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【心と技のあいだ】
vol.063 2008.4.14
発行者:有限会社シーケン社 経営実務コンサルタント 谷口隆
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〔 新入生に贈る言葉 〕
4月といえば新入生。
新入生といえば入社式。
入社式といえば、祝辞。
まあ、気の利いた祝辞はなかなか聞かないですね。
私の今年のバージョンは、臥龍先生から拝借した「大樹深根」と定番の
「志・勇気・感謝」です。
大樹深根は、「大きく立派に葉の茂る大樹になろうとすればその枝の幅
と同じだけ根を張らないとその樹は倒れる。」という意味です。
いくら技術が出来ても、根っこになる心の部分の成長が小さいとそれ以
上におおきくなれません。だから、本を読んだり、人の話を聞いたりして、
自分の心の成長に力を入れなさいということですね。
もう一つは「志・勇気・感謝」です。
普通は、志の部分は夢といわれそうですが、私は「志」を使っています。
夢は漠然とした感じがあり、志の方が目的・目標意識が高いように思え
るからです。
「勇気」は、志を達成しようとした時に目前に現れる困難、障害、課題
を乗り越えて行くのに、絶対必要な要素だからです。萎えそうな気持ちを
奮い立たせ、その課題を超えていく勇気を持とうと訴えます。
そして最後は「感謝」です。その課題を乗り越える時に,いろいろな方
のサポートがあるはずです。その方達に対する感謝を忘れてはなりません。
それがまた次の課題を克服するエネルギーになるのです。
最後に今出来ることについてお話します。
技術を持たない君たちが今出来ることは何ですか?
それは「笑顔」と「心からのおもてなし」です。
新入生の君たちの給料の大部分はそれに支払われています。
だから、明日から、給料泥棒と言われないように、はち切れんばかりの
笑顔と心からのおもてなしで、営業に励んでください。
入社、おめでとうございます。
とまあ、こんな感じですわ。
ということで、新入生に贈る良い言葉をお持ちでしたら、教えて下さい。
参考にさせて頂きますので、よろしく。
さて、前回のテーマは「品質管理(後編)」でした。
美容室をターゲットにしたサービス業の品質管理について書きました。
私なりで無理やりと思ったのですが、以外に「その強引さがいいです」
と誉めて頂いたりして、ちょっと嬉しかったかも?
では今回は、ちょっと変わった感じのメルマガをお届けします。
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本題に入る前に「心と技のあいだインジケータ」で今回のテーマの位置
付けを確認しておきましょう。
<考え方の技術> <考えを行動に移す技術> <行動の技術>
「心」→→→→→→→→→→●→→→→→→→→→「行動」
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< ケースワークで学ぶ >
1.はじめに
この話は、先日実際にあったサロンオーナーと右腕の店長の1対1の会
話内容を記憶の中で再構成して書きました。
まれに見るケースワークと思ったので、勢いで書きます。
2.ケース
谷口
「このリンゴジュース、どうしたん?」
店長
「営業終了後に、重たい荷物を担いだ田舎弁丸出しの若い行商の兄ちゃ
んが『青森から来ました。リンゴジュース買って下さい。果汁100%
ですから!』って言うもんやから、スタッフ皆に声を掛けて、12本ま
とめ買いしました。」
オーナー
「12本も買ったんか! それって、君が皆に強制したんとちゃうか?
それでのうても下の者はよう断らんからな! お金のない子にはしんど
い出費やからな。そこんとこ注意せなあかんで。上の者からのお願いは
ただでさえ断りにくいんやからな!」
(店長、顔色変わる)
店長
「僕は、そんな強制的な言い方はしてません。やんわり聞いて、皆も買
うって言うからまとめて買っただけです。皆が必要以外の数は僕がすべ
てお金を払いました。みんなに聞いてみて下さい。いやいや買わされた
のか、進んで買ったのか、本人に聞いてみて下さい。それに、僕は、日
頃からそんな変な強制の仕方をしてません。しかし、ある程度、上の人
が言うことに従う、従わせるという組織の力は僕は少しは必要なことだ
と思っています。それがないと皆がバラバラになってしまい、統制が取
れなくなると思います。」
オーナー
「それは分かった。だけど、この前、今度の新人は熊本から採用したと
いうことで、その子の家にスタッフを連れて行ったそうやな! あれも
どうかと思うで。熊本までの旅費や食事代など、簡単に出せる金額やな
いやろ。今までそんなことしたことないのに。先に相談に来て、話がわ
かったら補助金でも出したのに!」
店長
「オーナーは、相談させない雰囲気を出してるでしょう。僕がすること
をすべて否定するようなオーラを出しているので、相談する気になりま
せん。今回は、これをきっかけに全員の田舎をめぐるという企画を考え
ています。みんなこの企画で盛り上がってます。オーナーはいつもマイ
ナス面ばかりを見て、良いようには取ってくれないです。それが僕は非
常に残念です。誰でもそうだと思いますけど、自分のすることをもっと
認めて欲しいんです。誉めて欲しいんです。分かりますか僕の気持ち!」
オーナー
「やってくれてることは良いことかもしれんけど、一言こっちに事前に
言うてくれたら、調整のしようもあったのに。本当に、彼らは心底喜ん
でやってくれているのか、建前で合わしてくれてるのかは分からないや
ろ?」
店長
「自分はスタッフを信じているし、正真正銘付いてきてくれていると信
じています。自分の事もオーナーはそんな感じで見ているとしたら寂し
過ぎます。いつかこのことは言おうと思っていましたが、オーナーがス
タッフをそんな目でみているのを、スタッフ達も薄々感じているのだと
思います。たぶん今まで辞めて行ったスタッフはそんなところが引っ掛
かったのかも知れません。」
オーナー
「そうか。わしも言われるまでもなく、そう思うところがあるのは分か
っててん。しかしなかなか考え方の癖は直らんもんやな。今日指摘され
てよう分かったわ。これからもそんなところあったらどんどん指摘して
くれな!今日はよう言うてくれたな。ありがとう。」
店長
「分かってもらえたら嬉しいです。」
谷口
「やっと分かり合えましたね。店長は苦しい胸のうちを良く打ち明けて
くれたと思います。それに冷静に話が出来ましたね。オーナーはそれを
しっかり受け止めて、自分の非を認め、これからの方向性を示してくれ
ました。ここからが勝負です。今までギクシャクしていた歯車がバチッ
と今日合ったので、運命共同体として、第2創業の積りで新店を成功さ
せましょう。」
3.ここからの学びは?
さて、この物語から何を教訓として学び取りますか?
私ならこんな感じですね。
4.「A.気持ちを伝える勇気」
部下は、なかなか上司にはしっかり自分の気持を伝えることは出来ない
ものです。
お金を頂いているって思うこと、働かせてもらっているということ、言
った後が気まずくなって働きにくくなることなどが頭をよぎり、正面切っ
てはなかなか言えないものです。
それで、仲間内でグジグシとグチを言ったり聞いたりということになっ
て行きます。
この店長は、今までの思いが溜まっていたのでしょうね、
一気に噴き出すように、吐露してしまいました。
こういう場面では頭にカーと血が上り、なかなか冷静で居られないもの
です。
本当にムカーっと来たら丁寧語もくそもないですからね。「お前」呼ば
わりする場面も見たことあります。
しかし、かなり熱くなりながらでも、きっちり言いたいことを、言った
店長は偉いです。
まとめて言うのではなく、普段からちょっとづつ言える様になればもっ
と良いですね。
そんな良好な関係は、こういう嵐の状態を何回か乗り越えて初めてそう
なっていくのでしょう。
5.「B.自分の至らないところを受け容れる勇気」
オーナーは、マイナス思考というより、結構安定志向な訳です。波風を
立てたくないというか、今までスタッフが辞めてきた理由などが頭に渦巻
き、例のホメオスタシス(自己防御本能)が働いているように感じます。
また、スタッフに余計な負担を掛けて、スタッフが居ずらくなり、サロ
ンを辞めていくのが困るという安定志向でもあります。
また店長のリーダーシップの強さに怖さも感じている様でもあります。
オーナーは、周りのスタッフや辞めたスタッフなどから、店長に対する
不満を聞いているという感じです。
これはまた、店長がオーナーに対する不満をスタッフから聞いていると
いう裏返しの構図でもあります。
周囲からの情報(うわさも含む)は、大概一方通行です。
両方の意見を聞けば、「な〜んだ」ということが多いものです。それが
誤解を生み、仲違いが始まる原因の多くでもあります。
いずれにせよ、自分の至らないところを指摘されるのは、決して愉快な
ことではありません。
どちらかというと、しんどいことです。
しかし、本当にサロンを良くしようとする気持が通じて、オーナーは最
後にはそれを受け入れることになりました。
オーナーは妥協したのではなく、その店長の想いが通じ、身にしみたの
でしょう。
それに、オーナーは自分も普段からそう思っているということも重なり、
深く反省しています。
店長は、オーナーからの突っ込みに対し、くじけそうになりながらも自
分の意見を貫き通したから受け容れられたのです。
なかなか勇気の要る行動です。
6.「C.相手のしたことを誉める大切さ」
上司として、自分が聞いていない範囲で実行した内容について、手放し
で喜べることはなかなか難しいことです。
それが出来るということは、上司と部下が一体になっているということ
の証です。
いわゆるエンパワーメント(権限委譲)が完璧に出来ているから、上司
と部下が同じ認識・価値観を持っているから許容できることです。
部下のしたことを認めるだけでなく、その行動を誉めるという行為は、
相当に勇気の要ることです。
信頼する部下がやった行動に対しては、事情のいかんにかかわらず、ま
ず「認める・誉める」ことです。
そのことにより、オーバーに言うと部下は母に抱かれた様な安心感が生
まれます。そこから何でも出来るという勇気がまた湧いてきます。
「それは凄いなあ」と興味を持たれワクワクされるのと、「それがどう
したん!」と冷めた目で見られるのでは、180度やる気が違ってきます
よね。
今の風潮として、サロンのモチベーションやテンションアップを考える
場合、成功哲学などの導入をするサロンが多いようです。
そんなサロンオーナーは、他人の力を借りて、安易にやろうとしている
様に思えてなりません。
借りてきたものは借りてきたものです。自分の力にはなりません。
本当にサロンのことを、スタッフのことを良くしようとするには、まず
自分を向上させることが大切です。
自分が「認めてあげる、誉めてあげる、という行為が苦手だから」と逃
げていては、サロンはずっと良くなりません。
オーナーはそのことに気付き、それが出来るようにまず考えなければな
りません。
そういう原理原則を忘れているのではないでしょうか?
と、私はこれを声を大にして言いたいですね。
7.「D.人を信じることとは?」
私は「信じるから期待に応えようとする。信じないと、期待に応える必
要がないのでどうでもよくなる。」というのは私が考えるセオリーです。
この真理は、非常に重要な意味を持っています。
今回の例では、信じてもらえないと感じている店長が、オーナーに対し
自分の心情を明確に意思表示しましたが、普通なら「もういい」とプッツ
ンしてしまい、サロンを辞めたいということになるでしょう。
人から信用・信頼されないことって、生き方を否定されたようで、本当
に辛いことですよね。
「信じる、信じてもらえる、信じられる・・・」その原点を再確認する
必要があります。
前項の「認める・誉める」の前に「信じる」を足して、「信じる・認め
る・誉める」を人間関係のベーシックにすべきだと思いますね。
8.「E.コミュニケーションの大切さ」
今回のケースにおける救いは、店長がオーナーとの本当のコミュニケー
ションを取ろうとしているところです。
本当の意味での意思疎通・信頼関係がないと、何事も長続きしません。
建前論では裏表を作ることになり、使い分けが始まります。そんなこと
はすぐにバレルのです。
本音でぶつかって、話をすべきです。怖がってはいけません。勇気を出
して意思表示することです。
間違っていると言われようが、何をしようが、自分が信じていれば一理
はあるのです。
そこまでやっても駄目ならその人との相性が合わないのです。それ以上
無理をするとお互いが傷つく事になります。
しかし、もう少し深く話し合えば糸口が見つかるというところで、「も
ういいや」と投げ出して終わっしまうというケースが多々見られます。
「本当の意思疎通は対立の向こうにある」のです。
よく青春映画などでありますよね、対立している二人が素手で喧嘩をし
て、クタクタになって仰向けになりながら「お前もよくやるなぁ!」「お
前の方こそよくやるじゃないか」「ワハハハ・・」ってな感じです。
こんな感じの本音・本気のコミュニケーションが求められるところです。
付け足しですが、「コミュニケーションの密度・濃度は、時間によって
薄まる」ということを知っておくべきです。
人間は同じ濃さを維持できないのです。だから確認しようとして相手と
の会話を求めます。その原則を知らないと、大切な間柄が疎遠になって、
さよならになるので、注意が必要ですよ。
9.「F.リーダーと組織のあり方」
強引に引っ張るリーダーもあれば、皆のサポートをして、その結果リー
ダーの役目を果たすタイプもあります。
強引型は、即効性がありますが、なにかしら恐怖感を与えているものと
思われます。
サポート型は即効性は薄いですが、全員が燃え出したら強いものがあり
ます。
今回のケースにおいて、リーダーは主観的にならず、大きな視点で全体
像を観察する力を持つことが大切なのではないかと感じました。
片一方だけの意見を聞くのではなく、両方の考え方、意見を聞いて出来
るだけ中立な判断をしていくことが重要だと感じます。
10.「G.そしてどうするか?」
今回の様に、厳しい話の後の行動が大切だと思います。
すぐに次の企画を立てて、行動に移していくことで、今回急接近したこ
とが活かされてきます。
良い雰囲気の中でどんどん言い合って、お互いが気を遣わないで自分の
意見をぶつけられる間柄を深める努力が必要です。
ちょっとの時間を見て意見調整し、アイコンタクトで分かり合えるまで
になれば良いでしょう。
そうなれば、私はもうその間に入る必要はなくなるでしょう。
サイドから見守ることにしましょう。
11.最後に
いかがでしたか?
今回は初めて「ケースワークを事例にした考察方式」で書いてみました。
「これはこれで、いけるんちゃうん」と自画自賛しています。
読者の皆さんも、ありがちなケースを取り上げてケースワーク化し、各
人の考え方を知るために話し合ってみるのはどうでしょう。
その様にして、視野の広い感性と対処方法が取れるように勉強していく
ことが大切ではないでしょうか!
こんな感じで、勉強になりましたか?
では、また次回お会いしましょう!
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●編集後記
今回のメルマガのケースワーク部分は、愛媛県松山市の松山城が見える
ホテルで書いていますが、ホテルの眼下で面白い光景を見ました。
今は全国交通安全週間中です。
今年の重点テーマに「自転車強化」があります。
警官が交差点付近にいます。
小雨で傘を片手にした自転車の人が通り掛かると、止めてはなにやら言
っています。(私はホテルの9階なので当然声は聞こえません。)
様子からすると、「傘差し運転は危険なので止めなさい」と言っている
様です。
傘を差したおっちゃん風の人は、警官の赤い指揮棒での停止の合図を無
視して通り過ぎました。警官は後姿を恨めしそうに何回も眺めています。
傘を差したサラリーマン風の人は呼び止められ、そこから自転車を降り
進んでいきました。
しかし、そのサラリーマンは時間に間に合わないと思ったのかして、傘
を折りたたんで自転車に乗り、雨にぬれながらこいで行きました。
気になったのか、警官はその一部始終をずっと見ていました。
この警官は、そのサラリーマンを見て、何を思っていたのでしょうね?
では、また次回、お会いしましょう。
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