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改善ストーリー (解決策を考える手順)

メルマガ再録 (2006年8月14日) 第23号


改善ストーリーとは、提起された課題(問題)に対し、一連の流れでその対策・解決策を考えようという取り組みの手順/方法です。パターンを覚えれば、全ての課題へのアプローチが可能になります。

     < 改善ストーリー >

1.改善ストーリーとは?

 改善ストーリーとは、提起された課題(問題)に対し、一連の流れでその対策・解決策を考えようという取り組みの手順/方法(メソッド)です。
 断片的な思考法ではなく、いろいろな手法を駆使して、トータルに答えを求めようとする問題解決技法です。
 改善手法の基本パターンを知り、自分のスキルにすると、社内コンサルタントとしても活躍できます。
 このスキルは、どんな場面でも適応できるので、この基本ストーリーを知ることにより、安心して問題解決に取り組むことが出来ます。
 第7回のワークデザイン的アプローチや第13回のファシリテーション等で習った手法などを前提としますので、思い起こしつつ読んで下さい。

2.5W1Hの弊害

 皆さん良くご存知の5W1Hについて、15年ほど前に考えたことがありました。
 「5W1Hの中に、目的を聞く言葉が無い!」「Why(なぜ)はあるのに、Want(どうしたい)というキーワードが抜けている!」
 この時は、自分では世紀の大発見!と、自画自賛しました。
 それは、今考えると、アドラー心理学で言うところの原因論(Why)ではなく、目的論(Want)をキーワードにすべきであるということに他なりません。
 ~~したいから人間は自発的に動く、自分の考えたイメージがあるから目的に向かい進むという真理は曲げようが無いものだと思います。
 目的を決める時の参考にして頂ければ嬉しいです。

3.改善ストーリーの全容

 基本は「PDCA/PLAN~DO~CHECK~ACTION」ですが、私が重視しているのは、次のストーリーです。
 A.対策・改善計画立案(KAIZEN PLAN)
    ・目的=合意形成された対策の立案
    ・目的確認~課題明確化~データ分析~改善(対策)案立案~評価~実行案確立~概略取組み日程
 B.実行計画(DO PLAN)
    ・目的=対策、実行計画、フォロー計画の共有
    ・概略実行計画~詳細実行計画~日常のフォロー&チェック計画~結果発表(共有)計画
 C.実行&フォロー(CHECK&ACTION)
    ・目的=実行結果はチェック&記録によってのみ明らかになる。OJTによる教育推進。
    ・実行者~実行内容~実行時期~実行報告~チェック支援体制~修正アクション
 D.結果の共有(SHARE<シェア>)
    ・目的=対策~行動結果の発表会等による結果の確認と共有
    ・実行経過報告書(対策前後&目標比較)~プレゼンテーション
 E.進化テーマの設定(NEXT STAGE)
    ・目的=さらなるレベルアップを目指して次のテーマを選択する。
    ・そして、「A.対策・改善計画立案」に戻る
 上記で特に重要な項目は「B.実行計画」と「D.結果の共有」だと思っています。その理由は後ほど。
 ではまず、「A.対策・改善計画立案」から説明します。

4.「A.対策・改善計画の立案」のポイント

 「A.対策・改善計画の立案」は、次の11項目から成り立ちます。
 1)要望まとめ
    ・「何をしたいのか」に焦点を絞る。
 2)キーワード化
    ・要望を、意見が展開し易い様な上手いキーワードにまとめる。
 3)特性要因図作成
    ・特性要因図やイメージMAPなどで要因をリストアップ。
 4)検討一覧表作成
   ・特性要因図、イメージMAPの全項目を一覧表にリストして、「大項目/小項目/ヒント/どう
    いう状態なら満足があるのか/そのためには何をどうすればよいか」のタイトルを記入して一覧表を作成。
 5)理想型作成
   ・「どういう状態が理想か?満足があるのか?」を検討~記入。
   ・現状にとらわれず出来るだけ理想型を書く。
 6)問題発見
   ・理想に対し、現状はどうかを検討する。(否定形の表現)
 7)課題発見
   ・そのためには何を課題にすれば良いかを検討
   ・検討一覧表の「どういう状態なら満足があるのか」を受けて、現状を描きながら、問題点をクリアーにする。
   ・課題化するには、問題点の表現を逆転する。(肯定形の表現)
      (例)似合っていない←→似合っていればよい
 8)工夫・改善・対策案立案
   ・課題を達成するためのアイデアを絞り出す。
   ・コンセプトシンキング、アナロジカルシンキング、ワークデザイン的思考法等を駆使する。
 9)評価する
   ・本当に使えるアイデアは何かを見極める。
   A.費用もかからず、すぐに出来るもの
   B.費用が掛かったり、周りの調整や会社の許可が必要等の条件があり可能だが時期を要するもの
   C.アイデアとしては良いが実行に対し長期的な検討が必要なもの
 10)実行案を作成する
   ・上記で評価され、実行計画に値する案のみを列挙して、しっかりした実行案に叩き上げる。
   ・実行計画で大切なのはA→D変換と担当者&チェック者の決定
 11)概略取り組み日程作成
   ・行動項目/概略日程を示すガントチャートを作成し、実行案を時系列で記入する。
    (マスタープラン)

5.「B.実行計画」のポイント

 一般的に言って改善案までは頑張って考えますが、実行計画が弱いです。
 改善案が出来たら実行出来たくらいに思っている節があります。
 現場では必ずと言っていいほど、実行の過程で思わぬことが起こるものです。その不測の事態に備えての計画が出来ていません。
 だから、そうなった時の対応体制をしっかり決めておく必要があります。
 さらに、目標達成のためには実行計画に対する日常の地味なフォローが大切です。その方法についても併記します。

6.「C.実行&フォロー」のポイント

 実行に関して、最大のポイントは「あきらめないこと」です。
 必ず答えはあります。注意深く観察し、目的意識をしっかり持って事に当たれば、必ず良い結果が得られます。観察眼を養いましょう。
 実行者とフォロー者が役割を分担して、きっちり任務を遂行すれば必ず結果は出ます。
 修正アクションが必要な場合はすぐに対処します。
 実行したという結果はチェックと記録によってのみ明らかになります。実行しっぱなしでは無く、必ず記録(エビデンス)が必要です。
 結果の共有をするために必ず実行記録を事前に細かく積上げておかないと後で困ります。経過を作る事は出来ません
 だから、記録を残すということを意識しながら進行することが必要です。

7.「D.結果の共有」のポイント

 あくまでも、こう取り組んでこうなったという報告が共有化されていないと、次の進歩がありません。
 だから、初めから発表報告するということを前提に、取り組み前から考えておくということが必須です。
 そうすると、ノウハウがどんどん積り、数年で他のサロンを追い抜くことが出来るでしょう。
 恥ずかしがらずに、発表の機会を頻繁に作ることが成長の近道です。
 オーナー自身が恥ずかしいからといっていては話になりません。
 こういう環境を与え続ければ、そうすることが当たり前になり、習慣化されて立派な人材が近道で育ちます。
 OJTスタッフ教育を併用した効果と言えるでしょう。

8.「E.進化テーマの設定」

 ここまで来れば1レベル向上です。
 次に新しい課題を設定します。
 世の中の動き、業界の動き、近隣の動き、スタッフのレベルと意見、幹部の想い、今回のテーマの仕上がり等々を加味して、次のWantを決めます。
 後は、「A.対策・改善計画の立案」からの繰り返しです。
 テーマによってサイクルが長いものと、短いものがあります。
 長いものはフォローが甘くなりがちです。しっかり支援体制を守って、目標達成に向かいましょう。

9.改善ストーリーの例

(シーン)「待合の改善」、(サブタイトル)『時間が気にならない楽しい待合作り』をテーマに、一例を挙げてみましょう。
 A.対策・改善計画立案(KAIZEN PLAN)
  1.大場面の設定
    ・「受付」
  2.小場面の設定
    ・「待合中」
  3.定義(どういう状態が理想的か?)
    ・「待ち時間が楽しい」
  4.現状の状態
    ・「ほったらかし」
  5.問題点(その差は何か?)
    ・「楽しめることを提供できていない」
  6.課題(どうすれば出来るか?)
    ・「楽しいことを考えて提供する」
  7.対策案(何をするか、いろいろな案を列挙する)
    ・「各種案列挙」
  8.絞込み(対策案の中から、直ぐ出来て効果的と思われるものをまず選ぶ)
    ・「クイズを出して、正解ならチョコレートをプレゼントする」

 B.実行計画(DO PLAN)
  9.実行案(いつまでにするか?誰がするか?)
    ・「来週火曜日からスタート。担当者は山田。」
  10.フォロー案(いつフォローするか?フォロー者は誰か?)
    ・「再来週チェック。チェックフォローは吉村。」
  11.実行(実行案を実行する)
    ・「景品を購入し、実行に備える」
    ・「実行スタート」

 C.実行&フォロー(CHECK&ACTION)
  12.フォロー(フォロー者が実行者に計画通り実行したかを聞く)
    ・「吉村=計画通りに出来ましたか?」
    ・「山田=出来ました。」
  13.評価チェック(出来栄えはどうだったか?狙い通りだったか? 感想も聞く)
    ・「吉村=出来栄えはどうでしたか?」
    ・「山田=正解の時は良かったのですが、不正解の場合に寂しそうなのが気になりました。」
  14.修正アクション(修正・追加アクションを考え、狙いの効果が出るまで繰り返す)
    ・「不正解の場合に寂しそうということで、不正解者にも何かプレゼントする。」
    ・「アメに決定」

 D.結果の共有(SHARE<シェア>)
  15.情報共有(皆で状況を把握する)
    ・全体ミーティングで、「途中~~という困った問題も起きましたが山田さんの気転の効いたアイデアで上手く行きました。」
    ・一同拍手!

 E.進化テーマの設定(NEXT STAGE)
  16.次のテーマの設定(よりレベルの高いテーマにチャレンジ)
    ・「次は、顧客感動をテーマに何か自分達のレベルで出来ることを考えてやってみましょう!」

10.最後に

 過去のメルマガのノウハウ総動員という感じの内容になりましたね。
 そうなんです。
 確かに、ノウハウというものは、単独では意味をなしません。連なっているから、次から次への展開に対応できるわけです。
 会社の運営会議、開発会議、プロジェクト会議、クレーム処理会議、スタッフミーティング、どれをとってもテーマ・内容は日々変わっています。
 しかし、この「改善ストーリー」はどんな課題にも対処できるの万能の手法です。
 集大成としての改善ストーリーを本当に使えるものにし、自分のツール、スキルとしてフル活用して下さい。

11.次回案内

 では、次回の案内です。
 次回は、「組織論」について説明します。難しそうなタイトルですが、組織とは何か、何を大切にすべきかを考えてみたいと思います。
 次回もまたお役に立てるメルマガを目指して、作文します。
 応援よろしくです。

ではまた次回もお会いしましょう!

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