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信号機理論 (経営のリスク予知)

メルマガ再録 (2007年3月26日) 第38号


私が考える信号機理論とは、交通信号機を経営上の通過ポイン トと考え、安全に、しかもいかにスピーディーに青色で通過するかということに着眼して考えてみようという試みの思考術のことです。

            < 信号機理論 >

1.はじめに

 今回のテーマは「信号機理論」です。
 さて、なんでしょう?
 「信号理論」をインターネットで調べてみましたが、ここで見る限り、
「0」か「1」かのデジタルの世界ですね。「信号機理論」では該当の項
目はありませんでした。
 しかし、私が考えた信号機理論は、それらとは全く関係がなく、経営的
な視点のものです。
 つまり、私が考える信号機理論とは、交通信号機を経営上の通過ポイン
トと考え、安全に、しかもいかにスピーディーに青色で通過するかという
ことに着眼して考えてみようという試みの思考術のことです。
 言い換えると、信号機を道先案内(経営の指標)と考えたベンチマーキ
ングと考えても良いでしょう。
 と言っても、まだ分からないですよね。
 では、具体的に書いて行きます。

2.信号機の特性

 信号機は、青→黄→赤→青→黄→赤→の順番で、点滅から点灯を繰り返
して交通整理をする機械です。
 これは万国共通の認識です。この順番が変わったりすることはありませ
ん。
 しかし、各信号機の点滅~点灯のながさは、その交差点の流れを良くす
るためにそこの交通の状態がスムースに流れるように調整されています。
 当然、交通量の多い道側がながく、少ない側は短いというのが原則です。
 これからの文章中では、自分の車の位置が信号機に近い場合をA、中間
くらいをB、遠い場合をCとして表現します。(自分の感覚で決めて下さ
い。)

3.青信号

 はじめに、前方の信号機が青色の場合を考えてみます。
 まず、自分の車がA地点にいる場合は、全く問題なく通過出来ます。路
地の数も少ないのでサイドからの飛び出しにも気を使わなくて済みます。
 黄色になりかけても少しアクセルを踏み込めば交差点を通過出来ます。
 次に、B地点の場合です。
 青色の内に通過したいという気持が強く出ますね。今スピードを上げれ
ば青色で間に合うかも知れないが、青色になってどれくらい時間が経って
いるのか、このままのスピードなら黄色に変わらないか・・・・
 しかし、今の内にA地点までスピードを上げようとしたら、その時が危
険です。青色の内に通過したいと考えた瞬間信号に気を取られ、サイドの
ガードが甘くなります。人間の特性として、集中すると周りが見えなくな
り、聞こえなくなるからです。
 そうです。だから信号機までの途中の状況が視野に入らなくなるのです。
 つまり、脇道からの飛び出しに対応出来ないのです。
 非常に恐い状況です。これが、B地点の場合の最大の特徴です。
 最後に、C地点の場合です。
 流れの意識がなく、いきなり見た青信号はかなり危険です。早くA地点
に達しないと黄色に替わるという意識が焦りを呼びます。そうです、魔の
B地点パターンにはまるわけです。
 信号のタイミングを遠くから認識している場合は、危険度は小です。な
ぜなら、ぼちぼち黄色かなと予測がつくからです。
 このあたりでドライバーのクセがはっきり出ますね。
 のんびり屋さんなら、1回待ってもいいよとペースを崩さずに走ります。
 しかし、あせり屋さんは、どうしてもこの青色で通過するぞと肩に力が
入ります。
 そうです、そうなればこれまた魔のBパターンです。
 いずれにしても、通過するぞと力が入った時に、それが落とし穴になる
ということです。

4.黄信号の場合

 今、前方の信号機が黄色の点滅、点灯だとします。
 ここでも3つのパターンがあります。
 A地点の場合、停止できる距離なのでしっかりブレーキを踏みます。
 B地点の場合、次は赤信号なので、停止モードに入ります。
 C地点の場合、安心してスローダウンして信号に近づくことが出来ます。
 以上の様に、黄色の場合は先を急ぐことが出来ないので、リスクが少な
いということです。

5.赤信号の場合

 信号が赤色でA地点の場合、ブレーキを踏み込んで停止します。
 信号の手前から青色~黄色~赤色の移り変わりを認識していることが大
事です。
 つまり、いきなり赤信号を見ても、それが赤になった瞬間か、青色に移
ろうとしているところなのかでは、心の用意、発進の準備の仕方が違うか
らです。
 B地点の場合は、スローダウンはしますが、ひょっとしたら青に変わる
かもしれないという期待感を持って信号を見ています。これはまたまた要
注意です。信号に集中してしまい、脇道の恐怖を忘れがちになるからです。
 C地点の場合、赤色の初期は危険度は小です。次は青色なので、楽に信
号まで近づけます。
 しかし、赤色の終盤は危険が発生します。次は青だからスローからアク
セルを踏まなければと思った瞬間がサイドが見えなくなります。

 以上の様に、各信号と車の位置により心理状況が違うのと、それに伴う
危険度が違うということがわかりましたね。
 車を運転しない人は、自分が自転車に乗って走っている時を想像しても
らえれば分かりやすいでしょう。
 では次に、この状況を経営に置き換えて考えてみましょう。

6.経営での青信号

 青信号は一般的に進めですが、その中にいろいろな要素があることを、
前項で考えましたね。
 青信号のA地点では、信号に近いので、問題なく通過出来ます。
 ここでのポイントは、ひょっとしたら横から信号無視をしてぶつかって
来る車があるかもしれないということです。
 だから経営でも、近隣の動向を見ながら前進することが大切だと教えら
れていることになるでしょう。
 常に、そういうアンテナを張り巡らせて、360度注意を払っておくこ
とが求められます。
 次にB地点です。
 ここは魔のB地点ですので、最大の注意が必要です。
 信号に注意を集中し過ぎることにより脇道からの飛び出しに対応しきれ
ないということが待っています。
 経営で言うと、好調な時に一つのミス、クレームあるいはサロン内の不
満などから水が漏れ出すことがあるぞという注意を促しています。
 好調な時ほど気を付けろと言うことです。なかなかそう思えないのが人
の常ですが、勝ってかぶとの緒を締めなければなりません。
 最後に、C地点の場合です。
 距離のある時の青は、誠に危険です。野心の落とし穴です。
 ある程度貯蓄も出来て、何かをしたくなったとき、悪魔の手が伸びます。
 そう、必ず魔の手が伸びるのです。そして、思い上がりになり、自分の
想いが全てのような錯覚に陥り、感謝を忘れます。
 そうなると、取り返しのつかないことになります。慢心はいけないとい
う戒めです。
 感謝の心を常に持ち、利他の心を忘れないことが大切です。

7.経営での黄信号

 黄信号は、速やかに交差点から脱出することですが、現状に留まらず、
常に次のステップを意識して向上していくという意識が必要でしょう。
 黄信号は、注意深く進行しているので、返ってリスクが少ないです。
 サロンでは、何か問題があったりするとそれに対してリカバリーするこ
とに一所懸命になります。これがみんなの団結心を高めることになり、良
い結果を生み出すことがあります。
 経営数字を見て、危機感を持って望むことも必要です。意識的に、常に
黄色信号を点滅させているサロンは素晴らしいです。
 良い意味の危機感を持って、目標達成に向かう姿勢があれば、黄色信号
は大変有意義なものになります。
 TOPの指針・姿勢が、サロン全体に繁栄することは言うまでもありま
せん。
 そのことをよく認識し、テクニックよりマインドを高める勉強をしてい
きましょう

8.経営での赤信号

 赤信号は止まれですが、経営では次に備える・力を蓄えるということも
大事な要素です。
 A地点の場合、車はブレーキを踏んで停止しますが、経営は停止できま
せん。
 赤字の場合、その要因を掴むことが先決です。
 要因は、それまでのデータの中に問題となる要素が隠されています。
 マイナスモードに入っている時は、なかなか見つからないものですが、
課題を見つけ出し、そして、挽回のためのプラスの計画を立てます。
 プラスになる計画が立てられれば、それを100%実行することです。
 そこはもう根性の世界です。
 計画と心の統一が図れれば、目的は達成できます。
 魔のB地点の場合は、行けるだろうと言う甘い予測が命取りになるとい
うことです。
 予測はどうしても甘くなりがちです。そこを厳しくシミュレーションし
て、120%の行動計画を立て、実行することで、物事は実現できます。
 80%の勝算でスタートしてはいけません。200%あっても、何があ
るかわからないのが商売です。それをよく肝に銘じるべきです。
 C地点の場合、次の青色を意識しすぎて足元を忘れがちということです。
 次の明かりが見えると走り出したくなるものです。
 そこをぐっと我慢して今までの進行速度を守りつつ、ペースアップして
いくことで、確実に成長につながります。
 次のためのエネルギーを蓄え、資質を向上し、次の商戦に備えなければ
なりません。
 備蓄なくして冬は越せません。また、ノウハウの構築なくして次の展開
はありません。
 この赤信号は、大変重要な要素を含んだ時間です。
 次のための準備と心得て、向上に努めましょう。

9.では質問です!

 Q1.あなたのサロンの信号機と同じ役割を果たすものとは、どんなも
    の(こと)ですか?
 Q2.誰がドライバーですか?
 Q3.信号のタイミングは誰が決めていますか?
 Q4.安全運転をするのに、どんなところに気をつけていますか?
 Q5.脇道の情報にアンテナを張っていますか?
 Q6.リスクマネージメントの対策は出来ていますか?
 Q7.次への飛躍の準備・計画・投資は出来ていますか?
 Q8.ナレッジマネージメントの蓄積は出来ていますか?
 Q9.サロンのフラグは全員が見えるところに掲げていますか?
Q10.本音で話し合える環境を作っていますか?

10.最後に

 「信号機理論」、どうでしたか?
 未消化部分は多々あったかと思いますが、なんとなくわかってもらえま
したか?
 私はいつも、自分の駐車場から一方通行の信号の出口までの間に、こん
な様なことを考えています。
 先の信号が赤の方がほっとするんですよね。
 朝は必ずやってくるように、やまない雨はないように、赤信号は必ず次
は青色になるんです。
 だからそれを信じて準備しておくということが必要なわけですね。

11.次回案内

 では、次回の案内です。
 次回のテーマは「ありがとう」です。
 「ありがとう」の持つ力をあちこちで耳にします。
 なぜなんだろうという疑問があります。
 それを考察してみます。

 では、次回もまたお役に立てるメルマガを目指して作文しますので、応
援よろしくお願いします。
                 ではまた次回もお会いしましょう!

ゴールドスタンダード (規範をまとめたもの)

メルマガ再録 (2007年3月12日) 第37号


黄金律とも言います。リッツカールトンホテルのクレドを研究サンプルとして、モットー、従業員への約束、サービスの3ステップ、ベーシック(行動指針)などについて考察しています。

         < ゴールドスタンダード >

1.はじめに

 「ゴールドスタンダード」って余り聞かない言葉ですが、経営理念、サ
ロンコンセプト、行動指針などの言葉はよく使いますね。
 つまり、そういった会社の方向性を示す心のより所となる規範をまとめ
たものをゴールドスタンダード(黄金律)と言います。
 この言葉が有名になったのはたぶん、リッツカールトンホテル(以下リ
ッツ)が取り上げられる様になってからではないでしょうか?
 リッツでは次の5つを合わせて、ゴールドスタンダードと言っています。
  (A)クレド
  (B)モットー
  (C)従業員への約束
  (D)サービスの3ステップ
  (E)ベーシック(行動指針)
 今回は、これらの内容を深堀りすることにより、あなたのサロンのゴー
ルドスタンダードを作るヒントになれば幸いです。

2.(A)クレド

 これは、いわゆる信条と言われるものです。
 自分たちは何を大切にして経営するのかを明確にしたものです。
 経営理念も信条です。
 リッツのクレドを抜粋すると次の様になります。
 「心のこもったおもてなし。快適さの提供」
 「最高のパーソナルサービスと最高の施設の提供」
 「願望やニーズの先読み」などです。
 では、サロンではどんなクレドになるか、私なりに考えてみました。
(1)サロンのお客様に対し、最新の技術と、心からのサービスと、期待
   を超える満足を提供することを大切な使命と心得ています。
(2)お客様に、個性・時代性・再現性を重視したヘアスタイルを楽しん
   で頂くために、最高の美容技術と、おもてなしと、快適な空間を提
   供することを約束します。
(3)当サロンでお客様が手に入れられるものは、お気に入りのヘアスタ
   イルと、居心地のよい雰囲気と、優しさ溢れるサービスの心です。
 どうですか? かなりいけてるでしょう?
 リッツの原文を吟味すると、本当によく考えられているなあと感心しま
す。皆さんも、一度しっかり研究してみて下さい。

3.(B)モットー

 リッツのモットーは、クレドを方位磁石として進んでいく私どもは何者
かということについて書いています。
 「私たちは紳士・淑女をおもてなしする紳士・淑女です」
 このモットーはお客様と従業員の関係を表します。同時に従業員同士も
お互いを紳士・淑女としておもてなししようという意味も含まれています。
 この様に、モットーとは最も大切していることを合言葉にしたものです。
 サロンで考えてみると、こんな感じでしょう。
 「私達は、ヘアスタイル作りを楽しみに来られるお客様に向かい合うサ
ロンの仲間です。お互いを信じ合い、許し合い、認め合う仲間です。」

4.(C)従業員への約束

 従業員についてリッツがどのような考え方をしているかを具体化したの
が「従業員への約束」です。
 どこも削れないので、リッツのものを全文を紹介します。
 「リッツカールトンでは、お客様へお約束したサービスを提供する上で
紳士・淑女こそがもっとも大切な資源です。」
 「信頼・誠実・尊敬・高潔・決意を原則とし、私たちは、個人と会社の
ためになるよう持てる才能を育成し、最大限に伸ばします。」
 「多様性を尊重し、充実した生活を深め、個人のこころざしを実現し、
リッツカールトン・ミスティーク(神秘性)を高める・・・リッツカール
トンは、このような職場環境をはぐくみます。」
 以上、3つの文章から成り立っています。
 一番大事なものは、それを提供する人であることを明確に伝えています。
 つまり、個人の成功が会社の成功に結びつくということです。
 以前、リッツ関係のセミナーで、ある人が支配人に質問しました。「C
S(顧客満足)とES(従業員満足)はどちらが優先ですか?」
 支配人はきっぱり「ESです。」と答えられました。
 なかなか、言えないんですよね。このセリフ。
 これをサロンに置き換えてみました。
 「当サロンでは、お客様へお約束した技術・サービス・満足感を提供す
る上で、スタッフ(仕事仲間)こそがもっとも大切な資源です。」
 「誠心誠意・有言実行・敬意・優しさを原則とし、サロンとして、個人
とサロンのためになるよう本人の持てる才能を引き出し・育成し、最大限
に伸ばすことを約束します。」
 「個人の時間・生活を尊重し、個人の目標をサポートします。それがお
客様へのホスピタリティアップにつながることを信じ、サロンの品格を向
上させる要素として取り組む職場環境をはぐくみます。」
 こんな感じでいいのではないでしょうか。
 美容業界は、昔は徒弟制度的な感じがあったので、従業員に優しくない
という風潮がありました。
 しかし、最近では美容師もサラリーマン化してきており、良いか悪いか
は別にして、ドライになってきています。
 そんな中で、従業員への約束を明文化することは非常に勇気のいること
です。
 しかし、勇気を持って行えば、必ず良い答えが返って来ます。
 「投げたものは返って来る」を信じ、チャレンジしてみて下さい。

5.(D)サービスの3ステップ

 サービスの基本となる3つの要素を言い表したものです。
 リッツでは次の様に言っています。
 「1.あたたかい、心からのごあいさつを。お客様をお名前でお呼びす
るよう心掛けます。」
 「2.お客様のニーズを先読みし、おこたえします」
 「3.感じのよいお見送りを。さようならのごあいさつは心をこめて。
できるだけお客様のお名前をそえるよう心がけます。」
 以上の3つです。
 これは、このままつかえるでしょうからサロン用に言い換えることもな
いですね。
 要するに、サービスより一段上のホスピタリティを発揮する上において、
何を大切にするべきかを明確に指示することです。

6.(E)ベーシック(行動指針)

 ベーシックとは行動指針のことで、前述の「クレド、モットー、従業員
への約束、サービスの3ステップ」において、どのように行動すればそれ
が実行・発揮出来て、継続遵守出来るのかを明文化したものです。
 リッツでは20ヶ条からなる行動の指針を示しています。
 以下、要約して掲載します。
(1)クレドは基本信念
(2)モットー掲げ、品位を保つこと
(3)サービスの3ステップで、ロイヤルティ<*1>を高める
   (*1)忠誠心。企業ブランドに対して顧客が抱く意識のこと。
(4)従業員への約束の尊重
(5)トレーニングは毎年再認定
(6)カンパニー目標のサポート
(7)自分関係のプランニングに関わる権利を有す
(8)問題点に注意を払う
(9)チームワークとラテラルサービス<*2>の実践環境を作る役目
   <*2>部門を越えた支援のこと。
(10)エンパワーメント<*3>。ニーズへの対応で、持ち場を離れて
    でも解決する
    <*3>権限委譲。自分で判断し行動する力が与えられている。
(11)妥協のない清潔さを保つ
(12)最高のパーソナルサービスのため、お好みを記録。
(13)お客様を1人として失わない。苦情は自分のものとして記録。
(14)フロアーはステージ。目を見て応対。従業員同士の言葉づかい。
(15)外でもホテルの大使としての意識。肯定的な話し方。
(16)案内はその場所までご誘導。
(17)電話応対。3回以内。笑顔で。名前を呼ぶ。ボイスメールスタン
    ダード<*4>を守る。
    <*4>ボイスメールの取り扱い標準使用方法のこと。
(18)身だしなみについて。プロフェッショナルイメージで。
(19)安全第一。非常時の対応認識。
(20)ホテルの資産を守る。エネルギー節約。環境保全。
 以上が内容の抜粋です。
 この20の項目に、すべきことが集約されています。
 上記は、ホテルならではの内容もありますが、ほとんどサロンでも共通
する内容なので、これらを参考に、自店バージョンを作って下さい。
 細かい資料が欲しい場合は、メール下さい。

7.私が指導している内容

 私なりのゴールドスタンダードは、リッツとはかなり趣を異にしていて、
簡易版になっています。
 まず、経営理念を書きます。
 そして、それを言い表すキーワードを考えます。
 なぜなら、経営理念の文章は長くて覚えられないからです。
 だから、一言に集約し、覚えやすくするのにキーワードにするわけです。
 そして、そのキーワードを行動指針などを加えながら再度細かく説明す
ることによって方向性を示します。
 このとき重要なのは、言葉の定義をしっかりすることです。
 一つ一つの単語を吟味して、その意味する部分をしっかり説明し、言葉
と内容の価値観を共有することが大切です。

8.コアとフレーム的発想

 ビジョンがコアでミッションがフレームという言い方も出来るでしょう。
 ビジョンとは、一言でいうと『その企業が到達しようとする将来像を具
体的に言葉で表現したもの』ということで、核心です。
 ミッションとは、ビジョンを具現化するための手段で、職業的・社会的
使命感です。その組織、個人の存在意義ということも言えるでしょう。
 本来、企業や組織はミッションを果たすための存在であって、必ずしも
利益追求が目的そのものではありません。売上や利益はミッションの果た
し度合いを表すものだということも言えます。
 そういう意味において、ゴールドスタンダードを決めることで、本来の
経営の方向と行動をリンクさせることが出来るということですね。

9.最後に

 「ゴールドスタンダード」、どうでしたか?
 道案内もない山道で、方位磁石が狂っていると迷子になるのは間違いな
いですね。
 しかし、現状としてそんなサロンを多く見掛けます。
 そんなサロンオーナーは自分だけの事ではなく、スタッフまでも巻き込
んで、遭難してしまうかも知れないのです。
 それだけは避けなければなりません。
 今一度ゴールドスタンダードを見直して、しっかりしたサロン経営を目
指してください。

10.次回案内

 では、次回の案内です。
 次回のテーマは「信号理論」です。
 これは、長年温めてきたテーマですが、まだ本格的に考えたことはない
ので、この機会に考察を加えてみたいと思います。
 「信号理論って、なんのことについてなのか、さっぱり分からない!」
という声が飛んできそうですが、まあ、お楽しみに!

 では、次回もまたお役に立てるメルマガを目指して作文しますので、応
援よろしくお願いします。
                 ではまた次回もお会いしましょう!

ナレッジマネジメント (ノウハウの共有)

メルマガ再録 (2007年2月26日) 第36号


職人技・ハイパフォーマーの技術を素人にも使える様に一般化して、会社のレベルを引き上げる手法です。集積手法の一つとして、「ナレッジレポート」というオリジナル様式も説明しています。

          < ナレッジマネジメント >

1.はじめに

 ナレッジマネジメントって、聞かない言葉ですよね。
 フリー百科事典『ウィキペディア』によると、「ナレッジマネジメント
とは、主に暗黙知を明示知に変換することにより、知識の共有化、明確化
を図り、作業の効率化や新発見を容易にしようとする企業マネジメント上
の手法」ということです。
 う~~ん、難しそう!!
 要するに、職人技・ハイパフォーマーの技術を素人にも使える様に一般
化して、会社のレベルを引き上げると言うことでしょう。
 私は若干コンピテンシーの考え方に似ているかなと思いますが、コンピ
テンシーは出来る人のノウハウに近づくための手法であるのに対して、こ
のナレッジマネジメントは、出来る人のノウハウをまとめて、全員で活用
しさらに高めて行こうとするものであると解釈しています。
 コンピテンシーは、個人寄りの考え方なのに対し、ナレッジマネジメン
トは、より組織的・全社的なアプローチになるものでしょう。
 今回は、新時代の競争力の源泉として「知(ナレッジ)」をどのように
活用していくかに付いて考察してみましょう。

2.SECI(セキ)

 ではまず、どうしてその様にノウハウが集中し、それを活用出来る様に
なるのかと言うストーリーについて考えてみましょう。
 少し専門的になりますが、次の手順が一般的です。
(1)共同化<共感>
  (Socialization、ソシアライゼーション)
  「共同化」は、個人の中にある知識を磨き上げ、小グルーブで共有し
  たりして顕在化させます。
(2)表出化<文節>
  (Externalization、エクスターナライゼーション)
  顕在化した知を、集団で使える様に、文章化、データ加工、マニュア
  ルなどに加工します。
(3)結合化<分析・連結化>
  (Combination、コンビネーション)
  文章化された知を、各種組み合わせたり、体系化したりしてさらに枠
  を超える形で普及させます。
(4)内面化<実践>
  (Internalization、インターナライゼーション)
  体系化された知を、個人のノウハウまで落とし込みます。そしてまた
  新しい知を生み出すまで熟成発酵させます。

 上記の4項目の頭文字をとって、SECI(セキ)と呼んでいます。
 こうした過程を経て個人の知と集団の知が混ざり合い、増幅し、そこか
ら生み出されたノウハウがよりレベルの高い製品やサービスを生み出し、
お客様の知をも巻き込みながらナレッジマネジメントの輪が広がり、経営
のレベルが向上して行くというわけです。

3.具体的手法

 私は美容室専門のコンサルタントなので、大きな会社のナレッジマネジ
メントを指導したことはありませんが、ちなみにそういう場合の具体的手
法に付いても少し説明しておきましょう。

<1>データマイニング
 人工知能や統計学を利用してデータから知識を取り出そうとする試みの
ことです。主に連鎖して起こる現象を探り、セールスに結びつけようとし
ています。
 例えば、「スーパーでビデオとガムテープが共に売れるというデータを
元両者を同じ場所に置く、本Aを買う人は、後に本Bを買うことが多いと
いうことが分かれば、購入者に本Bを薦めるダイレクトメールを送る。」
等の購買促進が図れるわけです。
 美容室で言うと、パソコンでお客様情報を傾向分析して、来店に備えて
次の準備をしたり、店販商品の期限切れに対処するなどがあるでしょう。

<2>データウェアハウス
 データを多次元的に処理することによって、通常では察知しにくい傾向
性を発見する技法です。
 サロンで言うと、時間帯別の来店客傾向分析などをして、そのお客様に
対しての対処方法を考えるなどがありそうです。

<3>知識共有化
 コンピュータを利用して、一部の人の資産であった知識を集団全体に共
有しようとするものです。
 大型美容室ではグループウェアを使ってデータ・情報を共有化している
ところはありますが、まだまだナレッジマネジメントというにはほど遠い
ですね。

<4>可視化
 人間における視覚の優位性を利用し、多次元、多要素で理解しにくい情
報を、見える形で表現し、理解しやすくさせようとするものです。
 これなどは、現在はパワーポイント止まりでしょうね。これからいろい
ろなツールが開発されてくることになるのでしょう。

4.私流ナレッジマネジメント(サロンでの活用)

 私は、ナレッジマネジメントの具体化の一つとして「ナレッジレポート」
というものを考えてサロンで活用しています。
 従来の反省型ミーティングではなく、ノウハウ共有型・積上げ型の会議
を目指して、このレポートの形式と運用を考えました。
 内容は、次の4項目からなっています。
  <1>グッドニュース
  <2>バッドニュース
  <3>リクエスト
  <4>その他
 では1つづつ解説します。

<1>グッドニュース(今月の営業で特に良かったと思うところ、共通
   のノウハウとして使えそうだったこと等を書いて下さい。)
 この欄には、この1ヶ月間、自分で挑戦してみて良い結果が得られたこ
とを書いてもらい、内容を報告してもらいます。
 その時、聞く側からはどんどん質問を浴びせます。結果を出した本人は、
良い評価をされていることと同じ意味になり、次回も褒められたいという
気持が高まり、良循環に入ります。
 例えば、「店販セールで今までの自己最高額を売った」というコメント
があったとしましょう。
 そうしたら、自然と聞きたくなりますよね。「えっ?何か今までと変わ
ったことをしたんですか?」「どんな商品をお勧めしたんですか?」「そ
の時のお客様の反応は?」・・・
 そうです。それをメモして、共通のノウハウにするわけです。
 また、全店で一番パーマ比率の良い人には「どんなお勧めをしています
か?」「最初の声掛けはどんな言葉を使っていますか?」と聞いてみたく
なりますよね。そこから引き出した答えをどんどん積上げていくというこ
とが最初のステップです。
 これがSECIで言うところの、共同化~表出化です。

<2>バッドニュース(反省点を書いて下さい。またそのことからリフレ
   ーミングをしてプラス思考で見方を変えたところ、何を学んだか書
   いて下さい。)
 34号で詳しく書いたリフレイミングを応用したものです。これが意外
に効果を発揮します。
 例えば、「最近導入したデジタルパーマのお勧めが上手く出来ない」と
いう悩みがあったとします。
 当然質問しますね。「どんなアプローチをしていますか?」「デジパの
特性、お勧めトークはよく理解していますか?」
 その質問が、本人に気付きを与え、周囲にも「そうだったんだ!」と再
確認させる効果もあります。
 そしてハイパフォーマーの人が、「こうすればいいよ!」と教えれば効
果はバッチリです。
 そんな感じで、ノウハウが浸透していくわけです。
 そして、悪いニュースでも素直にコメント出来るようになれば、視点が
上向きになるのでレベルがグッと上がります。

<3>リクエスト(自分の成長のために欲しい情報を書いて下さい。)
 「マッサージの上手な方法を教えて欲しい。」というリクエストがあっ
たとします。
 「この場で一番上手なのは誰ですか?」と聴いてみます。
 「Aさんでしょう!」という意見が大半だったら、「Aさん、コツを教
えて下さい。少し実演をお願いします。」と言って、誰かをモデルにして
実際にやってもらいます。
 会議の中で、アクションを入れることは大変良いことです。
 美容師さんは特にデスクワークや会議は苦手です。動きをしてもらうこ
とで一気に和み、集中できます。
 この動きをスケッチし、マニュアル化して全員に配布すれば、全員にト
ップのマッサージ技術が徹底します。

<4>その他(上記以外に、会社、営業、スタッフ、お客様等のことで気
   の付いたところ、意見・質問があれば書いて下さい。)
 「サロンのことをもっと知ってもらうのに、ミニコミ誌を発行すればど
うかと思います。」という提案があったとします。
 これはチャンスです。
 スタッフがやる気になっていると言うことです。そんな時は、すかさず
「やってみましょう。ではどんな感じの内容を考えていますか?」とやる
ことを前提に話をします。
 質問により、内容を明確化させて、実行までの段取りのイメージを確立
させます。そして、みんなでそれを盛り上げて期待してあげます。
 この様に、一つのイベントを共有化することが大切です。

 と、言うような感じで使います。
 ミーティングは、問題点の洗い出し・分析に時間を掛けるのではなく、
ノウハウ構築に集中するようにしましょう。
 そうすれば、会議の生産性がグッと向上し、ナレッシマネジメントの効
果が抜群に増します。

5.最後に

 「ナレッジマネジメント」どうでしたか?
 いわゆるベテラン、職人技、一流、凄い人、TOP、カリスマ等と言わ
れる人のノウハウの真髄を顕在化して初級者でも使えるようにするという
ナレッジマネジメントの概略を分かって頂けましたでしょうか?
 出来る人は、必ず何かを持っています。
 その人の、やり方、言い方などをどんどん共有して、素晴らしいサロン
作りに役立てて下さい。

6.次回案内

 では、次回の案内です。
 次回のテーマは「ゴールドスタンダード」です。
 どんな小さいサロンでも大きな会社でも、自分達はどういう仕事で社会
にお役立ちするのかと言う経営理念を持っています。
 それを具現化するのに、行動指針やスローガンを掲げます。
 その内容がゴールドスタンダートと言われるものです。
 その行動の規範がしっかりしていないと、そのサロンの中心軸がぶれて、
全員の行動の方向性を集中することが出来ません。
 だから、ゴルドスタンダードを明確にして、パワーを結集する必要があ
ります。
 この、サロン・会社にとって一番大切な要素であるゴールドスタンダー
ドについて、次回考察してみます。

 では、次回もまたお役に立てるメルマガを目指して作文しますので、応
援よろしくお願いします。
                 ではまた次回もお会いしましょう!

目標達成 (狙った成果を得るために)

メルマガ再録 (2007年2月12日) 第35号


「テーマ決定~テーマ分析~改善計画~行動計画~実行~評価システム」というステップの中で各要素の詳細を考察し、各項目のポイントを書いています。

  < 目標達成 >

1.はじめに

 「目標達成」という漠然としたテーマをなぜ思いついたのだろう?と自
分でも不思議で、とまどっているところです。
 こんな場合は「谷口さんならなんとかするだろう」と、自分に期待する
しかありませんね。
 バックナンバー23「改善ストーリー」でも良く似た内容で書いていま
すが、今回は、あくまでも目標を必達するということに重点を置いて書い
てみますので、合わせて見て下さい。
 さてと、何からはじめるかな?

2.目標達成に必要な要素

 まず、目標達成に必要な要素をリストアップしてみましょう
A.「テーマ決定」
 ・ニーズ把握、要望聴取、現状分析、現状認知、問題点把握、課題提起、
  テーマ決定
B.「テーマ分析」
 ・テーマ定義化、データ採取、データ分析、経費認識、採算分岐点
C.「改善計画」
 ・要望/希望聴取、目標レベル認知、目標範囲、シミュレーション(試
  行)、周知集め、改善ミーティング、改善案作成
D.「行動計画」
 ・行動実行計画、フォロー体制、主担当者決定、チェック者決定、報告
  会日程
E.「実行」
 ・周知徹底、エンロール(巻き込み)、実行、達成意識、継続意識、チ
  ームワーク、報連相、中間フォロー/チェック、結果分析、改良
F.「評価システム」
 ・学習ポイント認識、ノウハウ共有(ナレッジマネジメント)、歯止め、
  標準化、マニュアル化、

 ざっとこんな感じだと思います。
 では次に、その詳細を考察します。

3.「テーマ決定」

 まず、テーマを決定することです。例えば、お客様のクレームが多いの
で、これを減少させる事を上司から言われたとします。
 そうすると、単純にはクレームの減少ですが、現状はどうなっているの
か?、内容はどうなのか?、誰が多く発生させているのか?、果たして本
当に問題なのは何か?などについて検討を開始することです。
 そして、本当のテーマを見つけることです。

4.「テーマ分析」

 本当のテーマが見つかったら、今度はそれについての細かいデータを集
めます。
 例えば、利益確保というテーマだったとすれば、過去の数年の売上と経
費の数字はどうだったのか?スタッフは何人いて、生産性はどうだったの
か?いくら利益を確保すれば良いのか?等々のテーマに関するデータを出
来るだけ細かく収集することが必要です。
 売上を伸ばす場合などは、戦力把握も忘れずしっかりしておかないとい
けませんね。

5.「改善計画」

 ここに来て、初めて改善の検討を開始します。
 しかし、その前に、今取り組もうとしているテーマの目指すところ、つ
まり目的と着地点を再確認することが必要です。
 このテーマは、どれだけの範囲で、どれだけの深さまで改善すべきかと
いうことによって、改善すべき範囲が変わってきます。
 小手先でよいのか、根本的な体質改善まで必要なのかなどを前提条件と
して認識しておくことが必要です。
 そして、データを元に、周知(全員の知恵)を集めて改善案を考えます。
 集客がテーマであれば、過去の販売促進活動による実績データや、最近
のお客様の傾向、さらにスタッフ別の失客率データ、紹介比率データ、来
店サイクルデータなどを元に、集客方法を話し合います。
 この時、過去だけにこだわるのではなく、自店の強みの強化や、世の中
のトレンド、地域の流行であるFads(ファズ)についても考えに入れ
る必要があります。
 このように、サロンを中心に、360度の全方向から自店を改善分析す
る視点と視野が必要です。
 そうすると、今まで見えなかったものが見えてくるでしょう。
 改善案は、複合してさらに良い案が出ることがあります。
 だから、視覚化して進行することが望まれます。
 改善案は、この段階ではアイデアの状況ですが、次のステッフで実行計
画にまで砕いて具体化します。

6.「行動計画」

 目標を達成するには、前項までの段階が非常に重要な要素です。
 つまり、準備率が良くないと実行率が上がらないということです。
 行動実行計画のポイントは、以前バックナンバー10で書いた「A→D
変換」です。
 A→D変換は、アナログ表現でなく、デジタル表現にするということで
す。つまり、だれもがそれを実行したか、していないかが分かる表現方法
にするということです。
 この変換が出来ていないと、本当に実行率が悪いです。これをもっとも
っと認識・浸透させて欲しいと思います。
 A→D変換が出来るかできないかが、その課題が実行できるか出来ない
かの別れ道になるといっても過言ではありません。
 それから、行動計画のスケジュール作成段階においての日程記入は、結
構経験がものを言います。
 というのは、その取り組み内容がどれくらいの時間・日数がかかるもの
かと言う基準は、経験則によるからです。
 簡単な様でも、実は裏に細かい配慮がいったり、トラブルがつきまとっ
たりということで時間がかかる等ということは、経験者でないと分らない
事が多いからです。
 全体の進行をバランスよく日程調整し、誤差の少ない計画に仕上げるこ
とが大切です。

7.「実行」

 実行に入る前のポイントとしては、行動計画の周知徹底をすべきだと言
うことです。
 関係者を巻き込んで(エンロール)、全体として進行していく、そして
その経過を逐次全員に知らせて、血の通った報告、情報を流していく。
 そのことにより、また周囲からの協力が得られて、結果が促進される。
 そういう実行のサイクルに持ち込めれば、もう目標の達成は間違いあり
ません。
 結果というものは、結果だけで存在するものではなく、プロセスからの
延長線上にあるということを良く認識する必要があります。
 そして、もっとも重要なことは、何より「目標を必達するぞ!」という
達成意識です。これなくして、目標達成はあり得ません。
 はじめから無理だと思っていれば、必ず挫折します。
 人間のイメージする力はそうなっているのです。
 駄目だと思うのは、計画自体が満ちたっていないということです。だか
ら実行の前に、100%成功すると思える計画が必要です。
 だから、前項の行動実行計画が、本当に重要な要素を占めているのです。
 それから、チームワークも大切です。
 目標は1人では達成できません。
 周囲の協力、支えがないとその目標は達成できません。
 チームワークを本当に考えるなら、相手のことを思いやり、大切にする
心、感謝の念を忘れないことです。
 そうすると、全体の雰囲気が良くなり、おまけにお客様からの信頼も厚
くなります。
 中間でフォロー&チェックする体制を是非作っておいて下さい。
 月間であれば10日目チェックを怠らずに・・・・
 そして、そこで未達成の部分をどのように達成するかについて、即刻会
議を開き、次の手を打つようにします。
 この時、計画段階から、予め打つ手を準備しておくことが必要です。
 「そこまで考えられないよ!」という声が飛んできそうですが、目標必
達という大命題をこなすには、それくらいの準備が出来ていないと本当に
は達成できませんよ。
 フォロー&チェックは一段落してからという感じがありますが、私は実
行途中の一部に含むと考えています。
 実行が終わって、対象期間が済んでからフォロー&チェックしても、そ
れはもう終わったことを振り替えるだけのことで、次回には役立つかも知
れませんが、その考え方は、その月の達成を保証するものではありません。
 結果、後追いの悪循環を繰り返すだけのことです。
 だから、その悪循環を断ち切り脱出するには「事前に徹底的に準備する」
ということが必要なのです。
 至極当たり前のことですが、これが出来ていないんですね。
 今回のメルマガで言いたいことは、このことです。
 だから、150%くらいの達成準備率で望まないと、目標は必達出来な
と言うことを肝に銘じて下さい。

8.「評価システム」

 評価システムは2面があります。
 一つは、いわゆるニンジンです。
 馬の前にニンジンをぶら下げてやれば、馬はそれ欲しさにどんどん前に
走るという仕組みです。
 この目標を達成したら報奨金が出るという様なことです。これはこれで
良いと思いますが、誰もがチャレンジ出来て、公平に評価されるというこ
とがきっちり出来ていないと、返って逆効果になることがあるので要注意
です。
 みんなの前で褒めて上げるだけでも充分意識は高まるものです。
 もう一つは、1ヶ月間の内に学んだことや作り上げたノウハウを共有す
るという仕組みを作ることです。
 いわゆるナレッジマネージメント(個人の持つ知識や情報を組織全体で
共有し、有効に活用することで業績を上げようという経営手法)と言われ
るものですが、これがサロンを成長させる元になります。
 この貴重なノウハウ・学びをドブに捨てているサロンがどれほど多い事
でしょう。
 このナレッジマネジメントについては、次回詳しく書いてみたいと思い
ます。
 そして、そのノウハウの標準化、マニュアル化を行い、サロンの知恵資
産として蓄積・活用していくことで確実に成長へとつながります。

9.最後に

 「目標達成」どうでしたか?
 今回は、今までのメルマガの中でも触れてきた内容が多く出てきました。
 この「心と技のあいだ」においては、毎回ひとつのノウハウを深堀・考
察していますが、今回の様なタイトルではそれぞれの内容を融合させて活
用するということも必要だということですね。
 目標を達成するためのヒント、1つでも掴めましたか?
 各人の持つパワーを結集し、目標達成に向けて、日々努力されることを
期待します。

10.次回案内

 では、次回の案内です。
 次回のテーマは「ナレッジマネジメント」です。
 これは、暗黙知を明示知に置き換えることにより、それを実務で使える
ものとして共有ノウハウにするという、ノウハウ共有型経営方法なのです
が、このやり方、実用化について考察してみます。
 では、次回もまたお役に立てるメルマガを目指して作文しますので、応
援よろしくお願いします。
                 ではまた次回もお会いしましょう!

リフレイミング (角度を変えてみる)

メルマガ再録 (2007年1月22日) 第34号


1つの物の見方(枠)に限らず、他方(多方)からの見方をするということで失敗事例も学びになります。リフレイミングとは、「物事を違った角度から見る、現象の意味付けを変える」という意味です。

< リフレイミング >

1.はじめに

 リフレイミングの語源について調べました。
 リフレイミングは英語で書くと、「Re-Framing」
 Reは、「再び」と言う意味。
 Framingを辞書で引くと「組み立て、構成、構想、計画、枠をはめる
こと、枠、額縁、骨組み」などと出ています。
 これで解かる通り、リフレイミングは、直接的に訳すと「再び枠にはめ
る」ということですが、1つの物の見方(枠)に限らず、他方(多方)か
らの見方をするということで、「物事を違った角度から見る、現象の意味
付けを変える」ということです。
 悪い出来事も、角度を変えれば教訓となります。
 今回は、このリフレイミングという言葉に付いて考察します。

2.「自分の前に、超えられない問題は出現しない」

 「自分の前に、超えられない問題は出現しない」という先人の教えがあ
ります。
 これを信じるか信じないかで人生は大きく変わります。
 例えば、信じない人でマイナス思考だったとすれば、「もう私は駄目だ。
問題に押しつぶされて自己破滅してしまう」となります。
 一方、信じる人でプラス思考だったとすれば、「今は問題だがこの問題
はきっと解決できる。それに向かって努力しよう!」となります。
 マイナス思考からプラス思考への脱出は、今回テーマのリフレイミング
をして、方向変換するしかありません
 つまり、「自分の前に、超えられない問題は出現しない」と言う言葉を
信じるしかないのです。

3.お化け煙突

 3本ずつ並行に並んだ工場の6本のエントツ。
 これって見る角度によっては、5本、4本、3本、2本に見えたりする
んです。
 事実は6本であっても「いや絶対3本だ」と主張する人もいるわけです。
 3本だという人も、その場所からの見方に限定すれば正解なわけです。
立場(場所)によっては、物の見方が変わるということです。
 だから、6本と言う人は、3本と言った人の場所に行ってみて、3本だ
ということを確認すれば、それはそれで正解なのだということが分かり、
一つ勉強することになります。
 そうして、相手を理解することにつながるわけです。
 これは大変重要な意味を含んでいる物の見方です。
 教育者・指導者は特にこの考え方・見方を知り、相手の理解から次のス
テップにつなげる方法を会得して下さい。
 これについては、後程「コーチングでの活用」の項目で詳しく考えてみ
たいと思います。

4.リフレイミングのポイント

 では、どの様にリフレイミングするかという手法について考えてみます。
 相手の戦艦に突っ込む特攻隊の若者は、本来死にたくはありませんが、
上官の「祖国の誇りを思い知らしめるために今自分達が犠牲になることは
本望である!」という言葉に奮い立ち、一心の想いで突撃するのです。
 これはもう、リフレイミングの極致ですね。
 人から自分の気にしているルーズな面、例えば、連絡の悪さであったり、
遅刻ぐせであったり、約束を守らなかったりというところを指摘されたと
します。
 一瞬カチンと来ますよね。
 そこで、「あんたには関係~ねえよ!」と突っ張るか、「確かにそうだ
な、長い眼で見たら今それを直す時だな、それに直さないと、言ってくれ
た先輩にも悪いしな」と考えるかで全然今後の姿勢が変わりますよね。
 その時のスイッチが「リフレイミング」です。

5.日常生活での活用

 プラスの方向に言葉を置き換えてみると視点が変わります
 嫌なことがあっても、「願望」(~したい)で考えるとリフレイミング
出来ます。
 例えば、遅刻してきた人に対して、「無駄な時間を使わせないで欲しい」
というのは、他律的(他からの命令・束縛によること)で嫌だというの感
情分類に入りますね。そうです、他人の行動に対して、して欲しくないと
ケチをつけていることになります。
 <質問>それを、願望の表現に変えるとどうなるんでしょう。
 <答え>「わたしは、時間を有効に使いたい」
 つまり、自律的で、~~したいという願望の表現にするわけです。
 子どもに対して、夫や妻に対して、仕事の場面で、人の行動にケチをつ
けたくなったら、相手が悪いと思っても、一歩引いてリフレイミングして
考えてみましょう。
 頭は使うけど、きっとその方がいい方向に向かうはずですよ。

6.ベンチマーキングでの活用

 これまたインターネットで調べてみました。
 「ベンチマーキングとは、ひとことで言えば「ベストに学ぶ」というこ
とです。ベスト・プラクティス(経営や業務において、もっとも優れた実
践方法)を探し出して、自社のやり方とのギャップを分析してそのギャッ
プを埋めていくためにプロセス変革を進める、という経営管理手法です。」
ということです。
 これは、私の言う「アナロジカルシンキング(類推法)」や「コンピテ
ンシー(高業績者の行動特性)」の考え方に似ています。
 セミナーや現地見学に行って、それはその講師の先生だから出来たのだ、
とか、そこの会社だから上手く行ったのだという様に考えても、そこから
何も生まれない。そうではなくて、自分、自社に置き換えると、教えても
らった、または学び取ったことをどの様に活かして行くかということが出
来ないと、何の意味もないのです。
 だから、このリフレイミングを徹底的に叩き込み、全てのものを勉強材
料にしてしまうというくらいの姿勢を身に付けることが、自己成長にとっ
て一番大切なことです。
 自分の限界を超えていくには、他からの学び以外にありません。
 これを実践するには、まず観察すること、そして学ぶ(真似ぶ)こと、
それからそれを自分のものにするために習得すること、そして、それを発
揮することです。
 その段階の最初の観察することが出来なければ、次のステップに進めな
いのです。
 「観察眼」これがベンチマーキングなどリフレイミングのポイントです。

 このベンチマーキングを主体としたセミナーがあります。坂本龍馬や企
業家の人を研究し、その心意気・手法をベンチマーキングして、自分の将
来設計を行い、その場の人達に公言して有限実行を図るという勉強会です。
 柔な設計をすると、「それで本当に出来ると思いますか?聞いている人
達はどうですか?」と突っ込まれます。
 そして、そのうち段々と本気モードに突入し、すっかり人が変わった様
になって、自信を持って進化して行かれるのです。
 これは本当に素晴らしい勉強会で、成果を挙げています。

7.コーチングでの活用

 コーチングでもリフレイミングは使用します。
 では、例を考えてみます。
 コーチ「レッスンは進んでいますか?」
 生 徒「ええ、まあまあ」
 コーチ「まあまあって?」
 生 徒「やろうとするんですが、なかなか進まなくて!」
 コーチ「じゃあ、視点を変えて、レッスンを楽しむにはどうしたらよい
     と思いますか」
 生 徒「分かりません。」
 コーチ「そうですね、じゃあ、レッスンした後に自分に褒美を出すとい
     うのはどうですか?」
 生 徒「それなら、よさそう。」
 コーチ「そうですね。では、何の褒美にしましょうか?」
 生 徒「そうですね、1週間6時間練習したら、映画を見れるとか?」
 コーチ「それでいいですか?」
 生 徒「もっと言うと、8時間したらCDが買える、10時間したら両
     方ともできる!」
 コーチ「いいですね!。10時間したら私が映画代持ちますよ!」
 生 徒「えっ!本当ですか?嬉しい。」
 コーチ「じゃあ、頑張れますか?」
 生 徒「はい、絶対10時間します。」
 コーチ「では、来週のこのミーティングで確認しますからね。」
 生 徒「わたかりました。」
 コーチ「では頑張りましょう。」
 生 徒「はい。」(絶対映画代稼ぐぞ!!)
 ここのポイントは、コーチがレッスンの後の褒美という案を出したとこ
ろです。辛いレッスンを楽しみに変えるリフレイミングです。
 視点を変える、一ひねりすると、アイデアは湧いて来るものです。

8.最後に

 同じ視点、一定の場所からは同じものしか見えません。
 定点観測などは、一定視点だからこそ周囲の変化が分かるということも
あります。
 自分と言う存在そのものは根が張っていて定点でなければいけないので
しょうが、自分の思考や考え方のテクニックからいうと、今回の様な角度
を変えた視点からの発想と言うものは貴重なアイデアをもたらしてくれま
す。
 勉強が無駄にならないように、このリフレイミングという思考法を身に
付けてください。
 そして、バンバン新しいアイデアを考えて周囲を革新していきましょう。
 それはそれは楽しいことになりますよ。

9.次回案内

 では、次回の案内です。
 次回のテーマは「目標達成」です。
 自分で作った、または与えられた目標に対して、それを達成するにはど
んなプロセスで、どんな工夫をして結果を出すかに付いて考察します。
 多分、今まで書いてきたノウハウ・ドゥハウを総動員しての作文になる
と言う気がしています。

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