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ホロン (全体子)

メルマガ再録 (2007年11月26日) 第54号


全体の一部として機能もしているが、それ自体も全体としての機能を持っています。ホロンは全体子ともいいます。この考え方を経営に取り入れることをホロン型経営といいます。

            < ホロン >

1.はじめに

 2006年8月28日号の当メルマガ№024の本文中に以下の文章を
掲載しました。
 <ここから>
 また、ホロン型組織というものもあります。
 ホロンの定義です。「全体の一部として機能もしているが、それ自体も
全体としての機能を持っている。ホロンは、全体子ともいう。」
 例えば、人体という全体を構成する要素(部分)である細胞も臓器も、ホ
ロンであると言えます。
 <ここまで>
 今回は、このホロンという考え方を経営に生かすポイントについて考察
を加えてみたいと思います。

2.身近なホロン

 上記にあったように人の身体はホロン構造になっています。
 1つの細胞はそれ自体が独立して1つの機能を果たし、上位の臓器とし
ての一部分になっています。臓器もそれ自体で独立した機能を持ち動いて
いますが、身体の一部品としての役目を担っています。
 「単に部品と言うイメージではなく」ということが大切なポイントです。
 また、家庭や球技などのチーム、プロジェクトチームなどもホロン的活
動であるということが言えます。
 家庭では、夫婦・兄妹の各人1人1人が最小単位ですが、家庭という一
つの単位を構成しています。チームも同じです。メンバーがいてチームが
あります。
 「One For All. All For One.」と言う言葉
がありますが、お互いが支えあっていると言うことで、まさにそのイメー
ジがピッタリです。
 もっと大きく考えると、会社もそうです。個人~課~部~支店~会社と
いう様に、それぞれが独立していて、全体としても機能しているのでホロ
ン的組織です。

3.ホロンと理念の浸透

 人間の場合、通常、意識と言えば顕在意識を表します。
 人間の臓器は、顕在意識で動かしているのではなく、身体の仕組み自体
が初めから自動的に動くように設計されています。
 ここに、経営理念の浸透およびエンパワーメント(権限委譲)との共通
点を見ることが出来るのではないかと思います。
 「各パーツは、あらかじめ決められた働きを、一々指示を受けずに自動
的にこなす」という内容を考えた時に、自然とリッツカールトンが頭に浮
かんできます。
 リッツのスタッフ全員は、とにかく理念を本当によく理解しています。
 理念の浸透の仕組みが一番であると言う見本みたいなものです。
 さらに権限委譲されたスタッフは、最大の効果を発揮したいという意識
が向上し、理念に沿った責任のある素晴らしい行動と結果を発揮するであ
ろう事は、容易に想像できます。
 要するに、「ホロンは各部署に完全に権限委譲(エンパワーメント)さ
れた状態である」ということです。

 少し余談ですが、人間は、まず生命維持という大命題が身体の組織全体
に組み込まれています。
 その内、免疫機能は最たるものです。
 怪我をすればすぐに止血のための機能が働き、異物が体内に侵入して来
た場合も同じ様に、抗体を作って阻止しようとします。
 身体は、この様に生命維持という命題に対し、各パーツが全力を挙げて
取り組むわけです。
 また、危険を感じたときなどアドレナリンを出して、一時的な興奮状態
を身体の全身に引き起こし、身構えさせます。
 ちなみに、アドレナリンについての薀蓄(うんちく)をひとつ。
 <ここから>
 交感神経が興奮した状態、すなわち「闘争か逃走か」のホルモンと呼ば
れる。動物が敵から身を守る、あるいは獲物を捕食する必要にせまられる
などといった状態に相当するストレス応答を全身の器官に引き起こす。
 その例として、
  運動器官への血液供給増大を引き起こす反応
  心筋収縮力の上昇
  心、肝、骨格筋の血管拡張
  皮膚、粘膜の血管収縮
  消化管運動低下
  呼吸におけるガス交換効率の上昇を引き起こす反応
  気管支平滑筋弛緩
  感覚器官の感度を上げる反応
  瞳孔散大
 などがあり、ヒトであれば一重に「興奮した状態を作るホルモン」とし
てよく知られている。
 <ここまで>
 生きたいという思いが強いほど、たくさんアドレナリンが供給されます。
 これと同じで、組織が危険にさらされたときほど、チームワークの結束
が強くなるのが良いチームです。
 この強さは、目的意識の強さと同じです。

4.ミーム

 さらに余談ですが、ミーム(meme)という言葉について一言。
 ではまた、ウィキペディアから。
 <ここから>
 ミームは、いわゆる文化的遺伝子と言われるもので、文化内の「変異」
が「遺伝(伝達)」的に承継され、「自然選択(淘汰)」される様子を進
化になぞらえたとき、遺伝子に相当する仮想の主体である。例として災害
時に飛び交うデマ、流行語、ファッション、言語など、すべてミームとい
う仮想の主体を用いて説明できるとする。例えば「ジーパンを履く」とい
う風習が広がった過程をミームの視点から捉え直せば、『1840年代後
半のアメリカで「ジーパンを履く」というミームが突然変異により発生し、
以後このミームは口コミ、商店でのディスプレイ、メディアなどを通して
世界中の人々の脳あるいは心に数多くの自己の複製を送り込むことに成功
した。』となる。訳語としては摸倣子、摸伝子、意伝子などがある。
 <ここまで>
 人に置き換えると、人は自分の意志で動いているのではなく、DNA中
にミームが乗り込んでいて、ミームが遺伝子(人間)を乗り物として利己
的に支配しているとする考え方があります。
 「利己的な遺伝子」リチャード・ドーキンス著など興味深い書籍がある
ので是非読んでみて下さい。
 会社の経営理念、サロンコンセプトがミームの様に浸透していれば、最
高なわけです。

5.ホロン思想を経営に生かす

 ホロン型経営はお勧めするところですが、その注意点もあります。
 まず、セクショナリズムの排除が上げられます。
 ウィキペディアより
 <ここから>
 「セクショナリズム(部局割拠主義)とは、集団・組織内部の各部署が
互いに協力し合うことなく、自分たちが保持する権限や利害にこだわり、
外部からの干渉を排除しようとする排他的傾向のことをいう。官僚制にお
ける逆機能の一つとして指摘されたもので、組織内部の専門性を追求しす
ぎた結果起こってくる機能障害である。」
 <ここまで>
とあります。
 つまり、個々(部署)の働きを重視する余り、縦・横の連携がうまくい
かなくなるという問題が発生すると言うわけです。
 そういうことって、有り勝ちですよね。
 なぜか自分の部署を守ろうとするんですよね。
 それは、目的主義から行くと全くナンセンスなのですが、そうしないと
自分の今の安定した仕事が脅かされるというホメオスタシス(恒常性)が
働いて、保守的になっているんわけです。
 「良くなるからいいのに!」と思いますが・・・・
 つまり、利己的な思想、都合主義、目的意識の欠如、全体的視野の欠如
などが重なってこの問題が起こるわけです。
 そういうものを打開するためには、横断的プロジェクトなども効果はあ
るでしょうが、根本的には、会社の理念、お客様が求めること、何が大切
で、何が不要なことかをしっかりと浸透させるところから始めないといけ
ないですね。
 また別の打開策として、超法規的措置も効果というものもあります。
 これは、段階を飛び越えて、オーナー直結の部隊を作ったり、独自に動
くタスクフォース(特別作業班・機動部隊)を作ったりして、内部の改革
に当たるというものです。
 そのチームには通常の組織を超えた権限を持たせるもので、スピードや
改革を求める場合にはそういうやり方もあります。
 当然、エンパワーメントやクレド(経営信条)の徹底を行い、ホロン型、
自主活性化型経営を目指すことが、ホロン思想を根付かせる唯一、最強の
手法であることは間違いのないところです。

6.最後に

 今回は、やたらと他の文献からの抜粋を多用し、横文字が多くて難儀し
たかもしれませんが、専門用語は意訳(原文の表現にとらわれずに訳をす
る)すると意味が分からなくなるので、直接文章を掲載しました。
 結構知らない単語もあったと思うので、これらを自分のものにして、活
用して、キラッ!と知性が光るところを見せて下さい。
 受けたら報告して下さい。

 では、また次回お会いしましょう!

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