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ナレッジマネジメント (ノウハウの共有)

メルマガ再録 (2007年2月26日) 第36号


職人技・ハイパフォーマーの技術を素人にも使える様に一般化して、会社のレベルを引き上げる手法です。集積手法の一つとして、「ナレッジレポート」というオリジナル様式も説明しています。

          < ナレッジマネジメント >

1.はじめに

 ナレッジマネジメントって、聞かない言葉ですよね。
 フリー百科事典『ウィキペディア』によると、「ナレッジマネジメント
とは、主に暗黙知を明示知に変換することにより、知識の共有化、明確化
を図り、作業の効率化や新発見を容易にしようとする企業マネジメント上
の手法」ということです。
 う~~ん、難しそう!!
 要するに、職人技・ハイパフォーマーの技術を素人にも使える様に一般
化して、会社のレベルを引き上げると言うことでしょう。
 私は若干コンピテンシーの考え方に似ているかなと思いますが、コンピ
テンシーは出来る人のノウハウに近づくための手法であるのに対して、こ
のナレッジマネジメントは、出来る人のノウハウをまとめて、全員で活用
しさらに高めて行こうとするものであると解釈しています。
 コンピテンシーは、個人寄りの考え方なのに対し、ナレッジマネジメン
トは、より組織的・全社的なアプローチになるものでしょう。
 今回は、新時代の競争力の源泉として「知(ナレッジ)」をどのように
活用していくかに付いて考察してみましょう。

2.SECI(セキ)

 ではまず、どうしてその様にノウハウが集中し、それを活用出来る様に
なるのかと言うストーリーについて考えてみましょう。
 少し専門的になりますが、次の手順が一般的です。
(1)共同化<共感>
  (Socialization、ソシアライゼーション)
  「共同化」は、個人の中にある知識を磨き上げ、小グルーブで共有し
  たりして顕在化させます。
(2)表出化<文節>
  (Externalization、エクスターナライゼーション)
  顕在化した知を、集団で使える様に、文章化、データ加工、マニュア
  ルなどに加工します。
(3)結合化<分析・連結化>
  (Combination、コンビネーション)
  文章化された知を、各種組み合わせたり、体系化したりしてさらに枠
  を超える形で普及させます。
(4)内面化<実践>
  (Internalization、インターナライゼーション)
  体系化された知を、個人のノウハウまで落とし込みます。そしてまた
  新しい知を生み出すまで熟成発酵させます。

 上記の4項目の頭文字をとって、SECI(セキ)と呼んでいます。
 こうした過程を経て個人の知と集団の知が混ざり合い、増幅し、そこか
ら生み出されたノウハウがよりレベルの高い製品やサービスを生み出し、
お客様の知をも巻き込みながらナレッジマネジメントの輪が広がり、経営
のレベルが向上して行くというわけです。

3.具体的手法

 私は美容室専門のコンサルタントなので、大きな会社のナレッジマネジ
メントを指導したことはありませんが、ちなみにそういう場合の具体的手
法に付いても少し説明しておきましょう。

<1>データマイニング
 人工知能や統計学を利用してデータから知識を取り出そうとする試みの
ことです。主に連鎖して起こる現象を探り、セールスに結びつけようとし
ています。
 例えば、「スーパーでビデオとガムテープが共に売れるというデータを
元両者を同じ場所に置く、本Aを買う人は、後に本Bを買うことが多いと
いうことが分かれば、購入者に本Bを薦めるダイレクトメールを送る。」
等の購買促進が図れるわけです。
 美容室で言うと、パソコンでお客様情報を傾向分析して、来店に備えて
次の準備をしたり、店販商品の期限切れに対処するなどがあるでしょう。

<2>データウェアハウス
 データを多次元的に処理することによって、通常では察知しにくい傾向
性を発見する技法です。
 サロンで言うと、時間帯別の来店客傾向分析などをして、そのお客様に
対しての対処方法を考えるなどがありそうです。

<3>知識共有化
 コンピュータを利用して、一部の人の資産であった知識を集団全体に共
有しようとするものです。
 大型美容室ではグループウェアを使ってデータ・情報を共有化している
ところはありますが、まだまだナレッジマネジメントというにはほど遠い
ですね。

<4>可視化
 人間における視覚の優位性を利用し、多次元、多要素で理解しにくい情
報を、見える形で表現し、理解しやすくさせようとするものです。
 これなどは、現在はパワーポイント止まりでしょうね。これからいろい
ろなツールが開発されてくることになるのでしょう。

4.私流ナレッジマネジメント(サロンでの活用)

 私は、ナレッジマネジメントの具体化の一つとして「ナレッジレポート」
というものを考えてサロンで活用しています。
 従来の反省型ミーティングではなく、ノウハウ共有型・積上げ型の会議
を目指して、このレポートの形式と運用を考えました。
 内容は、次の4項目からなっています。
  <1>グッドニュース
  <2>バッドニュース
  <3>リクエスト
  <4>その他
 では1つづつ解説します。

<1>グッドニュース(今月の営業で特に良かったと思うところ、共通
   のノウハウとして使えそうだったこと等を書いて下さい。)
 この欄には、この1ヶ月間、自分で挑戦してみて良い結果が得られたこ
とを書いてもらい、内容を報告してもらいます。
 その時、聞く側からはどんどん質問を浴びせます。結果を出した本人は、
良い評価をされていることと同じ意味になり、次回も褒められたいという
気持が高まり、良循環に入ります。
 例えば、「店販セールで今までの自己最高額を売った」というコメント
があったとしましょう。
 そうしたら、自然と聞きたくなりますよね。「えっ?何か今までと変わ
ったことをしたんですか?」「どんな商品をお勧めしたんですか?」「そ
の時のお客様の反応は?」・・・
 そうです。それをメモして、共通のノウハウにするわけです。
 また、全店で一番パーマ比率の良い人には「どんなお勧めをしています
か?」「最初の声掛けはどんな言葉を使っていますか?」と聞いてみたく
なりますよね。そこから引き出した答えをどんどん積上げていくというこ
とが最初のステップです。
 これがSECIで言うところの、共同化~表出化です。

<2>バッドニュース(反省点を書いて下さい。またそのことからリフレ
   ーミングをしてプラス思考で見方を変えたところ、何を学んだか書
   いて下さい。)
 34号で詳しく書いたリフレイミングを応用したものです。これが意外
に効果を発揮します。
 例えば、「最近導入したデジタルパーマのお勧めが上手く出来ない」と
いう悩みがあったとします。
 当然質問しますね。「どんなアプローチをしていますか?」「デジパの
特性、お勧めトークはよく理解していますか?」
 その質問が、本人に気付きを与え、周囲にも「そうだったんだ!」と再
確認させる効果もあります。
 そしてハイパフォーマーの人が、「こうすればいいよ!」と教えれば効
果はバッチリです。
 そんな感じで、ノウハウが浸透していくわけです。
 そして、悪いニュースでも素直にコメント出来るようになれば、視点が
上向きになるのでレベルがグッと上がります。

<3>リクエスト(自分の成長のために欲しい情報を書いて下さい。)
 「マッサージの上手な方法を教えて欲しい。」というリクエストがあっ
たとします。
 「この場で一番上手なのは誰ですか?」と聴いてみます。
 「Aさんでしょう!」という意見が大半だったら、「Aさん、コツを教
えて下さい。少し実演をお願いします。」と言って、誰かをモデルにして
実際にやってもらいます。
 会議の中で、アクションを入れることは大変良いことです。
 美容師さんは特にデスクワークや会議は苦手です。動きをしてもらうこ
とで一気に和み、集中できます。
 この動きをスケッチし、マニュアル化して全員に配布すれば、全員にト
ップのマッサージ技術が徹底します。

<4>その他(上記以外に、会社、営業、スタッフ、お客様等のことで気
   の付いたところ、意見・質問があれば書いて下さい。)
 「サロンのことをもっと知ってもらうのに、ミニコミ誌を発行すればど
うかと思います。」という提案があったとします。
 これはチャンスです。
 スタッフがやる気になっていると言うことです。そんな時は、すかさず
「やってみましょう。ではどんな感じの内容を考えていますか?」とやる
ことを前提に話をします。
 質問により、内容を明確化させて、実行までの段取りのイメージを確立
させます。そして、みんなでそれを盛り上げて期待してあげます。
 この様に、一つのイベントを共有化することが大切です。

 と、言うような感じで使います。
 ミーティングは、問題点の洗い出し・分析に時間を掛けるのではなく、
ノウハウ構築に集中するようにしましょう。
 そうすれば、会議の生産性がグッと向上し、ナレッシマネジメントの効
果が抜群に増します。

5.最後に

 「ナレッジマネジメント」どうでしたか?
 いわゆるベテラン、職人技、一流、凄い人、TOP、カリスマ等と言わ
れる人のノウハウの真髄を顕在化して初級者でも使えるようにするという
ナレッジマネジメントの概略を分かって頂けましたでしょうか?
 出来る人は、必ず何かを持っています。
 その人の、やり方、言い方などをどんどん共有して、素晴らしいサロン
作りに役立てて下さい。

6.次回案内

 では、次回の案内です。
 次回のテーマは「ゴールドスタンダード」です。
 どんな小さいサロンでも大きな会社でも、自分達はどういう仕事で社会
にお役立ちするのかと言う経営理念を持っています。
 それを具現化するのに、行動指針やスローガンを掲げます。
 その内容がゴールドスタンダートと言われるものです。
 その行動の規範がしっかりしていないと、そのサロンの中心軸がぶれて、
全員の行動の方向性を集中することが出来ません。
 だから、ゴルドスタンダードを明確にして、パワーを結集する必要があ
ります。
 この、サロン・会社にとって一番大切な要素であるゴールドスタンダー
ドについて、次回考察してみます。

 では、次回もまたお役に立てるメルマガを目指して作文しますので、応
援よろしくお願いします。
                 ではまた次回もお会いしましょう!

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