員が燃え出したら強いものがあり
ます。
 今回のケースにおいて、リーダーは主観的にならず、大きな視点で全体
像を観察する力を持つことが大切なのではないかと感じました。
 片一方だけの意見を聞くのではなく、両方の考え方、意見を聞いて出来
るだけ中立な判断をしていくことが重要だと感じます。

10.「G.そしてどうするか?」

 今回の様に、厳しい話の後の行動が大切だと思います。
 すぐに次の企画を立てて、行動に移していくことで、今回急接近したこ
とが活かされてきます。
 良い雰囲気の中でどんどん言い合って、お互いが気を遣わないで自分の
意見をぶつけられる間柄を深める努力が必要です。
 ちょっとの時間を見て意見調整し、アイコンタクトで分かり合えるまで
になれば良いでしょう。
 そうなれば、私はもうその間に入る必要はなくなるでしょう。
 サイドから見守ることにしましょう。

11.最後に

 いかがでしたか?
 今回は初めて「ケースワークを事例にした考察方式」で書いてみました。
 「これはこれで、いけるんちゃうん」と自画自賛しています。
 読者の皆さんも、ありがちなケースを取り上げてケースワーク化し、各
人の考え方を知るために話し合ってみるのはどうでしょう。
 その様にして、視野の広い感性と対処方法が取れるように勉強していく
ことが大切ではないでしょうか!
 こんな感じで、勉強になりましたか?
 では、また次回お会いしましょう!

品質管理(後編) (経営の質の向上)

メルマガ再録 (2008年3月24日) 第62号


一般的には、経営の品質を計る基準は次の4つの項目に代表されると思います。「顧客本位」「独自能力」「社員重視」「社会との調和」。今回はこれに左右されず、独自の視点でサロンの品質を考えてみます。

         < 品 質 管 理 (後編) >

1.はじめに

 そう、前回の「はじめに」の部分で「今回はサービス業における品質に
ついて考えてみます。」と書いたのですが、生産現場における品質管理の
ことが主になってしまい、肝心のことが書けず、大変失礼しました。
 気を取り直して、書きます。
 一般的には、経営の品質を計る基準は次の4つの項目に代表されると思
います。
  「顧客本位」「独自能力」「社員重視」「社会との調和」
 今回の場合はこれに左右されず、独自の視点でサロンの品質を考えてみ
ます。
 ではスタートです。

2.経営の全体品質

 美容室経営の経営品質を大きく見ると、次の様な感じになるでしょう。
 (1)経営方針の品質
 (2)組織の品質
 (3)技術の品質
 (4)接客の品質
 (5)業務の品質
 (6)人材の品質
 まだまだ美容室は技術職と思っている人が多く、また上記の様な項目に
対し着目して、改善していくという認識も薄いのが現状です。
 では、1つづつ詳細な考察を加えてみます。

3.(1)経営方針の品質

 まず「経営の方向性がしっかりしているか?」という品質に対する質問
がありますね。
 ということで、GS(ゴールドスタンダード・黄金律)を整理してみま
しょう。
 われわれの美容室は何のために存在するのか、何を目的として経営する
のかという内容をまとめたものが「経営理念」です。
 そのために何をすべきなのかという「使命」については「ミッション」
という表現で言うこともあります。
 それを実行するのにこういう気持ちでやろうというのが「モットー」で
す。
 経営側として、スタッフにはこういうスタンスで接するというのが「ス
タッフへの約束」です。
 各サロンごとにお客様への対応の基本を決めるたものが「サロンコンセ
プト」です。
 お客様に対してどういう技術を提供するのかを決めたものが「技術コン
セプト」です。
 スタッフはお客様に対してどういう気持ちで接するのかを決めたものが
「接客コンセプト」です。
 スタッフが、私たちはこういう気持ちで働きますというのが「スタッフ
コンセプト」です。
 上記の行動の方向性をまとめて示すものが「行動指針」(ベーシック)
と言われるものです。
 こういった内容がバチッと文章化され、掲示され、朝礼などで唱和され
ているとなれば、相当レベルの高いサロンということが言えますね。

4.(2)組織の品質

 サロンを経営する上で、やはり縦の組織、横の連携、斜め組織の活用な
どの特徴と利用方法をしっかり認識して、全員が経営の目指す方向に向か
って集中出来る様にしなければなりません。
 よい組織とは、
  「各自が自分の持ち場をしっかり認識していること」
  「情報が縦横に通っていて、打てば響く組織であること」
  「自主活性型であること」
  「集中力があり、いざという時に爆発力・瞬発力があること」
  「協調性があり優しさが溢れている組織であること」 等々
 そういう組織を作るのがオーナーと幹部の役割です。
 うまく出来た組織は凄いパワーを発揮します。
 エンパワーメント(権限委譲)や、モチベーションアップの勉強も行い、
素晴らしい組織を作りましょう。
 組織の品質は忘れがちな項目ですが,非常に重要な内容なので、注意し
ましょう

5.(3)技術の品質

 美容技術の品質は、美容学校で勉強するので、改めて認識する必要はな
いように思えます。
 しかし実務上、PL法などで問題になることもあるので注意が必要です。
 PL法を少し説明しておきます。
 「PLとは、Product Liability、すなわち「製造物
責任」のことです。製造物責任制度とは、製品の欠陥によって生命、身体
または財産に損害を被った場合には、被害者は製造業者などに対して損害
賠償を求めることができる制度です。というもので、従来の民法の大原則
であった過失責任を欠陥責任原則に転換した被害者保護の法律です。とい
うものです。
 美容室で、髪の毛や頭皮、皮膚などを傷つけた場合など、クレーマー(
文句を付ける人)にとっては最高のネタになります、
 先日などは、スタイルが思った通りでなかったということで、えらい問
題にまで発展したことがありました。
 今は「今回のスタイルが気に入らない時にはアフター保証します。」と
メンバーズカードに書いている場合が多いですね。
 アフター(再技術)に来られたお客様には、誠意を尽くして対応しまし
ょう。
 結局、納得性のあるカウンセリングと、そこで決定したスタイルを作れ
る技術の習得を怠らないということに尽きるでしょう。
 だから、常日頃の新スタイルの研究、作り込みの訓練は欠かせないとい
うことですね。

6.(4)接客の品質

 接客においての品質は、まず基本価値のサービスをきっちりすることで
す。その上にどれだけ付加価値のあるサービスを出来るかということでし
ょう。
 基本価値がどこまでで、付加価値はどこからかという線引きは難しいで
すが、新人にはマニュアルを作って、それを確実にさせるという部分が基
本価値と考えて良いでしょう。
 そして、それをマスターしたら、自分の個性を活かしたトーク・気配り
を展開します。
 この気配りについては、各人の個性・人格に寄与するところが大きく、
バラツキが大きい様です。
 その改善策としては、ケースワークの例題を多く準備し、そのケースに
よる接客ロープレを数多くこなすという訓練を行って身に付けさせること
です。
 ベージックマニュアルは、自然に言葉・行動が発揮できるまでトレーニ
ングを繰り返すことしかありません。
 より上位の接客という概念で検討会を重ね、付加価値を基本価値に落と
し込み、さらに上位の接客をしていくということで、その店の品格が向上
します。
 これも、お客様がより快適に、より満足感を求めておられるという前提
条件を確認して、その要求を満たしていくためにするのだという概念をし
っかり認識することがまず大切なことです。
 スタッフの行動の一つ一つは、サロンのコンセプトの具現化・具体化で
す。その行動によってサロンの品格が問われることになるので、スタッフ
各人の細かい動き、気配りまで注意を払わなければなりません。

 クレーム対応は、そのサロンの接客が試される時です。
 より丁寧に、より慎重に問題点をお聞きし、きっちりと受け止めて、出
来る限りの対応をします。
 もし、自分で対処できない事項は上司の指示を仰ぎます。
 お客様が思われる以上の対処をすれば、それをきっかけにお客様は定着
または紹介までして頂けます。
 そんなクレーム対応方法を準備しておきましょう。

7.(5)業務の品質

 サロンの表は営業ですが、裏の仕事は業務と呼んでいます。業務の仕事
はいろいろとあります。
 業務の品質もしっかりしていないとロスをしたり、ミスをしたりします。
 サロンの「クリンリネス(掃除・美化)」が一番営業に近い部分です。
 掃除の品質は、いわゆる丸く掃除をしていたのでは綺麗になりません。
コーナーの隅々まできっちり四角く掃いて、拭いて、磨いてこそ、本当の
美化ということになります。
 そんな場所もお客様はしっかり見ておられるものです。だから、手を抜
かずしっかりやりましょう。
 次は、「金銭管理」です。
 本日の売上と現金を合わせる作業です。簡単な様でなかなか難しいこと
ものです。1円の過不足も、絶対に手を抜いてはならない項目です。それ
をしっかりすることは、サロン全体の緊張感を高める効果もあります。
 次は、「在庫管理」です。
 在庫は、品切れを起こさないことが一番重要ですが、在庫数を合わせる
ということも大切です。在庫はなかなか合わないものですが、そこをしっ
かりしていくことで、全体の数量管理に関する感覚が磨けて行きます。
 次は、「広告宣伝」です。
 お客様に出すDMは、スタッフの誠意が表れます。下手な字でも、一字
一字丁寧に書けばお客様には喜んで頂けます。手を抜かないことが重要で
す。ハンティング、ポスティングなどでの配る姿勢の品質も大切です。ど
こから見られているかも分かりません、ライバル店は、そんな悪い姿をお
客様に言いふらします。気をつけましょう。
 次は、「小物準備」です。
 営業で使うタオルやガーゼなどの洗濯、乾いた物をたたむ作業は、お客
様のことを思って行います。糸端が出ている場合などは必ず処理します。
営業前などに行なう場合は、その時点でテンションを上げる工夫も一緒に
しましょう。
 次は、「レッスン管理」です。
 スタッフの技術習得のスピードには個人差が大きくあります。努力しな
い事については叱っても構いませんが、習得が遅いからといってバカにし
てはいけません。個人個人の進行状況を把握し、個々に指導していきます。
 次は、「店舗管理」です。
 電球の切れたものの入れ替え、ディスプレイ、外観の維持管理、空調の
具合、BGMの選曲・音量など、故障箇所がないようにすること、より快
適に過ごして頂ける空間作りという品質の維持は必須です。
 次は、「個人情報保護」です。
 これについては、プライバシーポリシーをフロントに掲示するのが一般
的ですね。個人情報を聞く場合は、その使用目的に対し許可を頂く書面を
用意し、サインしておいてもらいましょう。
 細かく言えばまだまだありますが、これくらいにしておきましょう。

8.(6)人材の品質

 人罪~人在~人材~人財というレベルがあるそうです。
 人の品質というのは難しい問題ですね。それぞれの個性・人格が違うの
で単純に比較は出来ません。
 しかし、その人が持っている哲学、志す内容、表現のし方などについて
は理解しておく必要がありますね。
 前文にも書きましたが、「なぜ働くのか?」という質問に即座に「自己
研鑽」と言えるスタッフはやはりレベルが高いということになるでしょう。
 その様に、それに似たいくつかの質問を用意し、適切な答えが言えるよ
うに指導していくことが、これから求められるサロン内教育ではないでし
ょうか?
 また、コンピテンシーモデル(当メルマガ№26)を活用した気付き教
育や、コーチング(当メルマガ№12)を使った自主性の高め方などを使
って、人材の品質を高めていくことが大切でしょう。

8.最後に

 いかがでしたか?
 ちょっとサロンの経営品質というには無理やりの感のある内容でしたが、
参考になったでしょうか?
 一度、あなたのサロンも見直してみてはどう?

 では、また次回お会いしましょう!

品質管理(前編) (製品・サービスの質の一定化)

メルマガ再録 (2008年3月10日) 第61号


品質管理の定義と、私がかかわってきた製造会社の生産管理の品質の取組みについて工程を追って説明しています。

         < 品 質 管 理 (前編) >

1.はじめに

 私のメルマガ41号から50号までのヒストリーを読まれた方はよくご
存知でしょうが、私は若い頃モーターを作る製造会社の品質管理の仕事を
していたことがあります。
 それから転職して、美容室のコンサルティングを始めた頃、業界が違う
とこんなにも感性が違うのかと、大変違和感を感じました。
 それは、技術という言葉はよく使うのですが、「品質管理」という言葉
を誰も使わないからです。
 なぜだろうと思いました。
 美容室は品物を扱うのではなく、サービス業であり、サービスの質とは
言いますが、品質管理という言葉はふさわしくないということで使わない
というように解釈しました。
 でも、品質という言葉は製造業だけのものでしょうか? サービス業に
も不可欠なものですよね。
 ということで、今回はサービス業における品質について考えてみます。
 その前に、世間で言う品質、私がかかわってきた品質管理について一度
見直してみるところからスタートしましょう。

2.ISOのいう品質とは?

 まず、ISO(インターナショナル・・オーガナイゼーション・フォー・
スタンダーダイゼーション、国際標準化機構)が言う品質について調べま
した。
<ここから>
 ISOの云う品質とは、製造業であれば、製品の質、サービス業であれ
ば、サービスの質の事を言います。製造業であれ、サービス業であれ、イ
ンプットからアウトプットまで業務にプロセスがあり、その業務の過程を
しっかりして頂く事で、質の良い製品及び質の良いサービスが提供できま
す。ISOのいう品質保証とは、なにかの「モノ」そのものを保証すると
いう事ではなく、組織の業務品質という行為を保証するという事にあたり
ます。そのために必要なマネジメントシステムを構築して実施しましょう
という事です。
 ISO9001は品質の規格ではなく、品質マネジメントシステムの規
格という事に注意して下さい。言い換えれば、「モノ」についての規格で
はなく「仕組み」についての規格と言う事です。

3.ソフトウェアの品質の定義

 サービスに関するISOの規定を調べてみましたが、きっちりそれに該
当するものが見当たりませんでした。
 それで、考え方としては近いと思われる「ソフトウェア」の品質につい
ての解釈があったので掲載します。
<ここから>
 品質モデルは「ISO 9126-1」で規定されており、ソフトウェ
ア品質を次のように構造的に定義した。
 なお、日本ではその翻訳版が日本工業規格で「JIS X 0129-
1」となっている。
[機能性(functionality)]
 機能とその特性に影響する特性群。機能には、必要性が明確に述べられ
 ているものと、暗に示されているものがある。
   合目的性、正確性、相互運用性、標準適合性、セキュリティ
[信頼性(reliability)]
 ある状況がある時間続いたときにソフトウェアがどの程度機能するかに
 影響する特性群。
   成熟性、回復性、障害許容性
[使用性(usability)]
 利用するのにかかる手間、個人の努力などに影響する特性群。
   習得性、理解性、運用性
[効率性(efficiency)]
 ソフトウェアの性能やそれに要するリソース量に影響する特性群。
   時間効率性、資源効率性
[保守性(maintainability)]
 何らかの変更を加えるのにかかる手間に影響する特性群。
   安定性、解析性、変更性、試験性
[移植性(portability)]
 別の環境にソフトウェアを移行させる可能性に影響する特性群。
   設置性、置換性、環境適応性
<ここまで>
 こういう項目のリストは大変参考になりますね。これらをベンチマーク
してサービス業に置き換えて考えてみるとより深いものが出来そうですね。

4.製品の生産工程と品質について

 では、私がかかわってきた生産管理の品質について工程を追って説明し
ましょう。
 私は松下電器のモーターの部品を造る下請け会社にいて、昭和50年頃
から4年間ほど品質管理係を担当しました。
 その時のことをベースに書いてみます。
 美容師の皆さんにとってはなかなか面白い話かもしれませんよ。

(1)「設計の品質」
 設計は製品の全ての、そして品質の根源です。設計が悪ければ良い製品
が出来ません。
 そこには多くのノウハウが伝統的にあります。初級の設計者はそのノウ
ハウを吸収、引き継いでいくことが品質をキープするポイントです。

(2)「量産化の品質」
 設計が良くてもそれを量産化する図面に間違いがあれば、たちまち不良
品の山です。
 この量産化技術というものは見落としがちです。
 一つを作ることと1000を作ることでは全く意味が違ってきます。
 ここではいかに品質を保ちつつ、効率よく生産できるかを試作して、そ
の要素を図面化します。それが「仕様書」といわれるものです。これが量
産品質の要となり、この通り生産できれば100%良品となります。この
仕様書は、部品調達の購買と生産現場に渡されます。

(3)「購買の品質」
 購買は、量産の個数分部品を発注しますが、似たような部品ナンバーが
多く、部品コードを間違えて発注するケースが多くあるので注意が必要で
す。また数量も一つでも足りないと製品は完成しないだけでなくラインが
ストップしてしまうということで大損害を出してしまうことになるので、
大変重要なポジションです。

(4)「受入の品質」
 購買は、その仕様書に基づき、材料の購入手配をしますが、ここに一つ
の問題が隠れています。
 入荷した商品が本当に仕様基準を満たしているかということです。
 部品一つ一つがきっちり公差(仕様書で決められた誤差)内に入ってい
て初めて合格ということです。ちょっとくらいいいだろうと考えていると、
その少しの誤差が積もって、最終的には合わなくなるということが良くあ
ることです。
 なので、仕入部品の受け入れ検査は欠かせないものがあります。
 大量の部品の場合は抜き取り検査をします。これにはまた基準があって、
何個の数の時には何個抜き取りすれば目的とする品質を確保できるかとい
う計算方法が決められています。これはAQL(アクセプタブル・クオリ
ティレベル)といわれる抜取検査基準で、日本では検収(けんしゅう、検
査して収める)基準とされることも多くあります。
 製品の性質上、不良が安全性に深刻な影響を与える場合は、100%良
品であることが求められるため全数検査ということもあります。

(5)「作業工程の品質」
 仕様書と部品が準備出来れば、生産現場はいかに品質を維持しながら、
効率よく生産をするかということになります。
 順調に行くことが前提ですが、しかしそこには理論と現実の空白部分、
つまり不良の落とし穴が待っているのです。
 例えば、複数の線の束を一定のスペースに押し込めようとした場合、理
論では楽勝ではまったりしますが、実際は線がクロスしたりして、理論通
りには行かないものです。
 そうすると、設計通りに作業しようとすれば無理が生じます。これが不
良の1つの根源です。
 また、機械を使用する場合は、機械側の故障もあります。機械は絶対と
言うことはありません。これが2つ目の根源です。
 もう一つ、作業者の不注意があります。これが3つ目の根源です。
 機械の場合、初めは調子が良くても微妙な誤差が累積するうちに、だん
だんズレが生じてきて、品質規格の限度を超えることがあります。
 機械の誤差は、それを監視するのには人間の目では見えないので機械に
センサーを取り付けたり、抜き取りサンプルデータを採ったりしてグラフ
管理したりします。そうやって、不良発生を未然に防ぎます。

(6)「作業指示の品質」
 仕様書に従って仕事をしますが、現場ではいろいろな工夫がされます。
 作業の割り振りや、品質上、気をつけるポイント、以前クレームになっ
た箇所などを書き込んだ「作業指示書」を作成します。
 これによって、現場はその工夫とノウハウを継続的に使用することが出
来ます。
 但し、注意すべきはその「作業指示書」のバージョン管理です。古いバ
ージョンで作業すれば当然不良となります。
 だから、「設計図面(仕様書)」と「作業指示書」のバージョンを常に現
状一致しておかなければなりません。
 「設計図面(仕様書)」の一部修正は頻繁にあることです。そのたびに「
作業指示書」も書き換えるということを怠れば、大変なミスにつながるの
で特に注意が必要なポイントです。

(7)「工程間の品質」
 生産作業をしていると必ず不具合品が発生します。それを出来るだけ出
さないようにと思って改善活動を行なうのですが、それでもなかなか減り
ません。これは、設計の不備なのか、生産工程上の問題なのか、作業者の
不注意、または不慣れなのかを見極めて、不良を発生させている源流で不
良品発生をくい止めるということに力を入れます。
 ここで不思議なことがあります。前後の工程の仲が悪ければ不良は増え、
仲が良ければ不良は減ります。
 これは、ちょっとした気遣いをすることによって次の工程に良い結果が
もたらされるということです。
 また、後の工程から前の工程にこうして欲しいという要望も簡単に受け
入れられる素地が出来ていれば、品質は向上するのです。
 その会社の製品が部品レベルだとすれば、この製品が何の機械に取り付
けられるのかということを認識することも大切です。
 私の会社が作っていたのはエアコンやコピーなどに使用するモーターだ
ったのですが、私は会社に入ってから7~8年してからそれを知りました。
 それをしってからはやっぱり意識が変わりましたね、

(8)「作業者の品質」
 見落としがちなのが作業者の品質です。
 作業者の技術訓練はもちろんですが、自分たちはこの会社の従業員なの
だというプライドを持つことですね。
 その前に、会社自体が社是社訓を明示して、しっかりした技術と品質を
実践しているという証明が必要ですがね。
 対外の方が来られたら「きっちり挨拶する」「言葉遣いをきっちりする」
「名札はしっかり付ける」「正しい姿勢で仕事する」など、日頃の態度が
品質にも現れるので、躾(しつけ)教育は絶対必要です。
 技術の品質として、例えば半田付け技術があります。これなどは会社で
半田技術講習会や、免許制度を実施して技術習得や向上に力を入れます。
 そうすることにより、意識も向上し品質も確保されます。

(9)「工程最終チェック」
 工程品質が100%という保証があれば検査は不要ですが、組み立て製
品の場合は、品質が一定でないので最終チェックは当然必要です。
 本当にやってみるとわかりますが、不良品を見つけるということは大変
難しい仕事なんです。
 チェック項目は多岐にわたります。ベテランチェックマンになると、こ
の製品はこのあたりに良く不良が発生するということを覚えているので、
まあまあなんとかやりこなせます。
 しかし、初心者チェックマンは大変です。次々コンベアーに流れてくる
製品の全てのチェック項目を見ることは、至難の技で、もれが発生します。
 それならどうするか?・・・源流管理を完璧にすれば、この最終チェッ
クも検査員も不要な存在となり、経営効率はグンと向上するのです。

(10)「不具合品の管理」
 不良品はラインから外されます。この場合、修理が利くものは工程外で
修理してラインに戻すか、特別なルートで検査に持ち込みます。
 そこで、現場は不良データに記録することはもちろんのこと、それをリ
カバリーした方法・工夫を「作業指示書」に書き残します。これは再発防
止・良品の再現性を持たせるために絶対に必要なデータです。
 品質会議などでこのデータを元に対策会議を開き、源流対策を行ないま
す。
 そういう風にきっちりしたフィードバック出来る品質の組織を作ること
が品質の向上につながります。

(11)「検査の品質」
 検査は合否を判定する最後の砦です。
 本来、検査工程は価値を生みません。しかし、製品としての価値を保証
するという意味では欠かせない工程となります。ということで、最小の手
間で最大の品質を保証するという狙いが必要です。
 ここでも、「不具合品の管理」ということが大切です。ここまで出来た
不良製品を良品と混同しないように別管理し、データをつけることをきっ
ちりしなくてはなりません。
 これも品質改善会議の元データとして貴重なものになります。

(12)「計測器の校正」
 検査器は正しいと思い込んではいけません。
 検査器も狂うことがあるのですから、定期的にメーカーに出して検査器
を検査してもらわないといけないのです。
 これについても、記録は必要です。
 このことを「検査器を校正する」と言います。これは親会社と連携して
行ないますが、この証明期間が切れないように管理しなければなりません。

(13)「出荷の品質」
 出荷時のポイントは、荷姿と出荷伝票です。
 荷姿が悪ければ荷崩れを起こし、折角造った製品がトラックから落下し
てしまい台無しです。
 出荷の伝票も間違わないようにしなければなりません。この伝票が確認・
検収されて、売上につながるので大切なものです。

(14)「ロットナンバーとクレーム管理」
 生産ロットナンバーは、その会社が作ったという証明です。
 そのロットナンバーは会社で管理しなければなりません。これをエビデ
ンス(製造記録・証拠)といいます。
 もう一つ大切な言葉として、トレーサビリティ(追跡性)というものが
あります。
 クレームが発生した場合、(市販されたその商品に不具合が生じた場合)、
その製品・部品を生産した会社がどこなのかを突き止めるのに、そのロッ
トナンバーが確認されます。要するに源流をたどるキーになるわけです。
 ということで、その会社の中でいつ作られ、誰が作業したかまで分かる
ことになってきます。製造担当は、個人にまで至ってきます。
 そうなった場合は、クレーム内容をしっかり分析して、再発しない対策
をしっかり考えて、納品先に提出します。
 生半可な対策では了承してもらえないので、本当に源流での対策が求め
られるので、設計の見直し、生産現場を徹底的に改善し、その改善された
やりかたで作業標準書を書き直し、全員の前でそのやり方を徹底します。
 
(15)「アフターの品質」
 部品製造会社においてはアフター品質を気にすることは少ないですが、
例えば、親会社の工程の品質担当者と仲良くなって、当社の製品の品質状
況を聞くということをすれば、積極的でいいですよね。

5.最後に

 あれれ?
 本題に入る前に、誌面を使い切ってしまいましたわ。
 大きな計算違いですわ。まいったなぁ!
 ということで、美容室の品質管理については次回チャレンジします。

 では、また次回お会いしましょう!

コラボレーション (共同作業)

メルマガ再録 (2007年12月24日) 第56号


コラボレーションとは新しい出会いと創造であり、そこに人間的配慮を加えることでワクワク・ドキドキした新しいサムシングが生まれるものです

          < コラボレーション >

1.はじめに

 今回は「コラボレーション」について考えてみます。
 コラボレーションという言葉の概念は、単に共同作業という感じでもあ
るし、協働やパートナーシップという意味もありそうだし、なかなか深そ
うなテーマなので、そのあたりを「心と技のあいだ」流に考察してみよう
と思います。

2.コラボレーションとは?

 いつもの様に「コラボレーション」をパソコンで調べました。
 「コラボレーション(英:collaboration)とは、共に働く、
協力するの意味で、共演、競演、合作、共同作業、利的協力を指す言葉。
しばしばコラボと略される。音楽、漫画、企業間など、また、ブランドと
雑誌、ショップなどの共同企画など、「コラボレーション」と呼ばれるも
のは多岐に渡る。」(ウィキペディアより)とありました。
 さらに、関連項目としては、パートナーシップ、地域力、ソーシャルキ
ャピタル、コミュニティガバナンス(地域コミュニティの民主的ルール作
り)、まちづくり、意思決定、合意形成、エンパワーメント(権限委譲)、
ワークショップ、ファシリテーション、健康づくり、社会的相互作用と、
なにやら今までこのメルマガでテーマにしてきた項目も数多く列挙されて
おり、なにか非常に引き合うものがありそうです。

3.恐竜大作戦

 先日、新聞に「ナレッジエンタ読本」の宣伝が載っていました。
 詳しくは、下記を参照のこと。
   http://www.mediafactory.co.jp
 これを見てかなりショッキングでした。
 たとえば、空想科学研究所の柳田理科雄氏と恐竜造形師の荒木一成氏に
よる「恐竜大作戦!」、作家のあさのあつこ氏と天文学者の福江純氏によ
る「近未来入門!」、さらに全駅下車達成者の横見浩彦氏と秘境駅訪問者
の牛山隆信氏による「すごい駅!」などの本が発刊されるという記事です。
 さらに「空想のキッチン!」というタイトルで料理家のケンタロウ氏と
柳田理科雄氏の本も予定されています。
 この本のシリーズの謳い文句は、以下の通りです。
 「教養を遊べ!ナレッジエンタ読本」創刊! 道を究めた専門家と、好
奇心あふれるナビゲーターが手を組んだ! やさしい入門書でありながら
気づくと奥深い知識のとりこに―――。まったく新しい、次世代の知的教
養本シリーズです。」
 これって、なんかワクワクしませんか?
 専門家同士のウンチクと専門知識がコラボレーションして、なんかもの
凄いものが生まれるって期待感がありますよね。
 結局コラボレーションって、そのワクワクした期待感に答えがありそう
ですね。

4.全方向のコラボレーション

 通常、コラボレーションという言葉を使う時は、人と人との関連性にお
いてということが条件の様ですが、全方向に眼を向けた場合、身の周りに
ある全てのもの、全てのこと、地球環境までもコラボの対象になってきま
す。
 この時のコラボレーションのポイントは何でしょう?
 それは、「自然界のものに対して畏敬(いけい)の念を持つ」という謙
虚な気持ちではないでしょうか!
 この意識があるかないかでは、その物の扱いは180度変わってきます。
 雑に扱うとそのしっぺ返しが必ずやって来ます。
 自然を敬う気持ちを皆が持つことが出来れば、もっと環境は改善される
はずです。

5.共存共栄

 「共存共栄」という言葉があります。共に存在・存続し、共に栄えると
いう精神です。これがないと、単に一方的で支配的な関係に陥ってしまい
ます。
 コラボレーションは、あくまでも相手を重視して、両立するWIN&W
INの関係が前提です。
 この精神の欠如で、自然・環境破壊や動物・生物を絶滅の危機に追い込
んでいるのは人間のエゴでしょう。
 今朝(23日)の新聞に、キリマンジャロの雪が後20年もしない内に
溶け去るだろうと書いていました。
 地球温暖化などはその決定的な証拠で、その付けが回ってきて、自分の
生活をも窮地に追い込んでいることは皆さん周知の事実です。

6.パートナーシップ

 人と人とのコラボレーションにおいて一番大切な要素は、「お互いを大
切にする気持ち、尊敬の気持ち、立てる気持ち」でしょう。
 その気持ちがないと、パートナーシップ、ハーモニーということが成立
しないからです。
 私の考えですが、日本人は、封建制度などの上下関係が長く続いたなど
の要素において、縦の関係は上手く作れますが、横の関係を作るのは苦手
なのではないでしょうか。
 パートナーシップという考え方は、欧米からの影響で近年、そういう仕
事上のスタンスが普及してきたものであると思います。
 そんなことを前提にすると、パートナーシップという考え方は日本では
育ちにくいし、定着しにくいのではないでしょうか?
 パートナーシップをあらためて定義してみると、「お互いの力を認め合
って、同等の立場で、協力して事に当たる関係」と解釈します。
 ということを前提に考えると、コラボレーション/パートナーシップは
「相手を大切にする」「相手を認める」「相手に優しい」という言葉がき
っちり出来ていないと本当の意味のパートナーシップは育たないでしょう。

7.コラボの勧め

 全てのもの、こと、相手と素晴らしいコラボレーションをしている人は、
本当に出来た人です。
 融和している人です。溶け合っている人です。自然体です。
 しかし近年、コラボを出来ない人が増えていますね。
 引きこもりや、対人恐怖症、ストレス障害など、なかなか社会・相手と
うまくコラボが出来なくて、困っている人が多いようです。
 コラボを上手にするには、自分のこころを開くことが最初だと思います。
 自分の都合を優先するだけでは、相手も同じ様に振舞うので、お互い良
い関係は構築できません。
 自分から進んで、オープンにしていくことが最初のルールです。
 しかし、自分を持たない人はそれが出来ないのです。
 だから、相手を受け入れるにはまず自分を確立することが必要であると
いうことになってきます。
 そのためには、相手を受け入れる必要がある。
 「自分を持つには自分を無くせ!」「自分を確立するために相手の意見
を受け入れろ!」
 これは、まるで矛盾する命題がぐるぐる回っているので禅問答みたいな
感じですが、要するに「まず、素直であれ!」ということです。

8.気遣いの進め

 良いコラボーレーションを行うには、人間距離を適度に保つことが必要
です。
 相手に近づきすぎても駄目、遠すぎても効果がない。
 この場合の近づき過ぎということは、個人の領域に足を踏み入れるとい
うことであり、近づき過ぎるのを怖がり、嫌がります。
 遠過ぎるというのは、社交辞令ばかり並べていて、建前中心だと、コラ
ボレーションどころではありません。
 ということで、出来るだけ相手に近い位置で、失礼にならない微妙なポ
ジションをキープすることが大切です。
 また、教育などについても同じ様なことが言えます。
 相手のやる気を引き出し、モチベーションを高くキープするには、指導
側の立ち位置をしっかり認識し、指導者としてのポジションと個人として
距離感をしっかり維持しないといけません。
 コラボレーションというべきかどうかわかりませんが、夫婦間について
の人間関係を考えてみましょう。
 お互い認め合い、ケアし合いながら家庭を築いていくということにおい
て、相手への気配り、気遣い、支援など、人間関係の基本・原点として一
番押さえておかないといけないコラボレーションでしょう。
 「夫婦、家庭において、唯一休まるところだからわがままし放題でよい」
とう旦那はいませんか?
 これは、本当にそれで良いのでしょうか?
 それで良しとして受け止めている奥様は、本当にストレスはないのでし
ょうか?
 他人の私が口をはさむべきではありませんが、考えてしまいます。
 話は、具体的になり過ぎましたが、まっ、こんな感じで、どんな仕事で
も、人間関係でも、それこそペットとの関係でも気遣いが大切であるとい
うことを言いたかったわけです。

9.まとめ

 この様に考えてきて、「コラボレーションは新しい出会いと創造であり、
そこに人間的配慮を加えることでワクワク・ドキドキした新しいサムシン
グが生まれるものである」と定義します。
 「全てはコラボレーションである」
 この様に考えると、いろいろなものが見えてくるのではないでしょうか!
 そういう意識で、日常取り組んでみましょう。
 きっと、自分の存在感が際立ちますよ!

10.最後に

 年末の忙しい時なので、少し短いですが、今回はこれでおしまいです。
 では、また来年お会いしましょう!

アイスブレーキング (緊張ほぐしのためのアクティビティ)

メルマガ再録 (2007年12月10日) 第55号


集合セミナーなどで初対面の人達と会話をする必要が生じた時、かなりの緊張が伴います。このアイスな(凍りついた)状態をブレーク(打開)する方法について考察しています。

          < アイスブレーキング >

1.はじめに

 研修会などでの初対面の人とはどうしても固くなって、自由な雰囲気で
話も出来ないし、意見も出せないですよね。
 多分、大抵の方は、この冷たい雰囲気から逃れたいと思うでしょうね。
 私は「2分で10年来の友人になれる」をキャッチフレーズにしている
のであまり問題はないですが、、、、
 アイスブレーキングとは、「緊張ほぐしのためのアクティビティ」と訳
されます。(アクティビティとは、目標やねらいを持った最小単位の行動
のことです。)
 私が考えるところ、アイスブレーキングには大きく分けて「自分の緊張
をほぐす」ということと、「その場の緊張を緩和する」という2つの方向
性がありそうです。
 ということで、今回は、このアイスな(凍りついた)状態をブレーク(
打開)する方法について考察してみます。

2.自己紹介

 まず「自分の緊張をほぐす」ということで、自己紹介の場面を考えてみ
ます。
 自己紹介は当然初対面の時なので緊張しますね。
 なぜ緊張するかというと、これまたしかり、ホメオスタシス(自己防御
反応)のせいでしょう。
 いつもの仲間なら緊張しないのに、見知らぬ人がいると緊張する。とい
うことは、初対面の相手がどんな人で、何を考えているか分からないとい
う不安が、こちらに構えさせてしまうからでしょう。いわゆる気が許せな
い状態ですね。
 商談の場合は、名刺を渡してすぐ仕事の話に入ります。
 それでは緊張から入るのでミスマッチしてしまうことが多いでしょう。
 だから、すぐに打ち合わせに入るのではなく、少し世間話などをすれば
緊張がほぐれます。が、これは相手を見てしないと「余計な時間を取りた
くない」というオーラを出している人には気をつけないといけません。逆
効果になるからです。
 友人・知人・尊敬する人など共通の人物の話題などはブレークには最適
です。出来れば事前に人脈などの情報を得ていればGOODでしょう。

 挨拶がやたらと上手な人がいますね。
 その人を良く観察すると、「つかみの笑い」が必ず入っています。これ
がなかなか難しい。万人が笑えるウイットに富んだ人の挨拶は本当に惹き
つけられます。
 私もそんな挨拶が出来たらいいなと思ってはいますが、これは本当に知
識と教養と経験がないとなかなか出来るものではありません。まだまだ単
純な挨拶になってしまうのは勉強不足です。
 特に、英国系の皇室など(チャールズ大使の挨拶をTVでみましたが)
は必ずウイットから入ります。気が利いたウイットは知性をうかがわせま
すからね。是非、習得したい技術です。
 こんなウイットの情報がありましたら、教えて下さい。

 自分の名前を言うときは、言い慣れているものだから「タニグチタカシ
です」と一気に言ってしまいます。
 これは駄目なんだそうです。一気に言われても覚えられない。だから、
姓と名の間で一呼吸置くのです。
 「タニグチ(一呼吸)タカシです」というのとでは、随分違います。
 やってみて下さい。

3.ワークショップでのアイスブレークゲーム

 初対面の方とのワークショップ(研修会)などでリーダーが雰囲気を和
らげたり、和ませたりするのにアイスブレークゲームを行うことが良くあ
ります。なかなか面白くて、一挙に打ち解けますよね。
 そのアイスブレークゲームの例を2~3上げてみましょう。
(1)グーとパーゲーム
 参加者に、どちらかの手をパーにした状態で前に出し、もう片方の手を
 グーにした状態で胸に当ててもらいます。リーダーが「せーの」と掛け
 声をかけたら、左右の手を入れ替えます。この時、手前に出している手
 が常にパーになっているかがポイントとなります。一定回数を行ったら、
 今度は手前に出す手をグー、胸に当てる手をパーにして入れ替えます。
(2)タイタコゲーム
 参加者には、2人1組のペアをつくった後、「宣戦布告のしるし」であ
 る左手で握手をしてもらいます。その上でじゃんけんをし、片方がタイ、
 もう片方がタコになります。リーダーがタイかタコとコールをするので、
 「タイ」と言われればタイの人がタコの人の手の甲を、握手している手
 と異なる手で叩きます。タコの人は叩かれないように空いている手で防
 ぎます。
(3)名刺交換ゲーム
 →参加者に1枚小さな紙を配ります。参加者には会場を自由に動きまわ
 ってペアになれる人を探し、その人とじゃんけんをします。じゃんけん
 に勝ったら、勝った人は自分の紙に負けた人の名前を書いてもらいます。
 名前が5人集まったらゴールです。

 とまあ、こんな感じです。
 研修会以外に、朝礼やミーティングの前に実行してテンションを上げる
と言うのもいいでしょうね、
 私がいつもやっているのは前にも書きましたが、GOOD&NEWです。
 直近に起こった良い出来事を輪になって報告します。悪いことしかなく
ても、そこからの学びを報告します。
 要するに、その報告内容を共有することで、一気に打ち解けられるとい
うことです。

4.逆境はチャンス

 「初対面の集団において、周囲は基本的に冷ややかである」という定義
から初めなければなりません。
 どの様に打ち解けたらよいのか分からなくて、ドギマギしているからで
す。どうしたらいいか分からないのです。
 ここにヒントとチャンスがあります。
 裏返すと「この場を温かくし、話し合える雰囲気を作ることが出来たら
その人は間違いなくその場のリーダーになれる。」ということです。
 どうですか?
 逆境はチャンスですよね。
 だから、その場でアイスブレークする手法を発揮することが出来たら、
信頼感を集めることが出来るので、すなわちリーダーへの近道だというこ
とが言えます。素晴らしいではありませんか!
 そんな効果のあるアイスブーク手法は是非身につけたいテクニックです
ね。

5.ゲームに頼らないアイスブレーク

 「ゲームに頼らないアイスブレーク」って、結局は話術ですよね。
 その話術のポイントは、私は「お互い人間である。話せば分かる。」と
いう原則からスタートすることだと思っています。
 たとえば、その女性の名刺の名前が「千恵」であれば、この名前を何か
にちなんで褒めます。
 「千恵さんですね。千の恵みを与えるんですね。道理でふくよかな顔立
ちだと思いました。」とか、「千恵さんですね。親戚に千恵ちゃんがいま
すが、千恵という名前は美人が多いですね。」なんてね。

 良く使うのが、「名前当てましょうか?」なんて言います。
 当たるわけはないのですが、過去のデータでよく似た人がいたら、その
人の苗字や名前を言います。
 相手は「違います。」と言います。
 続いて「それじゃあ。田中さん?」「違います。」「吉田さん?」「違
います。」なんてやっている内に相手のリアクションによって、その人の
感じがつかめてきます。
 最後に「私のデータベースに追加したいので教えて下さい。」と言って
謝ると「村上です。」と会話になり、一つ壁を越えた感じになります。

6.子供とのアイスブレーク

 壁を乗り越えるのは、自分のプライドを捨てて、自分から歩み寄ること
です。
 たとえば、気難しそうな子供がいたとします。
 その子と対話するということにチャレンジしてみて下さい。
 子供は初対面ではなかなか気を許さないですよ。
 ただ話し掛けただけでは相手ペースになり、なかなか寄り付けません。
 通常の大人だと、ベタベタと寄って行き「○○ちゃん、大人になったら
何になりたいのん?」とか聞きます。
 多分子供は心の中で「そんなもん、今から分かるわけないやろ!」と鼻
で笑っています。もうここで負けです。
 だから、こっちから行っては駄目です。
 私流にはこうです。
 まず、無視します。そうです。まず無視から始めます。
 無視すると、相手は警戒心を解きます。
 次に、ちらっとその子を見て、気にします。
 相手はふいを突かれて、防御するタイミングを失い、反応しかけますが
「あかん、あかん」と思って、閉じこもります。
 こちらは、また無視します。
 またふいをついて相手の目を見ます。
 また、反応しかけて閉じこもります。
 しかし、この時点ではかなり気になる存在になっています。
 今度は、タイミングを遅らせて、見ます。
 多分、その時は相手はこちらを気にして見ています。
 そこですかさず、面白い顔をします。
 また閉じこもります。
 またタイミングを遅らせて見ます。
 今度も変な顔をします。
 そうすると、ニコッとします。
 この時点でアイスブレーク成功です。
 この後、すぐに話しかけず、手だけで合図したり、じゃんけんしたりし
ます。
 それが出来るようになれば、手招きすれば相手から寄ってきます。
 こう考えると、目~態度~手振り~会話という辛気くさい手順ですが、
何か真理があるのではないでしょうか?

7.ノーボーダー

 相手とのコミュニケーションを取ろうとしたら、「いい格好をしない」
「気取らない」「斜に構えない」などの注意が必要です。
 要するに、納まっていては駄目です。
 「本当に分かり合いたいなら自分から相手を知りに行く」というスタン
スが大切です。
 それには自分のバリア&ガードを外すことです。そうしないと入りたく
ても入って来れません。
 ボーダー(境界線)を作らない=ノーボーダー精神が必須です。
 そうすると、本当に気持ちよく良く入ってきてくれます。
 さらに良いことに、それは本音で来てくれます。
 そうすると、話が早いです。
 早く仲良くなれます。

8.最後に

 アイスブレークは大きく分けて「自分の緊張をほぐす」という課題と、
「その場の緊張を緩和する」という2つの方向性がありそうだと冒頭に書
きましたが、やはりそんな感じでしたね。
 「相手も同じ人間である」と大きく構えた時に、そのアイス(氷)は薄
くなって溶け去って行くのでしょう!
 そんな心構えで人に接すると自分が大きくなったように感じ、きっと上
手くいくと思いますよ。

 では、また次回お会いしましょう!

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