| 実践技術
ドキュメント技術 (記録のテクニック)
メルマガ再録 (2006年3月27日) 第15号
しっかり記録することで検討した内容が明確になり、それを再確認することで実行確率が向上します。記録で足元を固め、そこから前進することで、次の展開が見えてきます。
< ドキュメント技術 >
1.ドキュメント技術とは?
ドキュメント(Document)とは、文書、記録、証拠等の意味です。ドキュメンタリーとは、証拠書類、事実の記録等のことです。
「人間は忘れる動物である」「思い出す工夫をしておけば思い出せる」というのが私の定義です。
そうすると、何か話し合って忘れてならないことは、何かに書き留めておく必要が生じます。
私は、忘れ防止の対策として「記録を作成する」ことにこだわってきました。
私の記憶が正しければ、人間は見たものは全て覚えているんだそうです。それは眠りかけの時のレム睡眠中に目玉がグルグル回り、脳に書き込みされるというものです。(ほんまかな?)
忘れると言うことは、覚えてないのではなく、思い出せないのです。つまり、その書き込みされた記憶を呼び出すことが出来ないということです。
コンピュータは完璧に出来ますが、人間には出来ません。
忘れて支障のないことは忘れていいのですが、仕事や思い出などでどうしても忘れてはならない場合はどうするか?広く他人に知らせたい、後進に何かを伝えたい、こんなニーズにもドキュメントは必要です。
文書であれ、写真であれ、映像であれ、何かの媒体にアウトプットして残す作業が必要です。
では、ドキュメントをいかにして残し、それを利用するかについて今回は考えてみたいと思います。
ドキュメントには「同一品質で、残す、伝える、再現できる」と機能があるということを念頭において、考察開始です。
2.事前準備
まず、そのドキュメントをどの様に使うのか(アウトプット)を明確にします。
自分だけのものなのか、公的な記録なのか?
急ぐ必要があるのか、ゆっくりでいいのか?
精度は細かく必要か? ラフでいいのか?
誰に配布するのか?
どの様な手段(紙、メール、FAX等)で相手に知らせるのか?
渡す媒体は、文書か、写真か、映像か?
などによって、ドキュメントの作り方が変わってきます。
つまり、まずそのあたりをきっちり押さえた上でトキュメント形式を決めておかないと、後でえらい目に合いますので、要注意です。
準備物としては、筆記道具、デジカメ、ヴォイスレコーダー、ビデオカメラなどを必要に応じて使い分けます。
ちなみに、私は臨場感の中で聞こえてくることを重視しているので、ヴォイスレコーダーを使いません。だから私のレポートは、谷口フィルターが掛かっているものになりますが、それが返って喜ばれたりしています。
2.メモの取り方
個人的なメモを細かく取っている内に、徐々に慣れて公的な議事録も取れるようになります。
メモって、面倒くさいですが、これがドキュメントの源泉です。
まず、日常のメモの取り方です。
やっぱり日記でしょう。毎日少しづつでも文字を書く習慣が必要ですね。
次に、ブログ日記などで、発信することもいいですね。コメントが返ってきたりすると嬉しいですよ。
ちょっとした思いつきをメモに残して、後でそれを整理することもしてみるといいですね。
私は、手帳の後半部分のメモ欄ページを利用してネタ帳にしています。急に挨拶をさせられる時などに非常に役に立ちますよ。
もっとベーシックは、とにかく忘れない様にメモしまくることですね。そして、それをいつも目が行く場所に貼り付け、忘れ防止にすることです。
そんな細かいメモ術が、実は、記録する習慣に発展します。それが出来るようになると、会議やレポートのメモを取ることもたやすくなってくるのです。
では、会議メモの取り方のポイントを説明しましょう。
決して初めから完璧に多くを書こうとしないことです。完璧に書こうとすると、返って肝心のことを書き漏らしたり、間違ったりすることになるので、ゆったり構えることです。
最初は、テーマと結論さえあれば、まずは合格です。
しかし、書いているとだんだんそれだけでは物足りなくなります。テーマから結論・結果に至る経過が欲しくなります。
その段階に来たら、徐々に内容・プロセスを記録します。
しかし、いい加減な会議などでは、話ばかりで結論がないということが多いですよね。こういう会議は議事録担当者泣かせですね。
思い切って発言し、結論は何ですか?と、聞いてみましょう。
意外に目からウロコがポロリだったりして・・・
先日直接聞いたお話ですが、臥龍(角田)先生は、セミナーで聞いて使えると思った部分はその場で携帯メールに書き込み、すぐ自分のパソコンにメールされるそうです。
そうすると、それを少し加工するだけでしっかりした文章に仕上げられるので便利ですよと言っておられました。こんな方法でメルマガのネタを仕込んでおられるのは流石ですね。
3.議事録について
議事録は時系列を重視します。だから、全体の進行把握が必須です。
会議の開始・終了時刻、出席者・欠席者、遅刻者・中退者・中座者、ことによっては、テーマ単位の進行時間記録等々が、自然にメモできなければなりません。
初めのうちは、これらの事をメモし忘れて困ることがあります。それを防ぐために、議事録者としての私の経験ですが、「何かあったら時計を見る」ことです。
なぜかと言うと、「思い出す工夫をしておけば思い出せる」ということを最初の項であったのを思い出して下さい。
つまり、こうです。ちらっとでも時計を見ておくと、この時の休憩は何時から何時までだったかなあと悩んでも、静かに目を閉じて思い起こすと頭の中に時計を見たシーンが蘇ってきて、文字盤の何時何分が見えてきます。本当ですよ。やってみて下さい。私の経験ですから。
議事録は、テーマ主体の場合と、意見主体の場合があります。
テーマ主体型では、議事録は簡単です。基本はテーマと結論です。さらにプロセスがあれば申し分ありません。
しかし、意見主体型は、結論がない場合があります。その時は意見の内容と流れをメモしていかないと、記録になりません。
このケースにおいては、発言者の名前とポイントをメモしていきます。出来るだけ私情を入れずに、ストレートに簡略化して書きます。
分からないところがあれば、会議の後、その部分を本人に聞きに行って聞き取れなかったので教えて下さいと言えば、気持ちよく答えて頂けるので積極的に質問しましょう。
また、ホワイトボードの文字はデジカメで記録して下さい。
ボード文字は、その場の臨場感を端的に表せますので、できる限り議事録に掲載するようにしましょう。
テーマが前後したり、何回も同じテーマが出てくる場合は、1つの項目にまとめます。これは時系列を無視したことになりますが、出席者もその部分については分かっているため問題はありません。
パワーポイントを使った場合の報告は、次の項で説明します。
4.講演レポートについて
レポートは、議事録と違い、出席者以外の方にも分かって頂かなければならないという使命を持っています。この点が大きく違うということの認識をしっかり持っていないとよいレポートは書けません。
その講演を知らない人に分かってもらうには、その講内容より先に、その講演会に至る背景、経過が説明されていないと解釈しにくいということです。そういうコメントがレポートのトップにあって、講師のプロフィールなどがあれば言うことはないでしょう。
そして、講演会場の外観やエントランス、受付などの風景が写真であればよりその講習会の感じがイメージしやすく、読み手の側に立ったレポートになり得るわけです。このあたりが親切の見せ所です。
そして講演記録です。
講師先生の講演スタイルにより、主に「口頭重視」「配布資料重視」「プロジェクター重視」の3つのパターンがあります。
「口頭重視」の場合は、ひたすらメモです。たまにレポート用に講師先生や受講者の状況をデジカメします。出来るだけ自分で撮ります。イメージが流れているので、感じが統一されます。
書ききれない場合は、キーワードだけ書きます。そして、次のテーマに移行して内容を書きます。少し間があれば、さかのぼってさっきのキーワードにコメントを補完します。キーワードさえあれば、ほぼ内容は覚えているので、まとめる時に思い起こして書き足します。これは訓練で出来る様になります。
レポートをまとめる場合は、事前状況写真を配置し、講演記録を重視しつつ、時系列を意識して講習中の先生の写真や風景を配置してレポートを仕上げます。
「配布資料重視」の場合は、なかなか難しいです。配布資料があるのでこれに頼りそうになるのですが、基本的には資料はないものとしてメモを取ります。なぜかというと、資料があるのでメモは簡単にと安易に構えていると、資料以外の貴重な例え話などを聞き逃してしまうからです。
この講演レポートをまとめる場合は、配布資料が公開OKの場合においては、講演記録の随所に、配布資料写真を挿入します。
なぜ配布資料を写真にしなければならないかと言うと、そのレポート内に写真で取り込んでおくと、レポートの一部として記録されるので紛失の心配もなく、資料だけが一人歩きすると言うこともないからです。
次に「プロジェクター重視」の場合です。記録の取り方は一緒です。
おもにパワーポイントを使用しての説明になると思いますが、注意すべきは、そのデータが公開可能かどうかです。
可能な場合は、そのデータが講師先生から頂けるかどうかです。
頂くことが出来る場合は、それをレポートの随所に効果的に貼り付ければ最高です。撮影したスクリーン写真を使用する場合は写真の精度が問題になります。
この場合、良く練習しておかないと、薄暗い中での撮影はなかなか難しいものですので、事前練習が必要です。フラッシュをONするとボヤっとなるし、OFFのままだと暗いし、、、
このケースのレポートまとめは、データが多くなる傾向があるので、出来るだけ効果的なデータ(写真)を使用し、後は記録文でつなぐというスタイルが良いでしょう。
データ量としては、1MB以内に収めることにしましょう。
あまり大きいサイズのレホートを作ってしまうと相手先のメールBOXが一杯ですとメッセージが返ってくる場合があるので気を付けましょう。
5.見学会レポートについて
見学会のレポートは、写真重視がよいでしょう。
出来れば準備段階からドキュメントを残し、最終まで満遍なく記録することがキモです。
見学先の方の講話はもちろんのこと、移動途中での良い話や、会話のメモも有効的です。
全体がストーリーとして流れていることが大切です。
写真は、全員の集合写真は必ず入れます。そして、懇親会などではカメラ視線でのグループ写真を多く取ると、良い雰囲気のものが出来上がります。
写真を編集する時に、吹出しをつけたりするとより一層効果的です。
6.ドキュメント活用術
作成した議事録は、その会議の出席者に配布します。部外者には配布できません。取り扱いは要注意です。特に幹部会クラス以上の議事録は、未公開の機密情報が含まれている可能性があるので、十分気を付けましょう。
逆に、公開すべきはどんどん公開し、情報共有に心がけます。
情報は血液です。どんどんフレッシュな情報を提供し活性化しましょう。
レポート類は、内々のものと発信可能なものに区分されます。
内々のみに配布すべきものは、その関係者にきっちり届くようにします。
一般への発信可能なものは、コピーやメールなどを利用して、どんどん配布しましょう。喜んで頂ける事、請け合いです。
7.最後に
今回は、今までと一味違う内容だと思いますが、どうでしたか?
私は昔、議事録を書いて親会社に送ったところ、そこの上司の方が私の議事録をチェックされて、真っ赤っかになって校正された議事録が送り返されてきました。
「なんでやねん!」とメチャクチャ腹が立ちました。
しかし、その時学びました。「注意してもらわないと分からないことがある。」貴重な体験でした。
その時依頼、俄然ドキュメントに本気に取り組むことになりました。
私は長年の経験から「ドキュメントを制する者は、その場を制す」という信念を持っています。
なぜかというと、ドキュメントを作っていると、やがてそこに情報が集中するようになってきます。
「あれはどうなった?」「これお願いします!」なんてなことが当たり前になってきて、やがて全ての機能がそこに集約されてきます。
そうなると、面白いことがおきます。
そうです。
結果的に。みんなの輪の中心にいる様になるのです。
これが今の私のポジションになっています。
是非、皆さんも頑張って、ドキュメンターになって下さい。
出来たドキュメントを送って下さい。楽しみにしています。
8.次回案内
では、次回の案内です。
次回は、「情報整理とファイリング」です。
これで困っている人が多いですね。
すっきりとさせますよ。
では、次回もお楽しみに!