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ゴールドスタンダード (規範をまとめたもの)

メルマガ再録 (2007年3月12日) 第37号


黄金律とも言います。リッツカールトンホテルのクレドを研究サンプルとして、モットー、従業員への約束、サービスの3ステップ、ベーシック(行動指針)などについて考察しています。

         < ゴールドスタンダード >

1.はじめに

 「ゴールドスタンダード」って余り聞かない言葉ですが、経営理念、サ
ロンコンセプト、行動指針などの言葉はよく使いますね。
 つまり、そういった会社の方向性を示す心のより所となる規範をまとめ
たものをゴールドスタンダード(黄金律)と言います。
 この言葉が有名になったのはたぶん、リッツカールトンホテル(以下リ
ッツ)が取り上げられる様になってからではないでしょうか?
 リッツでは次の5つを合わせて、ゴールドスタンダードと言っています。
  (A)クレド
  (B)モットー
  (C)従業員への約束
  (D)サービスの3ステップ
  (E)ベーシック(行動指針)
 今回は、これらの内容を深堀りすることにより、あなたのサロンのゴー
ルドスタンダードを作るヒントになれば幸いです。

2.(A)クレド

 これは、いわゆる信条と言われるものです。
 自分たちは何を大切にして経営するのかを明確にしたものです。
 経営理念も信条です。
 リッツのクレドを抜粋すると次の様になります。
 「心のこもったおもてなし。快適さの提供」
 「最高のパーソナルサービスと最高の施設の提供」
 「願望やニーズの先読み」などです。
 では、サロンではどんなクレドになるか、私なりに考えてみました。
(1)サロンのお客様に対し、最新の技術と、心からのサービスと、期待
   を超える満足を提供することを大切な使命と心得ています。
(2)お客様に、個性・時代性・再現性を重視したヘアスタイルを楽しん
   で頂くために、最高の美容技術と、おもてなしと、快適な空間を提
   供することを約束します。
(3)当サロンでお客様が手に入れられるものは、お気に入りのヘアスタ
   イルと、居心地のよい雰囲気と、優しさ溢れるサービスの心です。
 どうですか? かなりいけてるでしょう?
 リッツの原文を吟味すると、本当によく考えられているなあと感心しま
す。皆さんも、一度しっかり研究してみて下さい。

3.(B)モットー

 リッツのモットーは、クレドを方位磁石として進んでいく私どもは何者
かということについて書いています。
 「私たちは紳士・淑女をおもてなしする紳士・淑女です」
 このモットーはお客様と従業員の関係を表します。同時に従業員同士も
お互いを紳士・淑女としておもてなししようという意味も含まれています。
 この様に、モットーとは最も大切していることを合言葉にしたものです。
 サロンで考えてみると、こんな感じでしょう。
 「私達は、ヘアスタイル作りを楽しみに来られるお客様に向かい合うサ
ロンの仲間です。お互いを信じ合い、許し合い、認め合う仲間です。」

4.(C)従業員への約束

 従業員についてリッツがどのような考え方をしているかを具体化したの
が「従業員への約束」です。
 どこも削れないので、リッツのものを全文を紹介します。
 「リッツカールトンでは、お客様へお約束したサービスを提供する上で
紳士・淑女こそがもっとも大切な資源です。」
 「信頼・誠実・尊敬・高潔・決意を原則とし、私たちは、個人と会社の
ためになるよう持てる才能を育成し、最大限に伸ばします。」
 「多様性を尊重し、充実した生活を深め、個人のこころざしを実現し、
リッツカールトン・ミスティーク(神秘性)を高める・・・リッツカール
トンは、このような職場環境をはぐくみます。」
 以上、3つの文章から成り立っています。
 一番大事なものは、それを提供する人であることを明確に伝えています。
 つまり、個人の成功が会社の成功に結びつくということです。
 以前、リッツ関係のセミナーで、ある人が支配人に質問しました。「C
S(顧客満足)とES(従業員満足)はどちらが優先ですか?」
 支配人はきっぱり「ESです。」と答えられました。
 なかなか、言えないんですよね。このセリフ。
 これをサロンに置き換えてみました。
 「当サロンでは、お客様へお約束した技術・サービス・満足感を提供す
る上で、スタッフ(仕事仲間)こそがもっとも大切な資源です。」
 「誠心誠意・有言実行・敬意・優しさを原則とし、サロンとして、個人
とサロンのためになるよう本人の持てる才能を引き出し・育成し、最大限
に伸ばすことを約束します。」
 「個人の時間・生活を尊重し、個人の目標をサポートします。それがお
客様へのホスピタリティアップにつながることを信じ、サロンの品格を向
上させる要素として取り組む職場環境をはぐくみます。」
 こんな感じでいいのではないでしょうか。
 美容業界は、昔は徒弟制度的な感じがあったので、従業員に優しくない
という風潮がありました。
 しかし、最近では美容師もサラリーマン化してきており、良いか悪いか
は別にして、ドライになってきています。
 そんな中で、従業員への約束を明文化することは非常に勇気のいること
です。
 しかし、勇気を持って行えば、必ず良い答えが返って来ます。
 「投げたものは返って来る」を信じ、チャレンジしてみて下さい。

5.(D)サービスの3ステップ

 サービスの基本となる3つの要素を言い表したものです。
 リッツでは次の様に言っています。
 「1.あたたかい、心からのごあいさつを。お客様をお名前でお呼びす
るよう心掛けます。」
 「2.お客様のニーズを先読みし、おこたえします」
 「3.感じのよいお見送りを。さようならのごあいさつは心をこめて。
できるだけお客様のお名前をそえるよう心がけます。」
 以上の3つです。
 これは、このままつかえるでしょうからサロン用に言い換えることもな
いですね。
 要するに、サービスより一段上のホスピタリティを発揮する上において、
何を大切にするべきかを明確に指示することです。

6.(E)ベーシック(行動指針)

 ベーシックとは行動指針のことで、前述の「クレド、モットー、従業員
への約束、サービスの3ステップ」において、どのように行動すればそれ
が実行・発揮出来て、継続遵守出来るのかを明文化したものです。
 リッツでは20ヶ条からなる行動の指針を示しています。
 以下、要約して掲載します。
(1)クレドは基本信念
(2)モットー掲げ、品位を保つこと
(3)サービスの3ステップで、ロイヤルティ<*1>を高める
   (*1)忠誠心。企業ブランドに対して顧客が抱く意識のこと。
(4)従業員への約束の尊重
(5)トレーニングは毎年再認定
(6)カンパニー目標のサポート
(7)自分関係のプランニングに関わる権利を有す
(8)問題点に注意を払う
(9)チームワークとラテラルサービス<*2>の実践環境を作る役目
   <*2>部門を越えた支援のこと。
(10)エンパワーメント<*3>。ニーズへの対応で、持ち場を離れて
    でも解決する
    <*3>権限委譲。自分で判断し行動する力が与えられている。
(11)妥協のない清潔さを保つ
(12)最高のパーソナルサービスのため、お好みを記録。
(13)お客様を1人として失わない。苦情は自分のものとして記録。
(14)フロアーはステージ。目を見て応対。従業員同士の言葉づかい。
(15)外でもホテルの大使としての意識。肯定的な話し方。
(16)案内はその場所までご誘導。
(17)電話応対。3回以内。笑顔で。名前を呼ぶ。ボイスメールスタン
    ダード<*4>を守る。
    <*4>ボイスメールの取り扱い標準使用方法のこと。
(18)身だしなみについて。プロフェッショナルイメージで。
(19)安全第一。非常時の対応認識。
(20)ホテルの資産を守る。エネルギー節約。環境保全。
 以上が内容の抜粋です。
 この20の項目に、すべきことが集約されています。
 上記は、ホテルならではの内容もありますが、ほとんどサロンでも共通
する内容なので、これらを参考に、自店バージョンを作って下さい。
 細かい資料が欲しい場合は、メール下さい。

7.私が指導している内容

 私なりのゴールドスタンダードは、リッツとはかなり趣を異にしていて、
簡易版になっています。
 まず、経営理念を書きます。
 そして、それを言い表すキーワードを考えます。
 なぜなら、経営理念の文章は長くて覚えられないからです。
 だから、一言に集約し、覚えやすくするのにキーワードにするわけです。
 そして、そのキーワードを行動指針などを加えながら再度細かく説明す
ることによって方向性を示します。
 このとき重要なのは、言葉の定義をしっかりすることです。
 一つ一つの単語を吟味して、その意味する部分をしっかり説明し、言葉
と内容の価値観を共有することが大切です。

8.コアとフレーム的発想

 ビジョンがコアでミッションがフレームという言い方も出来るでしょう。
 ビジョンとは、一言でいうと『その企業が到達しようとする将来像を具
体的に言葉で表現したもの』ということで、核心です。
 ミッションとは、ビジョンを具現化するための手段で、職業的・社会的
使命感です。その組織、個人の存在意義ということも言えるでしょう。
 本来、企業や組織はミッションを果たすための存在であって、必ずしも
利益追求が目的そのものではありません。売上や利益はミッションの果た
し度合いを表すものだということも言えます。
 そういう意味において、ゴールドスタンダードを決めることで、本来の
経営の方向と行動をリンクさせることが出来るということですね。

9.最後に

 「ゴールドスタンダード」、どうでしたか?
 道案内もない山道で、方位磁石が狂っていると迷子になるのは間違いな
いですね。
 しかし、現状としてそんなサロンを多く見掛けます。
 そんなサロンオーナーは自分だけの事ではなく、スタッフまでも巻き込
んで、遭難してしまうかも知れないのです。
 それだけは避けなければなりません。
 今一度ゴールドスタンダードを見直して、しっかりしたサロン経営を目
指してください。

10.次回案内

 では、次回の案内です。
 次回のテーマは「信号理論」です。
 これは、長年温めてきたテーマですが、まだ本格的に考えたことはない
ので、この機会に考察を加えてみたいと思います。
 「信号理論って、なんのことについてなのか、さっぱり分からない!」
という声が飛んできそうですが、まあ、お楽しみに!

 では、次回もまたお役に立てるメルマガを目指して作文しますので、応
援よろしくお願いします。
                 ではまた次回もお会いしましょう!

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