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心と技のあいだ実践メソッド (答を引き出せるノウハウ)

メルマガ再録 (2007年10月22日) 第52号


「どのようにすれば不安を克服できるのか?」「心と技をつなぐポイントは何なのか?」「物事を成し遂げるための心の持ち方はどうすれば良いのか?」などについて考察しています。

       < 心と技のあいだ実践メソッド >

1.はじめに

 今回は「心と技のあいだ」を結ぶストーリー性について考えてみたいと
思います。
 「どのようにすれば不安を克服できるのか?」「心と技をつなぐポイン
トは何なのか?」「物事を成し遂げるための心の持ち方はどうすれば良い
のか?」などについて考察します。
 前々回の前文で「心構え」「身構え」「考構え」について書きました。
要約するとこんな感じです。
 「心構え」とは、プラスの心、平常心、情熱、執念など気持ちの持ちよ
うです。「身構え」とは、所作、動作などの表現の技術です。「考構え」
とは、イメージ力、シンキングスキルなどの考え方の構えです。
 こんな内容もヒントにしながら始めたいと思います。

2.新しいことに対する障害

 従来から知っていることや、経験したことを繰り返し行うことには不安
はありませんが、新しい何かをしようとした時に障害になるのは、その未
知の領域に対する漠然とした不安です。
 この不安はどこからやってくるのでしょう。
 それは、人間の本来持っている「ホメオスタシス」という恒常性の機能
からくるものです。
 現状を維持して危険から身を守るという機能は本能です。特に生命に関
することにはそのフィードバック機能が敏感に働いて、その危険から遠ざ
かろう、遠ざけようとします。
 危険・不安に対して、人間は生命保持、自己防衛の本能が働き、未知の
ことに対処するには、その傷害を防御・除去するために拒否・拒絶反応が
起こって当然なのです。
 では、その不安を打ち破り、ビビった気持ちをクリヤーし、「やろう!」
という強い気持ちで取り組むようになるには、また人にそうさせるにはど
うすれば良いのかを掘り下げて考えてみましょう。

3.条件を出す人

 物事に取り組む時、人はよく言いますよね。「○○があれば、××出来
るのですが・・・・」
 例えば、
  A「お金があれば、どこへでもいける。」
  B「愛さえあれば、幸せになれる。」
  C「人さえいれば、売上はあがる」
  D「チームワークさえ良ければ、もっと盛り上がる。」
 もし、上司が「そうだね。ではその条件を揃えてあげよう!だから頑張
ってね!」と言って、そうしてあげたとしたらどうでしょうか?
 そんな考え方をしている人は、その場はOKでも、きっとまた次の条件・
要求を出してくるのは見え見えですね。
 考えてみると、その条件をクリヤーすること自体が、その課題を達成す
ることに他ならないと言うことが、その人には分かっていないのです。

4.不安を取り除く

 では、こんな条件を出す人の心の部分に対し、どのようにアドバイスし
て改善出来るのかについて考えてみましょう。
 前項の課題は明確です。
  Aはお金をいかに作るか。
  Bはいかに愛を育むか。
  Cはいかに人を集めるか。
  Dはいかにチームワークを作るのか。
 と言うことでしょう。
 しかし、本人は、漠然とした不安があるので、条件を出して防御して
しまうのです。
 知っててもやりたくないという人は、失敗のイメージが目の前にチラつ
いてしたくないというマイナス感情になっています。
 また忙しいからというを理由に防御しようとしている人は、その忙しさ
をクリヤーする方法を知らないという意味では、問題点は同じです。

 つまり、「やり方が分からないので前進できない。」「やり方が分かれ
ば前向きになれる。」という点に絞り込むことが出来ると思います。
 だから、本人の成長を考えると答そのものを教えるのではなく、あくま
でも答の出し方(やり方)を教え、不安を取り除くことに専念するという
ことが大切な要素になります。
 濃霧の中では前進が出来ないように、霧を晴らしてあげるのではなく、
その霧の晴らし方を教えると言うことです。

 まとめると、「達成のノウハウを知らないから不安があり、ホメオスタ
シス(恒常性)が働いてそれを受け入れられないから前に動けない!だか
ら、答ではなく、答を引き出せるノウハウを教えるべきだ!」
 私はこれが最大のポイントだと思います。

 だから、このメルマガ「心と技のあいだ」のテクニックが必要であると
思って永遠と問いかけ続けているのです。

 問題から逃避する本人に、自分の不足部分と達成の仕方のガイドライン
を教えてあげれば、本人は自力で前進できます。
 考え方によれば、問題を解決するということは、大変楽しい作業です。
それをクリヤーすることで、一つステージが上がるわけですから。

 教えても動かない場合は、本人の吸収が良くないということもあります
が、それ以上に教える側の能力・努力不足だと思います。
 お互いがそれを認識すれば、共育という文字で表されるように、本当に
一つになって前進して行こうという気持ちになれれば、きっと前途は開け
てくると思います。
 そう思って、信じて共育することが、何よりも大切です。

5.どういう気持ちで取り組むのか?

 想いにはパワーがあります。
 だから、物事を成し遂げようとしたら、何よりも心構えを優先して考え
の中心に置くべきです。
 だから、物事を成す時には、まず先にマインド(心構え・キーワード)
があり、次に具体的ノウハウ&テクニックという順番になります。
 という考えに基づき、次の例を考えてみました。
 A.テーマ   「気配り」
   マインド  「おもてなしの心」
   インプット 「観察眼、言葉、素早いレスポンス」
   プロセス  「お客様の観察」
   アウトプット「右足に乗せて一歩踏み出す」(行動の具現化)
 B.テーマ   「店販」
   マインド  「お役立ちの心」
   インプット 「商品知識、毛髪科学」
   プロセス  「お客様の髪の状態把握」
   アウトプット「ベストマッチ商品の提案」
 C.テーマ   「ブログ」
   マインド  「分かち合いの心」
   インプット 「注意力、情報力、文書力、画像」
   プロセス  「テーマ選定、作文」
   アウトプット「毎日発信し続ける」

 ちょっと新しい思考法として、この心構えマインドを入れてみて下さい。
 それが、サロンコンセプトと連動していれば最高ですね。
 このマインドレベルが高いほどインプット~アウトプットのレベルが高
くなります。
 このことに関しては、以前のメルマガの「ワークデザイン的思考法」の
中で詳しく取り上げているので、読み返してみて下さい。

6.出来ない→出来るへ

 それではもっと深い部分で、どういう心構えを持てば上手く出来るのか
を考えてみましょう。
  A.そのためのポイントは何ですか?
  B.そのために自分が不足していることは何ですか?
  C.自分のイメージを構築するための源泉は何ですか?
  D.発想の泉は何ですか?
  E.何を学習すべきなのですか?
 コーチングで出てくる「フォーカス(焦点)」「レバレッジポイント(
作用点・最大のポイント)」「学習」というキーワードがかなり大切な要
素となります。
 問題解決や壁を越えるにあたり、最終的には、自分の事として、自分の
心として何を学ぶ必要があるのか、それが問われます。
 「自分に解けない課題は現れない」「全ての答えは自分の中にある」とい
うことが真理であると思って物事に対処すれば、必ず問題は解けるのです。
 その物事を物理的に解決しようとする前に、自分の内的(心の)レベル
を向上する学習のポイントに集中してそれが習得できれば、その物事は解
決出来たも同然です。
 だって、人間は心により動いているのですから、昨日までの自分を超え
る心と技の学習をしていくことにより、新しい課題をクリヤーできて行く
ということになるのですからね。

7.気配りが出来る人に・・・

 気配りが出来る人になって欲しいというニーズを良く聞きます。これに
はどうしたらよいでしょう?。
 その本人が本気を出すに至るには、何をすればよいのでしょう?
 それは、言えば簡単です。
 本人が、気配りが出来る人になりたいと思うようになることに協力すれ
ばよいのです。

 それにはどうするか?
 気配りの手本を見せるのではなく、気配りとは何か?、どうすることが
気配りなのかをまず説明し、そういうことが出来る人になりたいのなら、
自分は心と技において何が必要なのかを本人に考えさせることから始めれ
ばよいのです。
 そして、レベルは低くとも、一つの気付きが次に繋がっていくというこ
とを認識して、継続的に意識・意欲を絶やさないようにフォローしていく
ということで、気配りの幅がどんどん増えて行き、しっかりした感動のサ
ービスが出来る様になって行きます。
 そして、ついに本気心に火がついてモチベーションが急激に向上し、自
然人(じねんじん・自ら燃える人)に進化するのです。

8.最後に

 抽象的な内容を具体的に書くと言うことは、なかなか難しいことですね。
 私の言いたいことが少しでも伝わったなら嬉しいです。
  ・心が身体を動かしているのである。
  ・心の成長が人の成長である。
  ・恐がらずどんどん未知のことにチャレンジして心を磨こう。
  ・何が来ても恐くないように、最大の準備をしておこう!
  ・それには、心と技のあいだの勉強をしよう!
 なんか、最終回みたいになってしまいましたね。
 これからも続けますので、よろしくね。

9.次回案内

 今のところ、ノーアイデアです。
 今回の後半で「気付き」「気配り」「優しさ」というキーワードが出て
きたので、「マインドデザイン」なんてなテーマも面白いかな?何て思っ
ています。
 では、また次回お会いしましょう!

ゴールドスタンダード (規範をまとめたもの)

メルマガ再録 (2007年3月12日) 第37号


黄金律とも言います。リッツカールトンホテルのクレドを研究サンプルとして、モットー、従業員への約束、サービスの3ステップ、ベーシック(行動指針)などについて考察しています。

         < ゴールドスタンダード >

1.はじめに

 「ゴールドスタンダード」って余り聞かない言葉ですが、経営理念、サ
ロンコンセプト、行動指針などの言葉はよく使いますね。
 つまり、そういった会社の方向性を示す心のより所となる規範をまとめ
たものをゴールドスタンダード(黄金律)と言います。
 この言葉が有名になったのはたぶん、リッツカールトンホテル(以下リ
ッツ)が取り上げられる様になってからではないでしょうか?
 リッツでは次の5つを合わせて、ゴールドスタンダードと言っています。
  (A)クレド
  (B)モットー
  (C)従業員への約束
  (D)サービスの3ステップ
  (E)ベーシック(行動指針)
 今回は、これらの内容を深堀りすることにより、あなたのサロンのゴー
ルドスタンダードを作るヒントになれば幸いです。

2.(A)クレド

 これは、いわゆる信条と言われるものです。
 自分たちは何を大切にして経営するのかを明確にしたものです。
 経営理念も信条です。
 リッツのクレドを抜粋すると次の様になります。
 「心のこもったおもてなし。快適さの提供」
 「最高のパーソナルサービスと最高の施設の提供」
 「願望やニーズの先読み」などです。
 では、サロンではどんなクレドになるか、私なりに考えてみました。
(1)サロンのお客様に対し、最新の技術と、心からのサービスと、期待
   を超える満足を提供することを大切な使命と心得ています。
(2)お客様に、個性・時代性・再現性を重視したヘアスタイルを楽しん
   で頂くために、最高の美容技術と、おもてなしと、快適な空間を提
   供することを約束します。
(3)当サロンでお客様が手に入れられるものは、お気に入りのヘアスタ
   イルと、居心地のよい雰囲気と、優しさ溢れるサービスの心です。
 どうですか? かなりいけてるでしょう?
 リッツの原文を吟味すると、本当によく考えられているなあと感心しま
す。皆さんも、一度しっかり研究してみて下さい。

3.(B)モットー

 リッツのモットーは、クレドを方位磁石として進んでいく私どもは何者
かということについて書いています。
 「私たちは紳士・淑女をおもてなしする紳士・淑女です」
 このモットーはお客様と従業員の関係を表します。同時に従業員同士も
お互いを紳士・淑女としておもてなししようという意味も含まれています。
 この様に、モットーとは最も大切していることを合言葉にしたものです。
 サロンで考えてみると、こんな感じでしょう。
 「私達は、ヘアスタイル作りを楽しみに来られるお客様に向かい合うサ
ロンの仲間です。お互いを信じ合い、許し合い、認め合う仲間です。」

4.(C)従業員への約束

 従業員についてリッツがどのような考え方をしているかを具体化したの
が「従業員への約束」です。
 どこも削れないので、リッツのものを全文を紹介します。
 「リッツカールトンでは、お客様へお約束したサービスを提供する上で
紳士・淑女こそがもっとも大切な資源です。」
 「信頼・誠実・尊敬・高潔・決意を原則とし、私たちは、個人と会社の
ためになるよう持てる才能を育成し、最大限に伸ばします。」
 「多様性を尊重し、充実した生活を深め、個人のこころざしを実現し、
リッツカールトン・ミスティーク(神秘性)を高める・・・リッツカール
トンは、このような職場環境をはぐくみます。」
 以上、3つの文章から成り立っています。
 一番大事なものは、それを提供する人であることを明確に伝えています。
 つまり、個人の成功が会社の成功に結びつくということです。
 以前、リッツ関係のセミナーで、ある人が支配人に質問しました。「C
S(顧客満足)とES(従業員満足)はどちらが優先ですか?」
 支配人はきっぱり「ESです。」と答えられました。
 なかなか、言えないんですよね。このセリフ。
 これをサロンに置き換えてみました。
 「当サロンでは、お客様へお約束した技術・サービス・満足感を提供す
る上で、スタッフ(仕事仲間)こそがもっとも大切な資源です。」
 「誠心誠意・有言実行・敬意・優しさを原則とし、サロンとして、個人
とサロンのためになるよう本人の持てる才能を引き出し・育成し、最大限
に伸ばすことを約束します。」
 「個人の時間・生活を尊重し、個人の目標をサポートします。それがお
客様へのホスピタリティアップにつながることを信じ、サロンの品格を向
上させる要素として取り組む職場環境をはぐくみます。」
 こんな感じでいいのではないでしょうか。
 美容業界は、昔は徒弟制度的な感じがあったので、従業員に優しくない
という風潮がありました。
 しかし、最近では美容師もサラリーマン化してきており、良いか悪いか
は別にして、ドライになってきています。
 そんな中で、従業員への約束を明文化することは非常に勇気のいること
です。
 しかし、勇気を持って行えば、必ず良い答えが返って来ます。
 「投げたものは返って来る」を信じ、チャレンジしてみて下さい。

5.(D)サービスの3ステップ

 サービスの基本となる3つの要素を言い表したものです。
 リッツでは次の様に言っています。
 「1.あたたかい、心からのごあいさつを。お客様をお名前でお呼びす
るよう心掛けます。」
 「2.お客様のニーズを先読みし、おこたえします」
 「3.感じのよいお見送りを。さようならのごあいさつは心をこめて。
できるだけお客様のお名前をそえるよう心がけます。」
 以上の3つです。
 これは、このままつかえるでしょうからサロン用に言い換えることもな
いですね。
 要するに、サービスより一段上のホスピタリティを発揮する上において、
何を大切にするべきかを明確に指示することです。

6.(E)ベーシック(行動指針)

 ベーシックとは行動指針のことで、前述の「クレド、モットー、従業員
への約束、サービスの3ステップ」において、どのように行動すればそれ
が実行・発揮出来て、継続遵守出来るのかを明文化したものです。
 リッツでは20ヶ条からなる行動の指針を示しています。
 以下、要約して掲載します。
(1)クレドは基本信念
(2)モットー掲げ、品位を保つこと
(3)サービスの3ステップで、ロイヤルティ<*1>を高める
   (*1)忠誠心。企業ブランドに対して顧客が抱く意識のこと。
(4)従業員への約束の尊重
(5)トレーニングは毎年再認定
(6)カンパニー目標のサポート
(7)自分関係のプランニングに関わる権利を有す
(8)問題点に注意を払う
(9)チームワークとラテラルサービス<*2>の実践環境を作る役目
   <*2>部門を越えた支援のこと。
(10)エンパワーメント<*3>。ニーズへの対応で、持ち場を離れて
    でも解決する
    <*3>権限委譲。自分で判断し行動する力が与えられている。
(11)妥協のない清潔さを保つ
(12)最高のパーソナルサービスのため、お好みを記録。
(13)お客様を1人として失わない。苦情は自分のものとして記録。
(14)フロアーはステージ。目を見て応対。従業員同士の言葉づかい。
(15)外でもホテルの大使としての意識。肯定的な話し方。
(16)案内はその場所までご誘導。
(17)電話応対。3回以内。笑顔で。名前を呼ぶ。ボイスメールスタン
    ダード<*4>を守る。
    <*4>ボイスメールの取り扱い標準使用方法のこと。
(18)身だしなみについて。プロフェッショナルイメージで。
(19)安全第一。非常時の対応認識。
(20)ホテルの資産を守る。エネルギー節約。環境保全。
 以上が内容の抜粋です。
 この20の項目に、すべきことが集約されています。
 上記は、ホテルならではの内容もありますが、ほとんどサロンでも共通
する内容なので、これらを参考に、自店バージョンを作って下さい。
 細かい資料が欲しい場合は、メール下さい。

7.私が指導している内容

 私なりのゴールドスタンダードは、リッツとはかなり趣を異にしていて、
簡易版になっています。
 まず、経営理念を書きます。
 そして、それを言い表すキーワードを考えます。
 なぜなら、経営理念の文章は長くて覚えられないからです。
 だから、一言に集約し、覚えやすくするのにキーワードにするわけです。
 そして、そのキーワードを行動指針などを加えながら再度細かく説明す
ることによって方向性を示します。
 このとき重要なのは、言葉の定義をしっかりすることです。
 一つ一つの単語を吟味して、その意味する部分をしっかり説明し、言葉
と内容の価値観を共有することが大切です。

8.コアとフレーム的発想

 ビジョンがコアでミッションがフレームという言い方も出来るでしょう。
 ビジョンとは、一言でいうと『その企業が到達しようとする将来像を具
体的に言葉で表現したもの』ということで、核心です。
 ミッションとは、ビジョンを具現化するための手段で、職業的・社会的
使命感です。その組織、個人の存在意義ということも言えるでしょう。
 本来、企業や組織はミッションを果たすための存在であって、必ずしも
利益追求が目的そのものではありません。売上や利益はミッションの果た
し度合いを表すものだということも言えます。
 そういう意味において、ゴールドスタンダードを決めることで、本来の
経営の方向と行動をリンクさせることが出来るということですね。

9.最後に

 「ゴールドスタンダード」、どうでしたか?
 道案内もない山道で、方位磁石が狂っていると迷子になるのは間違いな
いですね。
 しかし、現状としてそんなサロンを多く見掛けます。
 そんなサロンオーナーは自分だけの事ではなく、スタッフまでも巻き込
んで、遭難してしまうかも知れないのです。
 それだけは避けなければなりません。
 今一度ゴールドスタンダードを見直して、しっかりしたサロン経営を目
指してください。

10.次回案内

 では、次回の案内です。
 次回のテーマは「信号理論」です。
 これは、長年温めてきたテーマですが、まだ本格的に考えたことはない
ので、この機会に考察を加えてみたいと思います。
 「信号理論って、なんのことについてなのか、さっぱり分からない!」
という声が飛んできそうですが、まあ、お楽しみに!

 では、次回もまたお役に立てるメルマガを目指して作文しますので、応
援よろしくお願いします。
                 ではまた次回もお会いしましょう!

目標達成 (狙った成果を得るために)

メルマガ再録 (2007年2月12日) 第35号


「テーマ決定~テーマ分析~改善計画~行動計画~実行~評価システム」というステップの中で各要素の詳細を考察し、各項目のポイントを書いています。

  < 目標達成 >

1.はじめに

 「目標達成」という漠然としたテーマをなぜ思いついたのだろう?と自
分でも不思議で、とまどっているところです。
 こんな場合は「谷口さんならなんとかするだろう」と、自分に期待する
しかありませんね。
 バックナンバー23「改善ストーリー」でも良く似た内容で書いていま
すが、今回は、あくまでも目標を必達するということに重点を置いて書い
てみますので、合わせて見て下さい。
 さてと、何からはじめるかな?

2.目標達成に必要な要素

 まず、目標達成に必要な要素をリストアップしてみましょう
A.「テーマ決定」
 ・ニーズ把握、要望聴取、現状分析、現状認知、問題点把握、課題提起、
  テーマ決定
B.「テーマ分析」
 ・テーマ定義化、データ採取、データ分析、経費認識、採算分岐点
C.「改善計画」
 ・要望/希望聴取、目標レベル認知、目標範囲、シミュレーション(試
  行)、周知集め、改善ミーティング、改善案作成
D.「行動計画」
 ・行動実行計画、フォロー体制、主担当者決定、チェック者決定、報告
  会日程
E.「実行」
 ・周知徹底、エンロール(巻き込み)、実行、達成意識、継続意識、チ
  ームワーク、報連相、中間フォロー/チェック、結果分析、改良
F.「評価システム」
 ・学習ポイント認識、ノウハウ共有(ナレッジマネジメント)、歯止め、
  標準化、マニュアル化、

 ざっとこんな感じだと思います。
 では次に、その詳細を考察します。

3.「テーマ決定」

 まず、テーマを決定することです。例えば、お客様のクレームが多いの
で、これを減少させる事を上司から言われたとします。
 そうすると、単純にはクレームの減少ですが、現状はどうなっているの
か?、内容はどうなのか?、誰が多く発生させているのか?、果たして本
当に問題なのは何か?などについて検討を開始することです。
 そして、本当のテーマを見つけることです。

4.「テーマ分析」

 本当のテーマが見つかったら、今度はそれについての細かいデータを集
めます。
 例えば、利益確保というテーマだったとすれば、過去の数年の売上と経
費の数字はどうだったのか?スタッフは何人いて、生産性はどうだったの
か?いくら利益を確保すれば良いのか?等々のテーマに関するデータを出
来るだけ細かく収集することが必要です。
 売上を伸ばす場合などは、戦力把握も忘れずしっかりしておかないとい
けませんね。

5.「改善計画」

 ここに来て、初めて改善の検討を開始します。
 しかし、その前に、今取り組もうとしているテーマの目指すところ、つ
まり目的と着地点を再確認することが必要です。
 このテーマは、どれだけの範囲で、どれだけの深さまで改善すべきかと
いうことによって、改善すべき範囲が変わってきます。
 小手先でよいのか、根本的な体質改善まで必要なのかなどを前提条件と
して認識しておくことが必要です。
 そして、データを元に、周知(全員の知恵)を集めて改善案を考えます。
 集客がテーマであれば、過去の販売促進活動による実績データや、最近
のお客様の傾向、さらにスタッフ別の失客率データ、紹介比率データ、来
店サイクルデータなどを元に、集客方法を話し合います。
 この時、過去だけにこだわるのではなく、自店の強みの強化や、世の中
のトレンド、地域の流行であるFads(ファズ)についても考えに入れ
る必要があります。
 このように、サロンを中心に、360度の全方向から自店を改善分析す
る視点と視野が必要です。
 そうすると、今まで見えなかったものが見えてくるでしょう。
 改善案は、複合してさらに良い案が出ることがあります。
 だから、視覚化して進行することが望まれます。
 改善案は、この段階ではアイデアの状況ですが、次のステッフで実行計
画にまで砕いて具体化します。

6.「行動計画」

 目標を達成するには、前項までの段階が非常に重要な要素です。
 つまり、準備率が良くないと実行率が上がらないということです。
 行動実行計画のポイントは、以前バックナンバー10で書いた「A→D
変換」です。
 A→D変換は、アナログ表現でなく、デジタル表現にするということで
す。つまり、だれもがそれを実行したか、していないかが分かる表現方法
にするということです。
 この変換が出来ていないと、本当に実行率が悪いです。これをもっとも
っと認識・浸透させて欲しいと思います。
 A→D変換が出来るかできないかが、その課題が実行できるか出来ない
かの別れ道になるといっても過言ではありません。
 それから、行動計画のスケジュール作成段階においての日程記入は、結
構経験がものを言います。
 というのは、その取り組み内容がどれくらいの時間・日数がかかるもの
かと言う基準は、経験則によるからです。
 簡単な様でも、実は裏に細かい配慮がいったり、トラブルがつきまとっ
たりということで時間がかかる等ということは、経験者でないと分らない
事が多いからです。
 全体の進行をバランスよく日程調整し、誤差の少ない計画に仕上げるこ
とが大切です。

7.「実行」

 実行に入る前のポイントとしては、行動計画の周知徹底をすべきだと言
うことです。
 関係者を巻き込んで(エンロール)、全体として進行していく、そして
その経過を逐次全員に知らせて、血の通った報告、情報を流していく。
 そのことにより、また周囲からの協力が得られて、結果が促進される。
 そういう実行のサイクルに持ち込めれば、もう目標の達成は間違いあり
ません。
 結果というものは、結果だけで存在するものではなく、プロセスからの
延長線上にあるということを良く認識する必要があります。
 そして、もっとも重要なことは、何より「目標を必達するぞ!」という
達成意識です。これなくして、目標達成はあり得ません。
 はじめから無理だと思っていれば、必ず挫折します。
 人間のイメージする力はそうなっているのです。
 駄目だと思うのは、計画自体が満ちたっていないということです。だか
ら実行の前に、100%成功すると思える計画が必要です。
 だから、前項の行動実行計画が、本当に重要な要素を占めているのです。
 それから、チームワークも大切です。
 目標は1人では達成できません。
 周囲の協力、支えがないとその目標は達成できません。
 チームワークを本当に考えるなら、相手のことを思いやり、大切にする
心、感謝の念を忘れないことです。
 そうすると、全体の雰囲気が良くなり、おまけにお客様からの信頼も厚
くなります。
 中間でフォロー&チェックする体制を是非作っておいて下さい。
 月間であれば10日目チェックを怠らずに・・・・
 そして、そこで未達成の部分をどのように達成するかについて、即刻会
議を開き、次の手を打つようにします。
 この時、計画段階から、予め打つ手を準備しておくことが必要です。
 「そこまで考えられないよ!」という声が飛んできそうですが、目標必
達という大命題をこなすには、それくらいの準備が出来ていないと本当に
は達成できませんよ。
 フォロー&チェックは一段落してからという感じがありますが、私は実
行途中の一部に含むと考えています。
 実行が終わって、対象期間が済んでからフォロー&チェックしても、そ
れはもう終わったことを振り替えるだけのことで、次回には役立つかも知
れませんが、その考え方は、その月の達成を保証するものではありません。
 結果、後追いの悪循環を繰り返すだけのことです。
 だから、その悪循環を断ち切り脱出するには「事前に徹底的に準備する」
ということが必要なのです。
 至極当たり前のことですが、これが出来ていないんですね。
 今回のメルマガで言いたいことは、このことです。
 だから、150%くらいの達成準備率で望まないと、目標は必達出来な
と言うことを肝に銘じて下さい。

8.「評価システム」

 評価システムは2面があります。
 一つは、いわゆるニンジンです。
 馬の前にニンジンをぶら下げてやれば、馬はそれ欲しさにどんどん前に
走るという仕組みです。
 この目標を達成したら報奨金が出るという様なことです。これはこれで
良いと思いますが、誰もがチャレンジ出来て、公平に評価されるというこ
とがきっちり出来ていないと、返って逆効果になることがあるので要注意
です。
 みんなの前で褒めて上げるだけでも充分意識は高まるものです。
 もう一つは、1ヶ月間の内に学んだことや作り上げたノウハウを共有す
るという仕組みを作ることです。
 いわゆるナレッジマネージメント(個人の持つ知識や情報を組織全体で
共有し、有効に活用することで業績を上げようという経営手法)と言われ
るものですが、これがサロンを成長させる元になります。
 この貴重なノウハウ・学びをドブに捨てているサロンがどれほど多い事
でしょう。
 このナレッジマネジメントについては、次回詳しく書いてみたいと思い
ます。
 そして、そのノウハウの標準化、マニュアル化を行い、サロンの知恵資
産として蓄積・活用していくことで確実に成長へとつながります。

9.最後に

 「目標達成」どうでしたか?
 今回は、今までのメルマガの中でも触れてきた内容が多く出てきました。
 この「心と技のあいだ」においては、毎回ひとつのノウハウを深堀・考
察していますが、今回の様なタイトルではそれぞれの内容を融合させて活
用するということも必要だということですね。
 目標を達成するためのヒント、1つでも掴めましたか?
 各人の持つパワーを結集し、目標達成に向けて、日々努力されることを
期待します。

10.次回案内

 では、次回の案内です。
 次回のテーマは「ナレッジマネジメント」です。
 これは、暗黙知を明示知に置き換えることにより、それを実務で使える
ものとして共有ノウハウにするという、ノウハウ共有型経営方法なのです
が、このやり方、実用化について考察してみます。
 では、次回もまたお役に立てるメルマガを目指して作文しますので、応
援よろしくお願いします。
                 ではまた次回もお会いしましょう!

キャリアプラン (今後の進路設定)

永年雇用を約束するためには仕組みが必要です。働くポジションを準備しなければなりません。会社がどれだけ親身になってそのシチュエーションを準備できるかに掛かっています。

< キャリアプラン >

1.はじめに

 キャリアプランのキャリアは、Careerと綴りますが、辞書で引く
と「生涯・経歴・履歴、生涯の職業、成功・出世」などと出てきます。
 美容室でキャリアプランといえば、「これからの自分の技術・役職およ
び将来の進路の設計」という様な感じで使います。
 スタッフにおいては、人生設計(ライフプラン)をまず考え、そしてキ
ャリアプランを考えるということが大切です。
 美容業界の特性として、お客様は基本的に女性であり、それに対応する
美容師は女性であるということが根底にあります。
 最近は男性のお客様、美容師も増えていますが、女性割合は6割~9割
はあるでしょう。
 基本的には女性対象の職業であるということです。スタッフも同じ様な
割合で、女性が多いわけです。
 ということは、結婚適齢期になると、これはもう何を置いても、結婚・
出産・子育てということが待っているわけです。
 すなわち、そこで職場は、一旦区切られることになります。私の知る限
り範囲では、そこで90%以上のスタッフは退店することになります。
 上記の様な観点を総合すると、美容室は20~30歳くらいの若いスタ
ッフの職場であるということが言えます。
 これらの内容を前提として基本キャリアプラン、ゼネラリストコース、
スペシャリストコース、出産後の復職、出店支援体制などについて考えて
いきます。

2.基本キャリアプラン

 美容師としての自分を考える上で、まず最初に「なりたい美容師像を明
確に持つこと」、そのためには「今の自分を見つめ、将来の自分を真剣に
想像してみること」が大切です。
 例えば、女性であれば、結婚は外せないですよね。いや、関係ないとい
う人もいるでしょうが、ここでは30歳に結婚し、そのまま退店したいと
いうケースを例にとって考えましょう。
 人生設計としては、美容学校卒業の新卒で入店するのが20歳、そして
退店が30歳となります。
 そして、基本キャリアプランは、この間の実質10年間の計画です。
 個人の計画の概要として、3~4年目でスタイリストデビュー、そして
6年目から2年間はチーフ職、8年目から3年間は店長。給料はアシスタ
ントで15万円、スタイリストで20~25万円、チーフで26~29万
円、店長で30~35万円という様な計画を立てます。
 これは、あくまでもスタッフ個人のプランで、この通り行くという保証
はありませんが、計画を持っているということが大切です。
 サロンとしては、勤務評定基準、技術習得規定、役職規定、就業規則、
慶弔規程、給与規定どを準備しておくことが必要です。
 入店からスタイリストデビューするまでの技術習得カリキュラムをまず
準備します。そして、その技術ランクに対応する名称をつけます。技術ラ
ンクには、こんな名称を使っています。
 メッセンジャー、アシスタント、オペレーター、メインアシスタント、
ジュニアースタイリスト、スタイリスト、デザイナー、シニアースタイリ
スト、アーティスト、アートディレクター・・・・・
 スタイリストデビューまでに何年を要するか?によってカリキュラムの
作り方は変わってきます。
 早くデビューすることがサロンにとっても個人にとっても良い事ではあ
りますが、急ぐ余り、お客様に迷惑が掛からないようにしなければなりま
せん。テストおよび査定の仕組みと、それを給与に反映させる仕組みが必
要です。
 技術と併行して、その技術レベルに合った接客レベルが求められます。
こちらの方の資格に対する向上プランもおろそかにすることは出来ません。
 基本キャリアプランは、この様に店長クラスまでのベーシックキャリア
プランで、基本的にはこの路線を進んでもらいます。

3.ゼネラリストコース

 ゼネラリストコースは、管理者として成長してもらうコースです。
 大方のサロン内の役職(ポスト)は次の様なものです。
 サブチーフ、チーフ、主任、店長、サブマネージャー、マネージャー、
エリアマネージャー、ディレクター、BOSS、オーナー等
 チーフは、店長の補佐としてスタッフの意見・コンディションを把握し
ておき、調整する役目があります。
 店長は、その店の運営を任されているのですから、スタッフのパワーを
100%活かして売上目標を必達することが最優先課題です。
 マネージャーは、トータルにアシストする立場ですから、利益構造を知
り、全体の方向性を間違わないようにリードする責務があります。
 エリアマネージャーは、複数店舗を統括管理し、受け持ちサロンの運営
を任せることになります。
 ディレクターは、より経営者に近い立場でものを考え、指導していく立
場なので、サロン外との接触も広く、大きい視点を大切にします。
 こちらも何の業務・役割がどのレベルまで出来ればよいのかを明確にす
る評価システムを確立する必要があります。
 「あなたの役職の仕事はここまで」と言う限界を与えるのではなく、あ
る程度の仕事のガイドラインを与えて、自分でその役割を作り上げていく
というスタンスが良いと思います。
 ただし、より上の役職者は常にサロンのコンセプトを浸透させる役目を
背負っているという前提条件を満たしている必要がありますね。

4.スペシャリストコース

 スペシャリストコースは、ゼネラリストコースに進みたくなく、美容師
の技術に特化したいスタッフのためのコースです。
 基本キャリアプランの中で、スタイリストになりたくないというスタッ
フが出てきたりします。どうしてもそうしたいという場合は、メインアシ
スタント(スーパーサブ)を任命し、そのスタッフを活かします。
 またスタイリストから成長し、役職に付かせようとしたら拒否するスタ
ッフが出てくることがあります。この場合、あまり押し付けたり、無理を
させると退店してしまうケースが往々にしてあるので、TOPスタイリス
トとして継続させます。
 また、バックステージ・コンテスト・モード作品作りなどのアーティス
ト志向に特化したいというスタッフも出てきます。出来るなら、そのチー
ムを作り、盛り上げていければいいですね。
 さらに、店内インストラクターや外部講師などのコースも設定すれば、
各方面で力を出せるでしょう。
 多くのサロンを経営している場合、仕入れ部門や経理部門などでも働く
ポジションを作れます。

5.結婚~出産~復職

 次は、結婚/出産して復職したいというケースです。
 例えば、「27歳でスタイリストで働いている中、結婚が決まり、当面
は通常通り働きたいが、妊娠したら出産数ヶ月前に休職し、出産後1年以
内に現場復帰したい」というケースを考えてみましょう。
 こういう場合、サロンに復職する場合の取り決めを作っておく必要があ
ります。
 結婚後出産までの勤務条件と給与、復帰後の労働条件の整備が必要です。
 もしまだ決めていないなら、早速いろいろなことを研究してみることに
して下さい。
 産前産後の休暇については、産前6週間、産後8週間が認められます。
 又、産休中の給料については労働基準法に規定がないため、各会社の判
断に委ねられています。無給の会社もあれば、有給で全額支給の会社、有
給でも給与の一部を支給するだけの会社など、様々です。
 ただし、無給の場合でも、健康保険の被保険者であれば、実際に休業し
ている日数分の賃金の60%が出産手当金として健康保険組合から支給さ
れます。
 さて、出産後の復職については、次の様なケースが考えられます。
 産前と同じポジションに戻す、勤務時間を短縮して準社員(パートタイ
マー)的な立場に変更する、店長等の役職・指導的ポジションを外すなど
です。
 それぞれの形に応じた給与体制を整備し、産前産後休暇規定および産後
の復職規定を就業規則・賃金規定に明記しておくことで、スタッフは安心
して働くことが出来ます。

6.出店支援プラン

 そして、出店希望と言うケースです。
 「自分の店を持ち経営したい」という希望を明確にしているケースです。
 スタイリストとして、技術&売上が出来るようになり、固定の指名客様
が付けば、ある程度簡単に独立することが出来るという美容業の特性があ
ります。
 サロンとしても、スタッフの出店意志を確認しておけば、それなりの動
きでサポートしてあげることが出来ます。
 それを自然の流れと認識し、両方がWINの関係を作ってやっていくこ
とでよい状態が保てます。

 出店支援に関しては、次の様なパターンがあります。
(1)「サロン内独立の場合」
 スタッフは貸し出し(または独立店持ち)、経理は親店の勘定という様
に、独立はしているが雇われオーナーというスタンスの店の場合です。
 この場合、経費と親店のサポートをどのように見るかについて細かな取
り決めをしておくことが大切です。
(2)「リース途中の独立」
 リース残が残っていて、その店をスタッフに売却する場合、基本的にリ
ース会社は名義変更に応じないので、契約以降のリース料は本人がサロン
に支払うことになります。家賃は名義変更出来ればOKですが、出来ない
場合は同じくサロンに払います。リースアップした時点で、どの様に契約
を考えているのかの「覚書」を交わしておくことをお勧めします。
 その項目に付いては、家賃の支払い方法、設備・備品・営業権利などを
含む売買契約内容・金額および支払い方法、スタッフの勤務、経理、薬液
材料仕入れ方法等についての記載が必要です。
(3)「リースアップ物件の独立」
 リースが終了しているので、家賃契約に付いて確認し、その他は(1)
と同じ要領で売買契約します。
(4)「フランチャイズ独立」
 フランチャイズ独立に関しては、フランチャイズ契約をします。
 フランチャイズ契約とは、フランチャイザー(親店)とフランチャイジ
ー(契約店)が交わす契約です。
 その契約とは、主に契約店が親店にブランド(ロゴマーク)使用料・ノ
ウハウ供給料・コンサルタント料等に対価するロイヤリティーを支払う事
により成立します。
(5)「完全独立」
 「完全独立」は、資金調達を自分で行い、全く親店との関係を切り離し
独立するケースです。
 この場合、親店との友好関係を保ちつつ、フレンドリー店として今後も
付き合っていくということを続ける方がよりベターです。
(6)「ボランタリー独立」
 完全独立ではあるが、マスメリットを活かすために共同仕入れする方式
です。

7.最後に

 業界的に、なんとなく、美容師は35歳を境として、前線を引いていくと
いうイメージがあります。
 私が依頼されて作る給与の仕組みも、そんなシステムになっている場合が
多いです。
 それなら、「その後はどうなるのだろう?」と考えてしまいますよね。
 「永年勤続を前提とした職場で安定した力を出して働く」ことが望まれま
すね。
 そのためには、サロン自体の環境の整備が先決です。
 現状のスタッフを集めて将来構想、キャリアプランについて話し合ってみ
て下さい。そして、ES(従業員満足)を目指した夢のあるサロンを目指し
てキャリアプラン構築に力を入れて下さい。
 そうすれば、良循環が発生し、もっともっと良いサロンが出来るでしょう。

8.次回案内

 では、次回の案内です。
 次回は「リフレイミング」です。
 リフレイミングとは、物事の見方、視点を変えて見るという意味です。
 嫌な事、辛い事、しんどい事など、人生にはいろいろな試練が待ち受け
ていますが、そこから何を学ぶのかという様なことに付いて勉強しましょ
う。
 かなりメンタルなお話ですが、きっと貴重な視点転換により、「眼から
ウロコ」状態で、ハッと気付く人があるかも知れませんよ。

人材育成 (無限の可能性を引き出す)

メルマガ再録 (2006年12月11日) 第31号


ティーチング、コーチング、リーチング、躾(しつけ)などを通し、自主自立、自主活性型の人材を育成する方法を説明しています。採用面での活用や指導者の基本姿勢についても考察しています。

< 人材育成 >

1.はじめに

 今回もなかなか大変なテーマですが、今回も頑張って何らかの方向性を示せるように考察してみます。
 人材育成の人材という字を、人罪、人在、人財などと語呂とランクを合わせて用いる人もいます。
 ちなみに、「人罪」は罪な人で組織の害になる人、「人在」はいるだけで役に立たない人、「人材」は人の手、「人財」は役に立ち人的財産となる人と解釈していいでしょう。
 今回は、人財になる前の段階の人を育成するので、やっぱり今回は人材を使いましょう。
 育成とは、広辞苑には「育て上げること」と書いていました。
 「育てる」とは、教え導く、仕込む、しつけるなどとあります。これは他動詞です。「育つ」が自動詞。だから、育てるは、対象者を教え導く、仕込む、しつけるということになりますね。
 さらに、「上げる」ということは、仕上げるということでしょうから、これで良しという目標段階まで行かないといけないわけですね。

2.育成の種類と方法

 一般的に教え育てるには、方法があります。
 まず「ティーチング」です。これは教え込むという意味の教育とそれを身に付くまで繰り返し行う訓練です。学校の勉強やスポーツの基礎などはこれに近いでしょう。
 次に「コーチング」です。これは、対象者の自主性を促す育成の方法で、本人に考えさせ、それをサポートしていく方法です。共育という字が当てはまるかもしれませんね。
 それから、元松虫中学の原田隆史先生が言われている「リーチング」です。これはまだ一般化していませんが、本人が目標とするもの、およびそのプロセスを書き出させ、その目標に向かって行く途中の段階を細かくチェックして、その目標に届けて上げるという様な、目標プロセス管理の方法です。本なども出ているので参考にされれば良いでしょう。

3.躾(しつけ)

 育成して成長するには、結局のところ「優しい」「素直」「正直」であるということが求められます。
 そういう特性がある人は、周りの人に好かれ、可愛がられ、人が寄ってくるという「人徳」を得ます。
 では、そんな子供に育てるにはどうすればよいのでしょうか?
 江戸時代の会津藩の6~9歳の子供を躾けるのに「お話の什(じゅう)」という教えがありました。
   1.年長者の言うことに背いてはなりませぬ。
   2.年長者にはお辞儀をせねばなりませぬ。
   3.うそを言うてはなりませぬ。
   4.卑怯な振る舞いをしてはなりませぬ。
   5.弱い者をいじめてはなりませぬ。
   6.戸外で物を食べてはなりませぬ。
   7.戸外で婦人と言葉を交えてはなりませぬ。
   「ならぬことはならぬものです。」
 最後の「ならぬことはならぬものです。」とは、無条件にこれに従うことであると言うことです。
 要するに、子供の時からの躾がなされていることが一番の要素です。
 この「什の掟」に習って、サロンでも躾を考えてみれば良いでしょう。

4.学ぶ姿勢・教える姿勢

 まず、習う側の姿勢が整っていない(躾が出来ていないと)と、教えても、あるいは持っているものを引き出そうとしても、容易なことではありません。
 習う本人が大事なことは、習う項目を吸収して本当に自分のものにしようとする意欲があることです。受身で習うのではなく、肝心なのは積極的に学ぶという姿勢です。
 躾が出来ていないスタッフに、この様な習う姿勢を持たせるには、指導側の基本の対応に関わってきます。
 指導者が日常から信頼できる人であれば、スタッフは学ぶ姿勢も意欲もしっかり持ちます。
 が、信頼の出来ない指導者からは真剣に習おうとはしないでしょう。
 両者のこの様な基本姿勢がマッチして、教える・学ぶことが成立します。
 この前提条件をまずクリヤーすることで、教育支援は半分以上成功したと言っても過言ではないでしょう。

5.育成を視野に置いた採用

 何かの本で読みましたが、人材という意味では基本的には採用が非常に大切です。
 採用とは、そのサロンが持つコンセプトに同調・共鳴できるかを入り口で判断する仕事です。
 だから、募集広告で、しっかりどんなサロンでどんな人材に来て欲しいかを主張すべきです。
 入り口で何でもありとすると、ベクトルの違う人が入ってきた場合、その人をこちらに向ける教育は大変な力を要します。
 もっとひどい場合は、不平分子となって順調なスタッフまでも蝕んでしまうことになるので要注意です。
 バグジーでは、採用面接で給料などの労働条件を聞くと面接を即中止、また来週に体験入店に来れないといっても即中止です。
 つまり、そういう人材は取らないという姿勢を示していますし、それがサロンのコンセプト(ポリシー)と直結しているので、目指す人材が集まるのです。
 ですが、小さいサロンはまず人手としての人材を欲しいわけです。なので「そんなことは分かっているけど現実は・・・」というケースが多いでしょう。それならなおさら、次の項目が重要です。

6.指導者の基本姿勢

 では、指導的および支援的立場の人が、そのスタッフを育成する時には何からすべきか考えてみます。
 情操教育(躾教育)をする場面では、スタッフから指導者自身の基本姿勢が問われます。
 俗に「あんたに言われたくないわ!」状態になると、教育など出来ません。
 だから、指導者もしっかりした生活態度が問われます。
 そうですよね。指導者がタバコスパスパ吸っていて、お前らタバコ止めろ!って言っても駄目ですよね。
 指導者はそういう意味で、「範を垂れる」ことです。
 「範を垂れる」って昔言葉ですね。これはつまり、自らが実践して模範を示すことです。
 これがなかなか出来ない。
 人を指導するのに、自分はさて置いてとは行かないのです。
 自分が出来ないものをどうして教えられるでしょう?
 自分は出来るから指導・教育できるわけです。
 最近では、コーチングというものが流行っていますが、尊敬出来ない指導者にはついていきません。
 つまり、指導者のベーシック(基本姿勢・躾)が問われています。
 次に、指導者の姿勢です。
 これは、絶対にあきらめない事です。
 その裏付けとして、人材には個人差があることを良く認識していることです。
 指導者があきらめてしまうと、教育指導はそこで終わりです。
 ここでどうするかと言うと、家族主義を持ち出します。
 家族であれば、一生見放さないですよね。

7.適材適所

 あきらめないで指導しても、現実として成長の遅いスタッフはいます。
 さて、それにどう対処するか? これが結構な課題です。
 その一つの解決策として(いや最終手段かな?)適材適所という言葉があります。その人にマッチした働き場所を提供することです。
 この話を詰めると、組織論の方に行ってしまうので簡単にしますが、そのスタッフが100%力を出せるポジションを用意するというものです。
 但し、育成をあきらめたのではなく、より力を発揮できるポジションを与え、またその場での育成を強化すれば良い事です。
 但し、その場合、本人との話し合いを先に良く詰めておかないと、端っこに追いやられたという疎外感を持つことがあるので注意です。
 これは、永年勤続の場合も同じで、キャリアのあるものでも、次の世代にチャンスを与えるという意味で、今のポジションを退く勇気が必要です。

8.環境

 人材育成にはサロンの環境を整えておく必要があります。
 育つ、育てる風土ですね。
 それには仕組みがいるということです。
 いくら本人が頑張ろうとしても、その足を引っ張ったり、冷ややかな目で見るという環境では人は育ちません。
 つまり、サロン全体に人を育成することが大切なんだという雰囲気とそれを具現化したシステムを準備しておくことが必要です。
 一番大切なことは、本人の学ぶ姿勢であることは当然のことですが、その先に何があるのかを見せて上げることです。
 その仕組みには、評価システムと連動した給与システム、自分の力が充分発揮できるキャリアプランなどがその例でしょう。
 また、コンピテンシーモデルを活用し、次のワンランクアップのステップを明確に示して上げることも良いでしょう。
 システムはそれ自体では完全ではありません。人がそれを上手く運用、活用して力を発揮するものです。
 だから、スタッフをシステムと人の温かみでサンドウィッチして、育成していくことがベストです。

9.育成の手順まとめ

 では、育成の手順をまとめてみましょう。
   1.環境を整える
   2.システムを準備する
   3.本人の意向を聞く
   4.サロン側の意向を伝える
   5.目的・目標を設定する
   6.コチーング・OJTなどで育成する
   7.経過をチェックする
   8.方向を修正する
   9.区切りで結果を見て、次の目標を立てる
 と、まあざっとこんな感じでしょう。
 今までこの「心と技のあいだ」で取り上げてきたテクニックを利用して効果的に進めて下さい。

10.最後に

 人材育成について、私流の切り口で考えてみました。
 他の方が言われる人材育成とはかなり違った角度からの考察となっているかもしれませんが、何か参考になるものがあれば嬉しいです。
 システム、環境、人・・・どれをとっても重要な要素です。
 そういう資源を上手く活用して人を育てる。
 先日の講演会で良い言葉を教えてもらいました。
   ダイヤモンドはダイヤモンドでしか磨けない。
   人は人でしか磨けない。
   人は人によって磨かれる。
 誠にそうだと思います。
 だから、磨く人の程度によって磨かれる人のレベルが決まってくるのです。
 だから、磨く人を磨かねば・・・・・
 そういうことを念頭に置いて、素晴らしいサロンを作られることを願っています。

11.次回案内

 では、次回の案内です。
 次回は「チームワーク」です。
 目的を持ったチームの力をフルに生かすにはチームワークが不可欠です。
 「三人寄れば文殊の知恵」「周知を集める」などの言葉がある様に、人数が集まれば、人数以上のパワーが発揮されます。
 人が集まると「赤信号、皆で渡れば恐くない」という逆の方向へ流れる面もあります。
 そのあたりも含めてチームワークについて考察します。

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