| 考え方の技術
エンパワーメント (権限委譲)
メルマガ再録 (2006年7月10日) 第21号
責任と自覚の上において権限を相手に与えることです。権限と環境を得た本人は持っているパワーを全力で発揮するようになり、組織はますます活性化します。
< エンパワーメント(権限委譲) >
1.エンパワーメントとは?
「エンパワーメントとは人にパワーを与えることではありません。人には本来、知識や意欲と言う形のみなぎるパワーが備わっていて、最高の仕事をしようとするものなのです。エンパワーメントとは、このパワーを引き出すことです。」―――『1分間エンパワーメント』より
辞書でエンパワー(empower)を引くと、「・・・に権限を与える、権力を委任する、~~に~~する能力を与える」となっています。
つまり、権限を持たせることにより、もともと人間が持っている能力をより発揮できるように環境を作ることがエンパワーメントに求められる基本要素なのですね。
組織において、一人一人のパワーを活用・発揮させようとするならば、このエンパワーメントという考え方は必須の項目です。
自主活性型サロン作りも、コーチングも、メンタリングマネジメントも同じ方向を向いています。
心の時代の経営が問われている今、大切なことは個々の特性を最大限に生かした人材の活用と組織作りです。
それにマッチしたこのエンパワーメントというノウハウを是非習得し、お役に立てて頂きたいと思います。
2.問題点
では、いきなりエンパワーメントするぞって言ってそれを始めるとどうなるでしょう?
見え見えですね。大混乱でしょうね。
何も整備できていない状態で、自分には権限が与えられていると思い込んでいるスタッフが勝手に何かを購入したり、お客様のためになるということで勝手なメニューを作ったりということをしだすと、どうなるでしょう? それは単に勝手な行動であり、サロンとしてはバラバラになってしまうことは見え見えですね。
ということは、エンパワーメントをうまく実現させるための準備をしっかりして、それを理解させた上で、段階的に浸透させていく必要があるということです。
3.全体像
導入~定着のための全体像を把握してみましょう。
ステップ1 エンパワーメントの取り組みを研究する
ステップ2 取り組み宣言をする
ステップ3 人財を育成する
ステップ4 情報を開示する(共有する)
ステップ5 職務分掌と権限を整理する
ステップ6 支援型組織を作る
ステップ7 フィードバックシステムを運用する
導入~定着のためには、この様なステップが必要と思われます。
では個々のステップを詳しく見ていきましょう。
4.各ステップの詳細
ステップ1「エンパワーメントの取り組みを研究する」
全員の理解がないとエンパワーメントは上手く行くはずはありません。
まず、幹部またはプロジェクトをつくり、「エンパワーメントとは何か、どうすれば上手く行くか」等の勉強を行い、スムーズに行く方法を研究することから始めなければなりません。
書籍や実際に上手く行っている事例を研究し、自店なりの導入方法を導き出します。
ステップ2「取り組み宣言をする」
全員の前で、エンパワーメントについて取り組むことを宣言します。
「宣言」、これが非常に重要な要素です。
上司の熱い言葉が人を動かします。絶対に成功させるという火の様な想いをぶつけます。
ただし、この時点ではまだどうしたら良いのか分からないので、アウトラインと方向性を説明します。
「全体としてはどうするのか」「それをするとどうなるのか」「何がメリットで何がデメリットなのか」「どこに問題点が考えられるのか」「各自は何をテーマとすれば良いのか」などについて予め用意しておくことが必要です。
スタッフには、信頼関係の上に成り立った経営システムを構築していく想いをきっちり把握してもらうことが大切です。
ステップ3「人財を育成する」
エンパワーメントを実現するために人財の育成は欠かせません。
理解力、ホスピタリティマインド、優しさ、アイデア、誠実さ、ウイット、気転力、応用力、注意力、機敏性、楽しむ力、協調性、チームワーク力、常識、行動力・・・この様な項目に対するパワーと想いのレベルが相当高くないと、エンパワーメントの意味が理解できません。
また理解出来ても、それが行動に移せません。
だから、次のステップ以降の具体化のケースにおいても、併行してこの人財育成のループは回し続けなければなりません。
人が全ての資源の源であると考えた場合、育成は永遠のテーマです。
人財教育を介し、信頼関係の糸をどんどん太く、しっかりとしたものに作り上げていくことがすなわち、エンパワーメントの基盤作りになるわけで、これは次のステップでお話しする、情報開示などについて大変重要な要素となってきます。
ステップ4「情報を開示する(共有する)」
いよいよ、本題です。
情報を開示するという意味は、新人スタッフまで全員に、経営内容を含む全ての情報を知らせるということです。
ここで言う情報とは、今後の方針・戦略、人事、給与、経理状況まで、今まで社内秘としてきた情報の全てを言います。当然、TOP会の情報も、末端のスタッフが知っているという状況になります。
えっ?とおどろくでしょう!
そうなんです。そこまで徹底的に公開するのです。
一つ間違えば、えらいことになります。
会社の情報が外にもれたら困るという懸念がある内は踏み切れません。
だから、ステップ3の人財を育成するということが優先になってくるわけで、双方の信頼関係なくしてこのシステムは成立しないのです。
しかし、この情報開示がきっちり出来て、全てのことを共通認識しているスタッフは、それこそ全員がオーナー感覚になりますね。
そこが狙いなわけです。
現実的には、100歩譲って、TOPと新人では理解の深さが違うので、そのレベルに合った情報を最大限公開するという姿勢があれば、私はOKだと思います。
この項目でもっとも重要なのは、情報開示による信頼関係の構築ですので、そこのところを良く理解して進めて下さい。
データ公開で信頼関係を構築するというストーリーですが、危険も伴いますが、いったんはまれば凄いパワーが出ることは予想が付きますよね。
ステップ5「職務分掌と権限を整理する」
次は、「自主管理領域の創設」です。
つまり各組織単位の仕事の領域を定め、領域内の仕事は信頼の上で「全て」任せてしまおうというものです。
仕事の領域(職務分掌ともいいます)を定める要素としては、事業の目的や価値観、組織の未来像、目標、役割、組織の構造とシステムなどがあります。
要するに、そのポジションで自分は何をすることが仕事なのかを明確に整理し、それが他部署との関連において整合性(調整)が取れたら、その部分についてのその仕事の権限はそこに任せるということです。
この整理が出来ていない状態でエンパワーメントをスタートさせると、大変な混乱を招きます。
他部署のスタッフからもお客様からも「勝手なことをして!」「それは越権行為(行き過ぎたこと)である」とクレームになります。
だから、先に自主管理領域を明確にし、それぞれが責任を持って自主管理できる内容を整理することがまず望まれるわけです。
ステップ6「支援型組織を作る」
従来のビジネスモデルは、正ピラミッド型の組織が普通でした。
これはお客様に対して、会社のTOPが責任をもって対応し、そこで発生する仕事を下のものがこなすというような感じの位置付けと仕事の割り振りになっていました。
この従来のシステムでは、スタッフはどうしても「やらされている感」がつきまとい、自発性が欠如する感じがありました。
しかし、近年、この正ピラミッド型の組織が逆転し、逆ピラミッド型、つまり上下が逆転したビジネスモデルが紹介されてから、一挙に世の中の組織に対する考え方がスタッフ重視の方向に流れ出しました。
では、この逆ピラミッド型システムについて少し説明します。
つまり、お客様に一番近いのは現場の人間である、上役はそれを支援する体制にあるのが望ましいと
いう考え方です。
こういう規範の逆転を世間ではパラダイムシフトと言います。
この流れが定着しつつある今日に置いては、スタッフ個々の対応が凄く重視されることになってきました。
お客様との接点であるスタッフが会社を代表している、スタッフは会社の顔だということになるのですから、スタッフに権限を与え、その範囲で出来ることは自由采配権を持たせるということが当然の様になってくるわけです。
お分かり頂けましたか?
つまり、従来の階層型組織を排除して、チーム型組織により店内を活性化するというのが、このステップのまとめです。
ステップ7「フィードバックシステムを運用する」
この様な考え方の実施と定着は、日本人にはなかなか難しいのではないかと思います。
従来、日本は階層を重んじる社会性があり、上の人間がバックアップに回るという発想はなかったのではないでしょうか?
だから、余計にこのシステムを定着させるには、発想の転換と、いろいろな微調整が必要になってきます。
実績を重ね、修正点をメンテしつつ、より良いシステムを作っていくというフィードバックの流れを作らないと、折角スタートしたシステムがすぐに悪循環に戻ってしまいます。
しかし、一旦天使のサイクルになると、これは加速度的にやる気モードのサロンが出来上がります。
ザ・リッツカールトンホテルやレストランCASITAに見られるエンパワーメントの究極は、ミスティーク(神秘性)まで行き着きます。
単にES(従業員満足)という形に終わるのではなく、本当にスタッフを信頼した経営を展開されることを望みたいと思います。
5.最後に
いかがでしたか?
自主活性型サロン作りのポイントはこのエンパワーメントを実現させるということにフォーカス(着目)してもらい、各自のサロンで取り組んでみられたらどうでしょう。
今回は、難しかったですか?
しかし、私の中では今回のメルマガは大変重要な要素を含んでいて、今後のサロン作りを示唆した内容になっているんではないかと自負しています。(自己満足?)
事例などありましたら、連絡下さい。
私の中でフィードバックを掛けて、より内容を濃くしていきたいと思いますのでよろしくです。
6.次回案内
では、次回の案内です。
次回は、「メンター(やる気にさせる人)」について考察します。
このテーマは、次回CKEN感動セミナーの講師/福島正伸先生がメンターなので、私も勉強して皆さんに少しでも事前にノウハウを提供できればいいなあとの思いで、このテーマを選びました。
皆様も、このテーマについて予習しておいて下さいね。
では、次回もお楽しみに!
ではまた次回お会いしましょう!