| 実践技術
ファシリテーション (効率的会議進行技術)
メルマガ再録 (2006年2月27日 第13号)
ファシリテーションとは、その場で与えられた課題について衆知を集め、最高の意見を採用し、解決策を考えるための効率的会議進行技術です。
< ファシリテーション >
1.本題に入る前に
私は議事録主義者です。
そんな主義あったっけ?・・・ありません。
私が勝手に言っているだけです。
私は、コンサルタントになる前から議事録を書いています。
コンサルタントになってからの議事録の数は、月間15回×15年分=2700回、それまでも含めると余裕で3000回は超えています。
平均A4で2ページとして、6000ページは書いています。
それだけ、会議に出席し、会議進行にかかわってきました。
その中で培ったノウハウを今回は公開します。
2.ファシリテーションとは?
あるホームページに上手くまとまった文章があったので引用させてもらいます。
<ここから>
ファシリテーション(facilitation)
グループ活動が円滑に行われるように、中立的な立場から支援を行うこと。またはそのための技術のこと。協働促進と訳する向きもある。
facilitationという語は、(物事を)容易にする、円滑にする、促進することを意味する。
一般にファシリテーション・スキルは会議のための技法ととらえられることが多く、狭義には「ミーティングが円滑に運営されるように働きかけること」とされる。また、「ビジネス・ファシリテーション」「プロジェクト・ファシリテーション」といった用法もあり、この場合は「組織やチームが目標を達成するために、創造や変革、問題解決、合意形成、学習などを体系的に支援し、プロセスを促進させること」となる。
ファシリテーションの基本スキルとしては、次のものが挙げられる。
<1>質問、発言、要約
<2>話を聴く・話を引き出す
<3>記録
<4>グループ調整
<5>コンセンサス、意思決定プロセス
<ここまで>
大体お分かり頂けましたでしょうか?
では、どの様にして答えを出していくのか、そこが知りたいですよね。
ということで、「谷口式ファシリテーション」の本題に入りましょう。
3.ファシリテーション・メソッド概要
基本的には5W1H、PDCA、KJ法、NM法といった思考法と同じ様なステップですが、私のストーリーはもっと実践的です。
全体の流れは以下の通りです。
ステップ1・・課題のキーワードを定義する。(キーワード)
ステップ2・・大項目をリストアップする。(シチュエーション)
ステップ3・・小項目をリストアップする。(アイテム)
ステップ4・・理想型を掲げる。(ディフィニション)
ステップ5・・現状の問題点をアナログ表現で書き出す。(プロブレム)
ステップ6・・アナログ表現で改善策を考える。(アイデア)
ステップ7・・A→D変換で実行プランを立てる。(アクションプラン)
ステップ8・・フォロープランを立てる。(フォロープラン)
では次に、それぞれの内容を説明します。
4.ファシリテーション・メソッド詳細
ステップ1「課題のキーワードを定義する」
・大体の会議において、まずこれが出来ていません。
・課題(テーマ)に対する合意形成が出来ていないから意見が出ないのです
・今、「チームワークを良くしたい」というテーマがあったとします。
・この時に、いきなり「チームワークを良くするために意見はありますか?」とやりがちです。
・これでは沈黙です。意見は出ません。
・次の様に進めます。
・「チームワークを向上させることがサロンの成長につながると思います。今日のミーティングで、その取り組みを具体化したいと思います。では、自分が考えるチームワークが取れている状態とはどんな状況だと思いますか? 例えば、楽しいとか、信じ合えているとか、気持ちが落ち着くとか、、、、」
・意見「○○○が良いです。」「△△△が良いです。」
・そうですね。では、これらの意見の主旨をまとめると「□□□」ということになるので、今回は「お
互い信頼感を持って支えあえるチームワーク作り」というキーワードに決めましょう
・これで、取り組みの背景と、どんなテーマかが明確になったので会議への参加意欲が高まります。
・このステップが、事前に出来ていないと、ミーティングは必ず暗礁に乗り上げて座礁してしまいます。だからこの前置きの部分が絶対重要なわけです。
・人間誰しも、「何で?」ということにこだわります。
・理由が分からないと前進出来ないからです。
・させられるのは嫌です。したいのです。受身でなく、能動的でありたいのです。
・そういう心理状態をよく考え、「君達の意見を聞かせて欲しい。それがサロンを良くするんだ!」という前提条件・雰囲気を作らないと、スタッフは心を開かないのです。
・ここまでくると人間学・心理学の世界ですが、それが忘れられて、「さあ、意見を出せ!」では意見が出ないのは当然です。
・メンバーを信じ、皆で作っていくというこちらの気持ちが相手に伝わらないと意見は出ないと言うことを肝に銘じてください。
・だからリーダー次第で会議は、沈黙したり踊ったりするのです。
・この項目に力を注ぐことにより、会議は動き出すのです。
ステップ2「大項目をリストアップする」
・次は大項目(主な場面)の分析リストアップです。
・チームワークに関連する大きな項目を皆で意見交換しながらリストアップします。
・「コミュニケーション」「心構え」「仕事」「志の共有」などの意見が出ます。
・この時一緒に小項目も出ますが、より上位の項目を大項目とします。
・特性要因図、マインドMAPなどを利用するとより分かり易いですね。
・サロンの場面分析では、MOT(Moment Of Truth、真実の瞬間)という手法を使ったりすることがありますが、これはまた別の機会に紹介しましょう。
ステップ3「小項目をリストアップする」
・次は小項目の分析リストアップです。
・大項目の中での細かい項目を考えます。
・「コミュニケーション」=「意思の疎通」「報告」連絡」「相談」等、「仕事」=「確認」「フォロー&アドバイス」「責任ある行動」等がリストされるでしょう。
・意見が出尽くしたと思ったら適当に止めて下さい。
・いつまでもこの辺りで時間を使っていると、時間内に検討が終わらないので、議事進行が必要です。
ステップ4「理想型を掲げる」
・小項目のリストアップが一応終了したら、次は理想型を考えます。
・これは、小項目に対する定義・目的・希望というここと同じです。
・大項目「コミュニケーション」、小項目「意思の疎通」、理想型「自分の意見や想いを伝え、相手の意思も確認できる場が定期的にあればよい」ということになります。
・ここで十分意見を交換し、相手・メンバーが何を考えているかを把握します。
・一人の意見に偏(かたよ)るのではなく、全員に意見を求め、相手の意見を尊重して、聞き届けてあげることが大切です。
・通常は、このステップ4を飛ばして問題点に行きやすいのですが、それはいけません。
・このステップで理想型を話し合うことにより、方向性・ベクトルをまとめて行くという重要な要素があるので、欠かせないステップです。
ステップ5「現状の問題点をアナログ表現で書き出す」
・理想型が出来れば、現状は分かり易いですね。
・しかし、個人個人が見ているポイントは違う可能性があります。
・「えっ!そんなところ気をしてたの!」「それは気がつかなかったなぁ!」という意見は貴重です。
・この項目では「~~が出来ていない。」という表現方法を使います。
・アナログ表現の良さを生かして、さらに否定形を使うことで、より問題点が強調されます。
・「意思の疎通」の場合の問題点は「今、志、夢が語り合える場が無い」ということになります。
・アナログ/デジタル表現、A→D変換については、本メルマガ第10号を参照して下さい。
ステップ6「アナログ表現で改善策を考える」
・次は、ステップ5で検討された問題点の改善策を考えます。
・これは、考え方によってはめっちゃ簡単です。
・例としては、「今、志、夢が語り合える場が無い」という問題ですので、肯定形にひっくり返すだけです。
・つまり「今、志、夢が語り合える場がある(あればよい)。」です。
・「なんだ!」と思われるでしょうが、ここがミソです。
・こうすることによって、問題が課題になります。
・問題は嫌だが、課題は楽しいのです。前向きなテーマだからです。
・「夢が語り合える場を作ろう! それにはどうするか?」を検討することになります。
・ここでは、ブレーンストーミングがいいですね。
・否定なしで意見交換して、楽しくアイデア出しします。
・その中から、すぐに使えるもの、時間の掛かるもの、費用の掛かるもの、将来したいものなどに区分して、評価します。
・当面すぐ出来ることからリストアップします。
・この場面では、まだアナログ表現なので、アクションプランとしての答えを急ぐ必要はありません。
・「意思の疎通」の改善アイデア例は、「サロン外で語り合える場を作る」ということになります。
ステップ7「A→D変換で実行プランを立てる」
・さて、次はいよいよ実行プランに入ります。
・ステップ6で出た改善アイデアをA→D変換して、アクションプランに落とします。
・「意思の疎通」の実行プラン例は、「定期親睦会をスタートさせる」ということになります。
・この辺りに来ると、意見はスムースに出るようになります。
・そのプランの実行責任者、実行期限を決めます。
・ここでは、勢い余って、無理な計画を立てがちなので、他項目とのバランスを見ながら日程調整します。
ステップ8「フォロープランを立てる」
・最後に、フォロープランを立てます。
・これが実行の歯止めとなるので、重要な要素です。
・つまり、ステップ7で実行プランは立てたものの、実行されていなかったというケースが多いものです。
・これでは何のために検討したか分からないし、こんなことが度重なれば「会議は無用だ!」という声がでて、逆に嫌なムードを作ってしまいます。
・会議で決めたことの実行率を向上させるためには、フォロープランが大切です。
・通常のファシリテーションでは、この辺りがあいまいになりがちですがここに力を入れないといけません。
・実行結果なくして、会議は意味がありません。
・ということで、実行責任者に対して「出来ますか?」「出来ましたか?」のチェックを入れる役目がフォロー責任者です。
・これは、下のスタッフでも構いません。
・「改善項目をしっかり実行する」「何事も、決めたことは絶対やる」と言う風土、習慣を根付かせることにより『伝統』を作ります。
・これがサロンの信頼と成長の基盤になります。
・以上が、谷口式ファシリテーションの8ステップです。
・理解できましたか?
5.最後に
どうでしたか?
リッツカールトンでは、「従業員への約束」と言うクレドがあります。
3つの項目ですが、従業員(スタッフ)に対して会社(サロン)が約束ごとを明記しているのです。
お客様へのことは一生懸命ですが、まずスタッフを大切にする風土を作ることが優先されるべきです。
その意味からも会議で決めたことは必ず実行するということは不可欠な要素であると思います。
またそのことで次の会議の意欲をかき立て、素晴らしいサロン作りが展開されることになるでしょう。
ファシリテーションは、そんなことまで含んだ重要な要素・ノウハウです。
是非是非、勉強されることを願っています。
今回の内容で、ハッと気が付かれた方は、メールでも下さい。
そろそろOFF会でも開催して、ノウハウ交換したいですね。
6.次回案内
では、次回の案内です。
次回は、「ワークショップ(自己改革→気付き)」です。
ファシリテーション技術を使いながら、ワークショップをいかに展開し、気付きを与えるかについて考察します。
では、お楽しみに!
ではまた次回お会いしましょう!