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人材育成 (無限の可能性を引き出す)
メルマガ再録 (2006年12月11日) 第31号
ティーチング、コーチング、リーチング、躾(しつけ)などを通し、自主自立、自主活性型の人材を育成する方法を説明しています。採用面での活用や指導者の基本姿勢についても考察しています。
< 人材育成 >
1.はじめに
今回もなかなか大変なテーマですが、今回も頑張って何らかの方向性を示せるように考察してみます。
人材育成の人材という字を、人罪、人在、人財などと語呂とランクを合わせて用いる人もいます。
ちなみに、「人罪」は罪な人で組織の害になる人、「人在」はいるだけで役に立たない人、「人材」は人の手、「人財」は役に立ち人的財産となる人と解釈していいでしょう。
今回は、人財になる前の段階の人を育成するので、やっぱり今回は人材を使いましょう。
育成とは、広辞苑には「育て上げること」と書いていました。
「育てる」とは、教え導く、仕込む、しつけるなどとあります。これは他動詞です。「育つ」が自動詞。だから、育てるは、対象者を教え導く、仕込む、しつけるということになりますね。
さらに、「上げる」ということは、仕上げるということでしょうから、これで良しという目標段階まで行かないといけないわけですね。
2.育成の種類と方法
一般的に教え育てるには、方法があります。
まず「ティーチング」です。これは教え込むという意味の教育とそれを身に付くまで繰り返し行う訓練です。学校の勉強やスポーツの基礎などはこれに近いでしょう。
次に「コーチング」です。これは、対象者の自主性を促す育成の方法で、本人に考えさせ、それをサポートしていく方法です。共育という字が当てはまるかもしれませんね。
それから、元松虫中学の原田隆史先生が言われている「リーチング」です。これはまだ一般化していませんが、本人が目標とするもの、およびそのプロセスを書き出させ、その目標に向かって行く途中の段階を細かくチェックして、その目標に届けて上げるという様な、目標プロセス管理の方法です。本なども出ているので参考にされれば良いでしょう。
3.躾(しつけ)
育成して成長するには、結局のところ「優しい」「素直」「正直」であるということが求められます。
そういう特性がある人は、周りの人に好かれ、可愛がられ、人が寄ってくるという「人徳」を得ます。
では、そんな子供に育てるにはどうすればよいのでしょうか?
江戸時代の会津藩の6~9歳の子供を躾けるのに「お話の什(じゅう)」という教えがありました。
1.年長者の言うことに背いてはなりませぬ。
2.年長者にはお辞儀をせねばなりませぬ。
3.うそを言うてはなりませぬ。
4.卑怯な振る舞いをしてはなりませぬ。
5.弱い者をいじめてはなりませぬ。
6.戸外で物を食べてはなりませぬ。
7.戸外で婦人と言葉を交えてはなりませぬ。
「ならぬことはならぬものです。」
最後の「ならぬことはならぬものです。」とは、無条件にこれに従うことであると言うことです。
要するに、子供の時からの躾がなされていることが一番の要素です。
この「什の掟」に習って、サロンでも躾を考えてみれば良いでしょう。
4.学ぶ姿勢・教える姿勢
まず、習う側の姿勢が整っていない(躾が出来ていないと)と、教えても、あるいは持っているものを引き出そうとしても、容易なことではありません。
習う本人が大事なことは、習う項目を吸収して本当に自分のものにしようとする意欲があることです。受身で習うのではなく、肝心なのは積極的に学ぶという姿勢です。
躾が出来ていないスタッフに、この様な習う姿勢を持たせるには、指導側の基本の対応に関わってきます。
指導者が日常から信頼できる人であれば、スタッフは学ぶ姿勢も意欲もしっかり持ちます。
が、信頼の出来ない指導者からは真剣に習おうとはしないでしょう。
両者のこの様な基本姿勢がマッチして、教える・学ぶことが成立します。
この前提条件をまずクリヤーすることで、教育支援は半分以上成功したと言っても過言ではないでしょう。
5.育成を視野に置いた採用
何かの本で読みましたが、人材という意味では基本的には採用が非常に大切です。
採用とは、そのサロンが持つコンセプトに同調・共鳴できるかを入り口で判断する仕事です。
だから、募集広告で、しっかりどんなサロンでどんな人材に来て欲しいかを主張すべきです。
入り口で何でもありとすると、ベクトルの違う人が入ってきた場合、その人をこちらに向ける教育は大変な力を要します。
もっとひどい場合は、不平分子となって順調なスタッフまでも蝕んでしまうことになるので要注意です。
バグジーでは、採用面接で給料などの労働条件を聞くと面接を即中止、また来週に体験入店に来れないといっても即中止です。
つまり、そういう人材は取らないという姿勢を示していますし、それがサロンのコンセプト(ポリシー)と直結しているので、目指す人材が集まるのです。
ですが、小さいサロンはまず人手としての人材を欲しいわけです。なので「そんなことは分かっているけど現実は・・・」というケースが多いでしょう。それならなおさら、次の項目が重要です。
6.指導者の基本姿勢
では、指導的および支援的立場の人が、そのスタッフを育成する時には何からすべきか考えてみます。
情操教育(躾教育)をする場面では、スタッフから指導者自身の基本姿勢が問われます。
俗に「あんたに言われたくないわ!」状態になると、教育など出来ません。
だから、指導者もしっかりした生活態度が問われます。
そうですよね。指導者がタバコスパスパ吸っていて、お前らタバコ止めろ!って言っても駄目ですよね。
指導者はそういう意味で、「範を垂れる」ことです。
「範を垂れる」って昔言葉ですね。これはつまり、自らが実践して模範を示すことです。
これがなかなか出来ない。
人を指導するのに、自分はさて置いてとは行かないのです。
自分が出来ないものをどうして教えられるでしょう?
自分は出来るから指導・教育できるわけです。
最近では、コーチングというものが流行っていますが、尊敬出来ない指導者にはついていきません。
つまり、指導者のベーシック(基本姿勢・躾)が問われています。
次に、指導者の姿勢です。
これは、絶対にあきらめない事です。
その裏付けとして、人材には個人差があることを良く認識していることです。
指導者があきらめてしまうと、教育指導はそこで終わりです。
ここでどうするかと言うと、家族主義を持ち出します。
家族であれば、一生見放さないですよね。
7.適材適所
あきらめないで指導しても、現実として成長の遅いスタッフはいます。
さて、それにどう対処するか? これが結構な課題です。
その一つの解決策として(いや最終手段かな?)適材適所という言葉があります。その人にマッチした働き場所を提供することです。
この話を詰めると、組織論の方に行ってしまうので簡単にしますが、そのスタッフが100%力を出せるポジションを用意するというものです。
但し、育成をあきらめたのではなく、より力を発揮できるポジションを与え、またその場での育成を強化すれば良い事です。
但し、その場合、本人との話し合いを先に良く詰めておかないと、端っこに追いやられたという疎外感を持つことがあるので注意です。
これは、永年勤続の場合も同じで、キャリアのあるものでも、次の世代にチャンスを与えるという意味で、今のポジションを退く勇気が必要です。
8.環境
人材育成にはサロンの環境を整えておく必要があります。
育つ、育てる風土ですね。
それには仕組みがいるということです。
いくら本人が頑張ろうとしても、その足を引っ張ったり、冷ややかな目で見るという環境では人は育ちません。
つまり、サロン全体に人を育成することが大切なんだという雰囲気とそれを具現化したシステムを準備しておくことが必要です。
一番大切なことは、本人の学ぶ姿勢であることは当然のことですが、その先に何があるのかを見せて上げることです。
その仕組みには、評価システムと連動した給与システム、自分の力が充分発揮できるキャリアプランなどがその例でしょう。
また、コンピテンシーモデルを活用し、次のワンランクアップのステップを明確に示して上げることも良いでしょう。
システムはそれ自体では完全ではありません。人がそれを上手く運用、活用して力を発揮するものです。
だから、スタッフをシステムと人の温かみでサンドウィッチして、育成していくことがベストです。
9.育成の手順まとめ
では、育成の手順をまとめてみましょう。
1.環境を整える
2.システムを準備する
3.本人の意向を聞く
4.サロン側の意向を伝える
5.目的・目標を設定する
6.コチーング・OJTなどで育成する
7.経過をチェックする
8.方向を修正する
9.区切りで結果を見て、次の目標を立てる
と、まあざっとこんな感じでしょう。
今までこの「心と技のあいだ」で取り上げてきたテクニックを利用して効果的に進めて下さい。
10.最後に
人材育成について、私流の切り口で考えてみました。
他の方が言われる人材育成とはかなり違った角度からの考察となっているかもしれませんが、何か参考になるものがあれば嬉しいです。
システム、環境、人・・・どれをとっても重要な要素です。
そういう資源を上手く活用して人を育てる。
先日の講演会で良い言葉を教えてもらいました。
ダイヤモンドはダイヤモンドでしか磨けない。
人は人でしか磨けない。
人は人によって磨かれる。
誠にそうだと思います。
だから、磨く人の程度によって磨かれる人のレベルが決まってくるのです。
だから、磨く人を磨かねば・・・・・
そういうことを念頭に置いて、素晴らしいサロンを作られることを願っています。
11.次回案内
では、次回の案内です。
次回は「チームワーク」です。
目的を持ったチームの力をフルに生かすにはチームワークが不可欠です。
「三人寄れば文殊の知恵」「周知を集める」などの言葉がある様に、人数が集まれば、人数以上のパワーが発揮されます。
人が集まると「赤信号、皆で渡れば恐くない」という逆の方向へ流れる面もあります。
そのあたりも含めてチームワークについて考察します。