| 実践技術
事務局 (情報の中心にいる係)
メルマガ再録 (2006年9月11日) 第25号
イベントやプロジェクトの中心にいて、情報や人の動きを制御する役割も果たします。事務局を経験することにより、リーダー以上のノウハウやコントロール技術が身に付く素晴らしいポジションです。
< 事 務 局 >
1.はじめに
「事務局ってノウハウですか?」って聞かれるんですけど、私は「絶対ノウハウです!」って答えています。
今回は、私の経験談を中心に事務局とはどんなものかを解きほぐしていきましょう。
思い起こせば、「私の人生、事務局に尽きるかな?」なんて思ったりするくらい延々とやっていますので、書くことは山ほどあります。
お付き合い下さい。
2.事務局の仕事
個人の集まりでは、幹事ですね。
イベントの幹事を数多く実践すれば、多人数をまとめるノウハウが身に付きます。
言い出しべえはいるが、それを実際にまとめて実行まで持っていける人って意外に少ないものです。
ただ集めて実行するだけではなく、その集まった人に良かったという感動を与えるまでの幹事は、なかなかいません。
会社や団体では事務局と言う役割になります。
私は、最初に入社した会社で、慰安旅行改善委員会の幹事(事務局)に立候補しました。
それまでのその会社の慰安旅行は、言っちゃなんですが、旅行会社任せで、古臭いタイプのおっちゃんが幹事をしていたので、旅行内容も古臭く、出席率も年々低下して冴えない旅行になっていました。
仕事以外でのコミュニケーションの大切さを大事にしていた私はそれが我慢出来ず、「何でやねん!何とかせな!」と思い、出席率を上げることに取り組みました。
その一歩として、慰安旅行改善委員会なるものを私設で立ち上げ、社員の皆さん、パートのおばちゃんにアンケートを行い、それで出席率を倍増させようと考えたわけです。
事前出席率は40%くらいだったものを、アンケート結果からいろいろな工夫をして結局、80%くらいまで引き上げることに成功しました。
その改善アイデアの例としては、「宴会で酒を飲まされるのが嫌」・・・これに対しては、ご飯を早めに出してお酒を封じ込め、全員参加型のお座敷ゲームを考えて実施しました。見事盛り上がりました。
もう一つは、事前広告です。次回の旅行の告知パネルを作成し、行くまでに既に盛り上げるわけです。
子どもの頃、ハイキングの前の日などメッチャ楽しかったですよね。あの雰囲気を作り出すわけです。でっかい模造紙に行き先の名産品や途中の景色などを盛り込んだ、超楽しいポスターを作るわけです。ほんま盛り上がりますわ。ちょっと掲示が予定より遅れると、「谷口さん、次回の旅行のポスターまだ?」って言ってくるくらいですからね。
事務局は、事務的に仕事をするだけではなく、このようにそのイベントの主旨を良く理解し、狙いとするところの効果を引き出すことが重要な役割だと考えます。
こんなこともありました。
私が30名くらいのコンピュータ会社に勤めている時、社長が所属している協会のゴルフコンペの事務局を引き受けてきました。
それで、私はその時は企画室の仕事をしていたんですが、「谷口君、ゴルフの事務局やって欲しい!」って言われてすることになりました。
月間1回、第4水曜日に開催されるコンペの案内作成とその配布、成績の管理、賞品の買出し、旅行会社への手配などなどの仕事をこなしました。
余談ですが、ある時など、仕事中に社長から電話があり、「谷口君、コンペの賞品を忘れてきたので持ってきて欲しい。」ですって。私は頭に来ました。・・・なんでやねん!
それで、早く行かないと表彰式が終わってしまうので、高速をぶっ飛ばして走りました。しかし、運悪くインターを降りた途端にスピード違反で捕まってしまったのです。・・・クソッ!
で、やっと届けたんですが、余りに頭に来ていたんで、社長連中にスピード違反で捕まったことを言いました。
そしたら、そこにいたメンバー全員が1000円づつカンパしてくれて、反則金を払うことが出来ました。
事務局とは、そんな仕事です。(どんな???)
3.事務局に必要な資質
こんな話もあります。
古い話で恐縮ですが、日本にパーソナルコンピュータが入ってきた頃はまだパソコンとは言わずに、マイコン(マイクロコンピュータ)と言っていました。
そんな頃、コンピュータ会社の主催で「マイコンクラブ」が結成されると聞いて、すごく興味があったので早速行ってみました。
しかし、そこは大学生や若いエンジニアで一杯で、30歳くらいの私は場違いな感じでした。
会長を決めるということで、立候補を募ることになりました。私はサッと手を上げました。なんで?と思われるかも知れませんが、このときの私の心境はこうです。
皆はパソコンが出来る。私は出来ない。しかし、私は人の世話は出来る。従って私が出来るのは会長くらいしかない。・・・僕って、変?
つまり、世話を買って出るという資質が事務局には必要です。
事務局は縁の下の力持ちとも言われますが、その信頼は絶大なものがあり、派手ではありませんが、ある意味その会をコントロール出来るポジションであるということも言えるのです。
次は、私が28歳~30歳までの2年間、「TQC運動」というプロジェクトリーダーをした時の話をしましょう。
その会社は130名くらいの松下電器の下請工場でしたが、当時私はその会社の品質管理係をしていました。その時、私は「品質は一部の部署で良くしていくものではない。全社で取り組まなければならない!」という使命感に燃えていました。
そんな私は、TQC(トータル・クオリティ・コントロール)という全社的品質管理運動を社長に提言し、それが受け入れられたのです。
そして、社長のお墨付きの下、運動を展開することになりました。この時の苦労話をすれば切りがないので1つだけ、エピソードを披露します。
情報の流れを改善するために、会議の再編成を行い、会議の品質向上にも取り組みました。
そんな中、班長レベルの人たちで組織する班長会議を招集して、各部署間のコミュニケーション改善をしていくことを主眼として会議をしていました。私は、同じクラスの人たちが集まって話し合うことに非常に意義を感じていたので、その会議は重要な要素でした。
ある日のその会議に、上司がズカズカと入ってきました。私が議長をしていたので、「何か用ですか?」と上司に尋ねました。
その上司は「別に用はない。どんな会議をしているか見たい。」と言いました。私は、上司に見られていては、下の者は言いたいことも言えないという事を知っていたので、「ここは班長会議です。レベルの違う人がいたら意見が言えません。だから退場して下さい。」と告げました。
しかし、その上司は、「いや、聞かせてもらう。」と言って出て行きません。私はカッとなりましたが冷静に「もう一度言います。出て行って下さい。」。上司「いや、聞かせてもらう!」
ここで、私の頭の中でプチッと何かが切れました。ズカズカズカとその上司の元により、胸元をつかんで、「出て行けって言うてるのが、分からんのか!」と大声で叫び、上司を会議室から引きずり出しました。
会議に出席している他のメンバーは唖然としていました。その時の班長達の顔を今でも忘れません。私の行動にびっくりすると共に、私に対する信頼が一気に増しました。そして、その彼等が進んでその運動を底辺から支えてくれ始めたのです。
そのことがきっかけで、私もさらに運動を真剣に取り組み出しました。
そして自分で企画した2年間のプログラムを全て完了することが出来たのです。
この運動期間中の私のテーマは「粘り、粘り、粘り!」でした。
その時は、漠然とこう思っていました。「今後の自分に役に立つはずだ、だからこのプロジェクトは計画の最後まで完結させる」と。
途中、上記の様ないろいろな困難がありましたが、見事に粘って、2年間の運動を終了させました。
この時に学んだことを列挙します。「情報は全ての人が同じ様に与えられるべきであること」「その情報を元にコミュニケーション出来れば必ず分かり合えること」「イベントは3ヶ月に1度が程度であること」「予定は事前に必ず知らせて、心の準備をさせておくこと」などなどです。
この時に自分は、人を動かすポイントを学んだんのだと思います。
今、この時のことが最高に役に立っています。
ね。事務局って素晴らしいでしょ!!
やってみると、人の何倍も学びがあるし、感動がありますからね。
4.信頼される事務局
経営コンサルタントとして独立後ですが、平成4年から3年間ほど、内面美容研究会(海援隊)という勉強会の事務局をしていました。
この時は、毎回きっちり議事録を取り、それを出席者、欠席者に渡していました。あるサロンに行った時、その議事録がさりげなく待合に置いありました。そのサロンの先生に聞きました。「なんで、ここに議事録が置いてあるのですか?」。そうすると先生は答えました「谷口さん、これは凄い資料ですよ。私達が勉強してきた内容が全て書いてある貴重な財産です。それをお客様に見て頂いて、一緒に勉強しているんです!」
嬉しかったですね。議事録を取り続けてよかったと思った瞬間でしたね。
最近の事務局話からもう一つ。
2年半くらい前から、伊藤豊氏を代表とする全国有名美容師さんたちが集う「ウッディチキン」というグループの事務局をさせてもらっている中からのエピソードで、私がウッディの事務局に推薦されるまでの経過をお話しましょう。
代表の伊藤先生とは、3年半くらい前に私の顧問先の合宿研修を開催された時に初めてお会いしました。
それからその合宿のフォロー会などで数回お会いする内、私から資料を提供するなどしていたことが認めて頂けるきっかけとなり、翌年春頃からコンピテンシーの資料作りなどを手伝い始めました。
それから、秋に全国の運営委員が集まる会合に呼んで頂いき、その場で正式に事務局を依頼されて、させて頂く事になったわけです。
それからは、名簿作成、会則作成、年会費の集金、毎月の定例会案内作成、定例会参加受付、定例会への現地参加、定例会写真集のホームページアップ、レポート作成、サマーカレッジ等の特別イベント企画などなど、大変な作業量ですが、これをこなしています。
ここで勉強になることは、本当にいろいろあります。
人と人が触れ合うことで、毎回スパークが起こります。スパークとは、「あっこれだ!」という気付きの瞬間です。特に、夜の話し込みで多くの人が目を輝かせて先輩の話を聞いている瞬間にスイッチが入る様です。
こんな出会いを準備できる事務局は、素晴らしい仕事だと思います。
「信頼してもらえるから事務局をさせてもらえる」ということです。
この信頼と言うキーワードについて、最近のマイブームに「応答と信頼」があります。
今、あちこちのサロンで、言って廻ってます。
英語で応答はレスポンス(Response)です。一方信頼はレスポンシビリティ(Responsibility)です。
何が言いたいかと言うと、レスポンスを良くすると信頼度が向上するということです。
このメルマガの読者だけのノウハウとして、「信頼される人間、信頼される経営とは?」という質問があれば、即答して下さい。「応答を早くすることです」と。
この応答を早くし、徹底的に仕事をこなすためのキーワードは「すぐ・なん・とこ・でき」です。
「すぐ」は即答、即行動。
「なん」は「なんでもする」です。仕事の選り好みをしないことです。
「とこ」は「とことんやる」です。途中で投げ出さず粘ることです。
「でき」は「できるまでやる」です。あきらめず徹底的にやることです。
皆さんも、この言葉を肝に銘じて、仕事して下さい。
信用、信頼はすぐに構築できるものではありません。地道な日々の活動から構築されるものですからね。
5.最後に
なんか、今回は私の回顧録みたいになってしまいましたね。
事務局の細かいテクニックではなく、「事務局はこんなに素晴らしい仕事だからどんどん進んでやろう!」みたいな乗りになってしまいました。
今回のメルマガを読んで、事務局をやってみたいと思われる方には、どんどんノウハウを授けますので、相談して下さいね。
6.次回案内
では、次回の案内です。
次回は、「コンピテンシー」について考えてみます。
コンピテンシーは、ハイパフォーマー(高い業績をあげている人)の行動特性に学ぶということです。
サロンにおいてどの様に考え、どのように導入し、活用するのかを経験談からお話します。
次回もまたお役に立てるメルマガを目指して、作文します。
応援よろしくです。
ではまた次回もお会いしましょう!