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コンピテンシー (行動特性分析手法)
メルマガ再録 (2006年9月25日) 第26号
ハイパフォーマー(高い業績をあげている人)の行動特性に学ぶということです。評価表を作成することで社員研修に使えるし、評価の場面、およびステップアップの教育にも使える素晴らしいツールです。
< コンピテンシー >
1.はじめに
コンピテンシーは、ハイパフォーマー(高い業績をあげている人)の行動特性に学ぶということです。
私のコンピテンシーとの出会いは、3年ほど前です。
伊藤豊先生の仕事を少し手伝うことになり、内容を聞いてみるとこのコンピテンシーのデータをまとめることでした。
私は、コンピテンシーの専門書を読んだことはありませんが、自分なりにも研究し、サロンでも実際に使用している経験もあるので、その例を挙げながら、活用方法について考えていきましょう。
2.コンピテンシーの概要
コンピテンシーを活用するには次の手順で進めます。
本来、インデックス、チェックシートはサロン固有のものがあることがベストですが、そこまで必要がないとか、すぐに実施したいという場面に置いては、われわれが持っているサロンの標準的な内容のものを使えば良いでしょう。
以下は、自店のコンピテンシーを作る場合の手順です。
一般のものを使う場合は、この(1)(2)(3)の手順は必要ありません。
(1)インデックス作り
(2)チェックシート作り
(3)評価用レーダーチャート作り
(4)360度アセスメント
(5)評価アドバイス
では順次上記の内容を説明していきます。
3.(1)インデックスの作り方
インデックスの作り方ですが、まずは全体の項目の設定から始めます。
自店において、アシスタントランクですべき項目から始まり、最終オーナーランクですべきことの項目、例えば「志」までの項目をリストアップを行います。
われわれが使用している項目の例ですが、25項目あります。
1.コミュニケーション 2.時間管理
3.積極性 4.仕事の自己完結
5.感性 6.サービス志向
7.他者との関係 8.技術熟練
9.結果への責任 10.自己啓発
11.チームワーク 12.人材育成
13.目標設定 14.人的ネットワーク
15.計画づくり 16.人間関係好転
17.柔軟性 18.リーダーシップ
19.問題解決 20.夢の共有
21.マネー 22.意思決定(勇気)
23.利より信 24.継承
25.志
この項目にこだわる必要はありませんが、全体を網羅(もうら)し、バランス良く位置されているので、この項目を参考にすることがベターではないでしょうか。
ということで、各サロンでは、この25項目を参照し、行動特性に付いては自店バージョンを作ってもらえればベストです。
4.(2)チェックシートの作り方
上記の各項目に付いて、レベル(ランク)別の行動特性内容を明確にする作業を行います。
この作業が一番時間の係るところですが、粘り強くやるしかありません。
行動特性は、通常(-1)から(+5)までの7ランクにパターン化/分類します。
-1=阻害的(害になる)
0=受動的(存在感なし)
1=能動的(マニュアル的)
2=積極的(知識的)
3=主体的(能力的)
4=創造的(内面的・精神的)
5=利他的(思想的)
良く出来る人、そうでない人をよく観察して、行動パターンを描き出します。
では、分かりやすい例を挙げてみましょう。「挨拶」のコンピテンシーの一例です。
-1=気付いているけど挨拶しない。不機嫌な感じである。
0=自らは挨拶しない。挨拶されたらする。
1=気持のこもらない挨拶は出来る。
2=自分の関わりのある人(お客様)には積極的に挨拶できる。
3=自ら先に店内で顔を合わせる人全てに挨拶できる。
4=挨拶から続けて会話を展開させることが出来る。
5=挨拶により周囲を元気付けて、活力を与えることが出来る。
この作り込みの作業をしている時が、実は一番勉強になります。
「こういうことをしているのはランク2でしょう」「嫌、1じゃないですか。だって、○○することのほうが上だから。」「そうか!」という具合いの気付きがあります。
5.(3)評価用レーダーチャートの作り方
次に、レーダーチャートの準備(作り方)ですが、対象ランクのインデックス項目に限定する場合と、全体25項目を一括で扱う場合があります。
例えばアシスタントで8項目に限定するとすればレーダーチャートの作り方は次の通りです。
・円を描く
・その円をケーキを切る要領で8等分する。
・その区切り線の円周外に対象項目名を記入する。
・中心を-1として7区分の同心円を描く。
・1本の直線にポイントを書く
これでレーダーチャートは準備完了です。
6.(4)360度アセスメント
いよいよ、実施です。
一般的には、360度アセスメントという評価方法を行います。
これは、コンピテンシーチェックシートを用いて周囲の人が対象者を相手に点数評価します。
<1>本人、<2>本人の上司、<3>本人の同僚、<4>本人の部下
この時のチェック項目は、どれにするのかは各サロンで決めて下さい。
ちなみに、前記インデックスの25項目をランク分けするとすれば以下の区分が良いでしょう。
・アシスタントレベル・・・ 1~ 8項目
・スタイリストレベル・・・ 8~15項目
・リーダーレベル ・・・15~20項目
・幹部レベル ・・・20~25項目
共通認識のある採点をしてもらうにはしっかりしたオリエンテーションが必要です。
7段階ポイントの認識をしっかり説明しておきます。
採点する時は、誰かが読み上げて、一斉に採点するほうがベターです。その方が、きっちりした雰囲気です統一感があります。
そして提出されたチェックシートの点数をレーダーチャートにプロット(点を打つ)します。そして、その点を順次つなげて行きます。
ガタガタした円が出来れば完成です。
7.評価アドバイス
そして、このレーダーチャートを観察します。
自分のレーダーチャートの円を見て、他人が大きく、本人が小さい場合は、謙遜型です。つまり自分はそんなに出来ないと思っているが、周囲からは結構出来るという評価ですから、本人はもっと自信を持って進んでいくべきだということです。
次は逆のパターンです。
他人が小さく、本人が大きい場合は、思い上がり型です。これは自分の評価より他人の評価が低いということです。他人から見たら本人が思うほど出来ていないよと言うことですので、本人はもっと謙虚にならないといけないということです。
全体の円としてもそういう比較は必要ですが、項目一つ一つを見て評価していく人も必要です。
基本的には、コンピテンシーは評価基準としてランク内容が統一されているので、誰が査定しても公平な評価になるというのが一つの狙いです。
もう一つの狙いは、教育的な側面です。
それは、自分が評価されてランク2だったとすれば、次はランク3を目指すのだなということが明確なことです。
つまり、次の3ランクのことが出来るようになれば自分はランクアップするということが文字で示せるわけです。
これが大きい意味を持ちます。なんとなくではなく、この方向に進むのですよという指針を与えて、指導してあげることが出来る資料であるわけです。
8.活用事例(1)
私の顧問先のサロンでは、このコンピテンシーを幹部育成に活用したケースがありました。
手順は以下の通りです。
( 1)幹部候補生をリストアップする。
( 2)そのメンバーに対してオリエンテーションを行う。
( 3)1回目のコンピテンシーチェックを実施する。
( 4)その結果にて、強化ポイントを面談にて指摘する。
( 5)その強化項目の行動計画を立てさせる。
( 6)日常においてその計画を遂行する。(OJTする)
( 7)数ヶ月後、2回目のチェックを行う。
( 8)TOPにてその差を吟味する。
( 9)昇格者と現状維持者を決定する。
(10)幹部候補生を集めて、結果と昇格者を通達する。
(11)現状維持者に対する追加要望を出す。
(12)その追加強化項目の行動計画を立てさせる。
(13)日常においてその計画を遂行する。(OJTする)
(14)数ヵ月後、面談にて状況を把握し、その結果で昇格を検討する。
成長~昇格させることが目的なので、TOP&本人が納得のいくまで努力を重ね、期待ランクまで上がるように努力する仕組みを作って上げることが大切です。
9.活用事例(2)
もう一つのサロンでは、普通の5点法チェックリストにコンピテンシーの考え方を導入しています。
チェックリストは技術ランク別に4タイプありますが、5点の各点の内容を明確にし、共通認識で採点出来るように、その点に対応する行動特性をリストアップしています。
この方法は意外と簡単で、今まで慣れ親しんでいるチェックリスト方式なので、質問も平易で、簡単に対応することができるのが長所です。
例としては、「お客様を親しみを込めてお名前でお呼びしていますか?」という質問に対して5段階で答えるのですが、その5段階は以下の様なものです。
(1)覚える気がない
(2)案内の時だけお呼びする
(3)会話中も名前をお呼びできる
(4)自分の名前も覚えてもらっている
(5)漢字のフルネイムで30名以上お客様の名前を書ける
どうですか? 分かりやすいでしょ?
このコンピテンシーとチェックリスとをリンクさせた方法は、私のオリジナルかも?
10.最後に
コンピテンシーって言葉は漠然として分かりにくいのですが、評価~教育には有効な考え方・手法だと思います。
これは、結局は、本人の行動をコンピテンシーチェックリストと言う行動特性(アナログパターン)に照らし合わせて、数値化(デジタル換算)するということで、A→D変換に他なりません。
評価とは数字にしないと分からないし比較も出来ないわけです。
数字にならないと優劣がつきにくいのです。これが今の評価の仕方です。
しかし、これに頼らない、優しさや、感動、サプライズなどのキーワードも評価の対象として忘れてはならないと思います。
11.次回案内
では、次回の案内です。
次回は、「議事録の書き方」です。
リクエストがあったので、このテーマについて書いてみます。
但し、今まで書いてきた内容とかなりかぶる部分があるかも知れないのでそのあたりは御勘弁下さい。
次回もまたお役に立てるメルマガを目指して、作文します。
応援よろしくです。
ではまた次回もお会いしましょう!