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品質管理(後編) (経営の質の向上)

メルマガ再録 (2008年3月24日) 第62号


一般的には、経営の品質を計る基準は次の4つの項目に代表されると思います。「顧客本位」「独自能力」「社員重視」「社会との調和」。今回はこれに左右されず、独自の視点でサロンの品質を考えてみます。

         < 品 質 管 理 (後編) >

1.はじめに

 そう、前回の「はじめに」の部分で「今回はサービス業における品質に
ついて考えてみます。」と書いたのですが、生産現場における品質管理の
ことが主になってしまい、肝心のことが書けず、大変失礼しました。
 気を取り直して、書きます。
 一般的には、経営の品質を計る基準は次の4つの項目に代表されると思
います。
  「顧客本位」「独自能力」「社員重視」「社会との調和」
 今回の場合はこれに左右されず、独自の視点でサロンの品質を考えてみ
ます。
 ではスタートです。

2.経営の全体品質

 美容室経営の経営品質を大きく見ると、次の様な感じになるでしょう。
 (1)経営方針の品質
 (2)組織の品質
 (3)技術の品質
 (4)接客の品質
 (5)業務の品質
 (6)人材の品質
 まだまだ美容室は技術職と思っている人が多く、また上記の様な項目に
対し着目して、改善していくという認識も薄いのが現状です。
 では、1つづつ詳細な考察を加えてみます。

3.(1)経営方針の品質

 まず「経営の方向性がしっかりしているか?」という品質に対する質問
がありますね。
 ということで、GS(ゴールドスタンダード・黄金律)を整理してみま
しょう。
 われわれの美容室は何のために存在するのか、何を目的として経営する
のかという内容をまとめたものが「経営理念」です。
 そのために何をすべきなのかという「使命」については「ミッション」
という表現で言うこともあります。
 それを実行するのにこういう気持ちでやろうというのが「モットー」で
す。
 経営側として、スタッフにはこういうスタンスで接するというのが「ス
タッフへの約束」です。
 各サロンごとにお客様への対応の基本を決めるたものが「サロンコンセ
プト」です。
 お客様に対してどういう技術を提供するのかを決めたものが「技術コン
セプト」です。
 スタッフはお客様に対してどういう気持ちで接するのかを決めたものが
「接客コンセプト」です。
 スタッフが、私たちはこういう気持ちで働きますというのが「スタッフ
コンセプト」です。
 上記の行動の方向性をまとめて示すものが「行動指針」(ベーシック)
と言われるものです。
 こういった内容がバチッと文章化され、掲示され、朝礼などで唱和され
ているとなれば、相当レベルの高いサロンということが言えますね。

4.(2)組織の品質

 サロンを経営する上で、やはり縦の組織、横の連携、斜め組織の活用な
どの特徴と利用方法をしっかり認識して、全員が経営の目指す方向に向か
って集中出来る様にしなければなりません。
 よい組織とは、
  「各自が自分の持ち場をしっかり認識していること」
  「情報が縦横に通っていて、打てば響く組織であること」
  「自主活性型であること」
  「集中力があり、いざという時に爆発力・瞬発力があること」
  「協調性があり優しさが溢れている組織であること」 等々
 そういう組織を作るのがオーナーと幹部の役割です。
 うまく出来た組織は凄いパワーを発揮します。
 エンパワーメント(権限委譲)や、モチベーションアップの勉強も行い、
素晴らしい組織を作りましょう。
 組織の品質は忘れがちな項目ですが,非常に重要な内容なので、注意し
ましょう

5.(3)技術の品質

 美容技術の品質は、美容学校で勉強するので、改めて認識する必要はな
いように思えます。
 しかし実務上、PL法などで問題になることもあるので注意が必要です。
 PL法を少し説明しておきます。
 「PLとは、Product Liability、すなわち「製造物
責任」のことです。製造物責任制度とは、製品の欠陥によって生命、身体
または財産に損害を被った場合には、被害者は製造業者などに対して損害
賠償を求めることができる制度です。というもので、従来の民法の大原則
であった過失責任を欠陥責任原則に転換した被害者保護の法律です。とい
うものです。
 美容室で、髪の毛や頭皮、皮膚などを傷つけた場合など、クレーマー(
文句を付ける人)にとっては最高のネタになります、
 先日などは、スタイルが思った通りでなかったということで、えらい問
題にまで発展したことがありました。
 今は「今回のスタイルが気に入らない時にはアフター保証します。」と
メンバーズカードに書いている場合が多いですね。
 アフター(再技術)に来られたお客様には、誠意を尽くして対応しまし
ょう。
 結局、納得性のあるカウンセリングと、そこで決定したスタイルを作れ
る技術の習得を怠らないということに尽きるでしょう。
 だから、常日頃の新スタイルの研究、作り込みの訓練は欠かせないとい
うことですね。

6.(4)接客の品質

 接客においての品質は、まず基本価値のサービスをきっちりすることで
す。その上にどれだけ付加価値のあるサービスを出来るかということでし
ょう。
 基本価値がどこまでで、付加価値はどこからかという線引きは難しいで
すが、新人にはマニュアルを作って、それを確実にさせるという部分が基
本価値と考えて良いでしょう。
 そして、それをマスターしたら、自分の個性を活かしたトーク・気配り
を展開します。
 この気配りについては、各人の個性・人格に寄与するところが大きく、
バラツキが大きい様です。
 その改善策としては、ケースワークの例題を多く準備し、そのケースに
よる接客ロープレを数多くこなすという訓練を行って身に付けさせること
です。
 ベージックマニュアルは、自然に言葉・行動が発揮できるまでトレーニ
ングを繰り返すことしかありません。
 より上位の接客という概念で検討会を重ね、付加価値を基本価値に落と
し込み、さらに上位の接客をしていくということで、その店の品格が向上
します。
 これも、お客様がより快適に、より満足感を求めておられるという前提
条件を確認して、その要求を満たしていくためにするのだという概念をし
っかり認識することがまず大切なことです。
 スタッフの行動の一つ一つは、サロンのコンセプトの具現化・具体化で
す。その行動によってサロンの品格が問われることになるので、スタッフ
各人の細かい動き、気配りまで注意を払わなければなりません。

 クレーム対応は、そのサロンの接客が試される時です。
 より丁寧に、より慎重に問題点をお聞きし、きっちりと受け止めて、出
来る限りの対応をします。
 もし、自分で対処できない事項は上司の指示を仰ぎます。
 お客様が思われる以上の対処をすれば、それをきっかけにお客様は定着
または紹介までして頂けます。
 そんなクレーム対応方法を準備しておきましょう。

7.(5)業務の品質

 サロンの表は営業ですが、裏の仕事は業務と呼んでいます。業務の仕事
はいろいろとあります。
 業務の品質もしっかりしていないとロスをしたり、ミスをしたりします。
 サロンの「クリンリネス(掃除・美化)」が一番営業に近い部分です。
 掃除の品質は、いわゆる丸く掃除をしていたのでは綺麗になりません。
コーナーの隅々まできっちり四角く掃いて、拭いて、磨いてこそ、本当の
美化ということになります。
 そんな場所もお客様はしっかり見ておられるものです。だから、手を抜
かずしっかりやりましょう。
 次は、「金銭管理」です。
 本日の売上と現金を合わせる作業です。簡単な様でなかなか難しいこと
ものです。1円の過不足も、絶対に手を抜いてはならない項目です。それ
をしっかりすることは、サロン全体の緊張感を高める効果もあります。
 次は、「在庫管理」です。
 在庫は、品切れを起こさないことが一番重要ですが、在庫数を合わせる
ということも大切です。在庫はなかなか合わないものですが、そこをしっ
かりしていくことで、全体の数量管理に関する感覚が磨けて行きます。
 次は、「広告宣伝」です。
 お客様に出すDMは、スタッフの誠意が表れます。下手な字でも、一字
一字丁寧に書けばお客様には喜んで頂けます。手を抜かないことが重要で
す。ハンティング、ポスティングなどでの配る姿勢の品質も大切です。ど
こから見られているかも分かりません、ライバル店は、そんな悪い姿をお
客様に言いふらします。気をつけましょう。
 次は、「小物準備」です。
 営業で使うタオルやガーゼなどの洗濯、乾いた物をたたむ作業は、お客
様のことを思って行います。糸端が出ている場合などは必ず処理します。
営業前などに行なう場合は、その時点でテンションを上げる工夫も一緒に
しましょう。
 次は、「レッスン管理」です。
 スタッフの技術習得のスピードには個人差が大きくあります。努力しな
い事については叱っても構いませんが、習得が遅いからといってバカにし
てはいけません。個人個人の進行状況を把握し、個々に指導していきます。
 次は、「店舗管理」です。
 電球の切れたものの入れ替え、ディスプレイ、外観の維持管理、空調の
具合、BGMの選曲・音量など、故障箇所がないようにすること、より快
適に過ごして頂ける空間作りという品質の維持は必須です。
 次は、「個人情報保護」です。
 これについては、プライバシーポリシーをフロントに掲示するのが一般
的ですね。個人情報を聞く場合は、その使用目的に対し許可を頂く書面を
用意し、サインしておいてもらいましょう。
 細かく言えばまだまだありますが、これくらいにしておきましょう。

8.(6)人材の品質

 人罪~人在~人材~人財というレベルがあるそうです。
 人の品質というのは難しい問題ですね。それぞれの個性・人格が違うの
で単純に比較は出来ません。
 しかし、その人が持っている哲学、志す内容、表現のし方などについて
は理解しておく必要がありますね。
 前文にも書きましたが、「なぜ働くのか?」という質問に即座に「自己
研鑽」と言えるスタッフはやはりレベルが高いということになるでしょう。
 その様に、それに似たいくつかの質問を用意し、適切な答えが言えるよ
うに指導していくことが、これから求められるサロン内教育ではないでし
ょうか?
 また、コンピテンシーモデル(当メルマガ№26)を活用した気付き教
育や、コーチング(当メルマガ№12)を使った自主性の高め方などを使
って、人材の品質を高めていくことが大切でしょう。

8.最後に

 いかがでしたか?
 ちょっとサロンの経営品質というには無理やりの感のある内容でしたが、
参考になったでしょうか?
 一度、あなたのサロンも見直してみてはどう?

 では、また次回お会いしましょう!

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