| 実践技術
キャリアプラン (今後の進路設定)
永年雇用を約束するためには仕組みが必要です。働くポジションを準備しなければなりません。会社がどれだけ親身になってそのシチュエーションを準備できるかに掛かっています。
< キャリアプラン >
1.はじめに
キャリアプランのキャリアは、Careerと綴りますが、辞書で引く
と「生涯・経歴・履歴、生涯の職業、成功・出世」などと出てきます。
美容室でキャリアプランといえば、「これからの自分の技術・役職およ
び将来の進路の設計」という様な感じで使います。
スタッフにおいては、人生設計(ライフプラン)をまず考え、そしてキ
ャリアプランを考えるということが大切です。
美容業界の特性として、お客様は基本的に女性であり、それに対応する
美容師は女性であるということが根底にあります。
最近は男性のお客様、美容師も増えていますが、女性割合は6割~9割
はあるでしょう。
基本的には女性対象の職業であるということです。スタッフも同じ様な
割合で、女性が多いわけです。
ということは、結婚適齢期になると、これはもう何を置いても、結婚・
出産・子育てということが待っているわけです。
すなわち、そこで職場は、一旦区切られることになります。私の知る限
り範囲では、そこで90%以上のスタッフは退店することになります。
上記の様な観点を総合すると、美容室は20~30歳くらいの若いスタ
ッフの職場であるということが言えます。
これらの内容を前提として基本キャリアプラン、ゼネラリストコース、
スペシャリストコース、出産後の復職、出店支援体制などについて考えて
いきます。
2.基本キャリアプラン
美容師としての自分を考える上で、まず最初に「なりたい美容師像を明
確に持つこと」、そのためには「今の自分を見つめ、将来の自分を真剣に
想像してみること」が大切です。
例えば、女性であれば、結婚は外せないですよね。いや、関係ないとい
う人もいるでしょうが、ここでは30歳に結婚し、そのまま退店したいと
いうケースを例にとって考えましょう。
人生設計としては、美容学校卒業の新卒で入店するのが20歳、そして
退店が30歳となります。
そして、基本キャリアプランは、この間の実質10年間の計画です。
個人の計画の概要として、3~4年目でスタイリストデビュー、そして
6年目から2年間はチーフ職、8年目から3年間は店長。給料はアシスタ
ントで15万円、スタイリストで20~25万円、チーフで26~29万
円、店長で30~35万円という様な計画を立てます。
これは、あくまでもスタッフ個人のプランで、この通り行くという保証
はありませんが、計画を持っているということが大切です。
サロンとしては、勤務評定基準、技術習得規定、役職規定、就業規則、
慶弔規程、給与規定どを準備しておくことが必要です。
入店からスタイリストデビューするまでの技術習得カリキュラムをまず
準備します。そして、その技術ランクに対応する名称をつけます。技術ラ
ンクには、こんな名称を使っています。
メッセンジャー、アシスタント、オペレーター、メインアシスタント、
ジュニアースタイリスト、スタイリスト、デザイナー、シニアースタイリ
スト、アーティスト、アートディレクター・・・・・
スタイリストデビューまでに何年を要するか?によってカリキュラムの
作り方は変わってきます。
早くデビューすることがサロンにとっても個人にとっても良い事ではあ
りますが、急ぐ余り、お客様に迷惑が掛からないようにしなければなりま
せん。テストおよび査定の仕組みと、それを給与に反映させる仕組みが必
要です。
技術と併行して、その技術レベルに合った接客レベルが求められます。
こちらの方の資格に対する向上プランもおろそかにすることは出来ません。
基本キャリアプランは、この様に店長クラスまでのベーシックキャリア
プランで、基本的にはこの路線を進んでもらいます。
3.ゼネラリストコース
ゼネラリストコースは、管理者として成長してもらうコースです。
大方のサロン内の役職(ポスト)は次の様なものです。
サブチーフ、チーフ、主任、店長、サブマネージャー、マネージャー、
エリアマネージャー、ディレクター、BOSS、オーナー等
チーフは、店長の補佐としてスタッフの意見・コンディションを把握し
ておき、調整する役目があります。
店長は、その店の運営を任されているのですから、スタッフのパワーを
100%活かして売上目標を必達することが最優先課題です。
マネージャーは、トータルにアシストする立場ですから、利益構造を知
り、全体の方向性を間違わないようにリードする責務があります。
エリアマネージャーは、複数店舗を統括管理し、受け持ちサロンの運営
を任せることになります。
ディレクターは、より経営者に近い立場でものを考え、指導していく立
場なので、サロン外との接触も広く、大きい視点を大切にします。
こちらも何の業務・役割がどのレベルまで出来ればよいのかを明確にす
る評価システムを確立する必要があります。
「あなたの役職の仕事はここまで」と言う限界を与えるのではなく、あ
る程度の仕事のガイドラインを与えて、自分でその役割を作り上げていく
というスタンスが良いと思います。
ただし、より上の役職者は常にサロンのコンセプトを浸透させる役目を
背負っているという前提条件を満たしている必要がありますね。
4.スペシャリストコース
スペシャリストコースは、ゼネラリストコースに進みたくなく、美容師
の技術に特化したいスタッフのためのコースです。
基本キャリアプランの中で、スタイリストになりたくないというスタッ
フが出てきたりします。どうしてもそうしたいという場合は、メインアシ
スタント(スーパーサブ)を任命し、そのスタッフを活かします。
またスタイリストから成長し、役職に付かせようとしたら拒否するスタ
ッフが出てくることがあります。この場合、あまり押し付けたり、無理を
させると退店してしまうケースが往々にしてあるので、TOPスタイリス
トとして継続させます。
また、バックステージ・コンテスト・モード作品作りなどのアーティス
ト志向に特化したいというスタッフも出てきます。出来るなら、そのチー
ムを作り、盛り上げていければいいですね。
さらに、店内インストラクターや外部講師などのコースも設定すれば、
各方面で力を出せるでしょう。
多くのサロンを経営している場合、仕入れ部門や経理部門などでも働く
ポジションを作れます。
5.結婚~出産~復職
次は、結婚/出産して復職したいというケースです。
例えば、「27歳でスタイリストで働いている中、結婚が決まり、当面
は通常通り働きたいが、妊娠したら出産数ヶ月前に休職し、出産後1年以
内に現場復帰したい」というケースを考えてみましょう。
こういう場合、サロンに復職する場合の取り決めを作っておく必要があ
ります。
結婚後出産までの勤務条件と給与、復帰後の労働条件の整備が必要です。
もしまだ決めていないなら、早速いろいろなことを研究してみることに
して下さい。
産前産後の休暇については、産前6週間、産後8週間が認められます。
又、産休中の給料については労働基準法に規定がないため、各会社の判
断に委ねられています。無給の会社もあれば、有給で全額支給の会社、有
給でも給与の一部を支給するだけの会社など、様々です。
ただし、無給の場合でも、健康保険の被保険者であれば、実際に休業し
ている日数分の賃金の60%が出産手当金として健康保険組合から支給さ
れます。
さて、出産後の復職については、次の様なケースが考えられます。
産前と同じポジションに戻す、勤務時間を短縮して準社員(パートタイ
マー)的な立場に変更する、店長等の役職・指導的ポジションを外すなど
です。
それぞれの形に応じた給与体制を整備し、産前産後休暇規定および産後
の復職規定を就業規則・賃金規定に明記しておくことで、スタッフは安心
して働くことが出来ます。
6.出店支援プラン
そして、出店希望と言うケースです。
「自分の店を持ち経営したい」という希望を明確にしているケースです。
スタイリストとして、技術&売上が出来るようになり、固定の指名客様
が付けば、ある程度簡単に独立することが出来るという美容業の特性があ
ります。
サロンとしても、スタッフの出店意志を確認しておけば、それなりの動
きでサポートしてあげることが出来ます。
それを自然の流れと認識し、両方がWINの関係を作ってやっていくこ
とでよい状態が保てます。
出店支援に関しては、次の様なパターンがあります。
(1)「サロン内独立の場合」
スタッフは貸し出し(または独立店持ち)、経理は親店の勘定という様
に、独立はしているが雇われオーナーというスタンスの店の場合です。
この場合、経費と親店のサポートをどのように見るかについて細かな取
り決めをしておくことが大切です。
(2)「リース途中の独立」
リース残が残っていて、その店をスタッフに売却する場合、基本的にリ
ース会社は名義変更に応じないので、契約以降のリース料は本人がサロン
に支払うことになります。家賃は名義変更出来ればOKですが、出来ない
場合は同じくサロンに払います。リースアップした時点で、どの様に契約
を考えているのかの「覚書」を交わしておくことをお勧めします。
その項目に付いては、家賃の支払い方法、設備・備品・営業権利などを
含む売買契約内容・金額および支払い方法、スタッフの勤務、経理、薬液
材料仕入れ方法等についての記載が必要です。
(3)「リースアップ物件の独立」
リースが終了しているので、家賃契約に付いて確認し、その他は(1)
と同じ要領で売買契約します。
(4)「フランチャイズ独立」
フランチャイズ独立に関しては、フランチャイズ契約をします。
フランチャイズ契約とは、フランチャイザー(親店)とフランチャイジ
ー(契約店)が交わす契約です。
その契約とは、主に契約店が親店にブランド(ロゴマーク)使用料・ノ
ウハウ供給料・コンサルタント料等に対価するロイヤリティーを支払う事
により成立します。
(5)「完全独立」
「完全独立」は、資金調達を自分で行い、全く親店との関係を切り離し
独立するケースです。
この場合、親店との友好関係を保ちつつ、フレンドリー店として今後も
付き合っていくということを続ける方がよりベターです。
(6)「ボランタリー独立」
完全独立ではあるが、マスメリットを活かすために共同仕入れする方式
です。
7.最後に
業界的に、なんとなく、美容師は35歳を境として、前線を引いていくと
いうイメージがあります。
私が依頼されて作る給与の仕組みも、そんなシステムになっている場合が
多いです。
それなら、「その後はどうなるのだろう?」と考えてしまいますよね。
「永年勤続を前提とした職場で安定した力を出して働く」ことが望まれま
すね。
そのためには、サロン自体の環境の整備が先決です。
現状のスタッフを集めて将来構想、キャリアプランについて話し合ってみ
て下さい。そして、ES(従業員満足)を目指した夢のあるサロンを目指し
てキャリアプラン構築に力を入れて下さい。
そうすれば、良循環が発生し、もっともっと良いサロンが出来るでしょう。
8.次回案内
では、次回の案内です。
次回は「リフレイミング」です。
リフレイミングとは、物事の見方、視点を変えて見るという意味です。
嫌な事、辛い事、しんどい事など、人生にはいろいろな試練が待ち受け
ていますが、そこから何を学ぶのかという様なことに付いて勉強しましょ
う。
かなりメンタルなお話ですが、きっと貴重な視点転換により、「眼から
ウロコ」状態で、ハッと気付く人があるかも知れませんよ。